NISA改正案「子どもNISA」「プラチナNISA」で何が変わる? 解説します。

NISA改正案「子どもNISA」「プラチナNISA」で何が変わる?
2024年から新NISA制度が始まりましたが、早くも次の制度改革に向けた動きが出ています。
金融庁が公表した最新の要望には、通称「子どもNISA」や「プラチナNISA」と呼ばれる法案が含まれており、実現すれば投資の選択肢がさらに広がることが期待されます。
この新しい改革案は、かつてのジュニアNISAの後継ともいえる子ども向けの非課税投資や、より積極的な投資を可能にする内容が盛り込まれており、今後の資産形成に大きな影響を与える可能性があります。
動画で解説!金融庁、NISAを神改正!こどもNISA、スイッチングはどうなる?
2026年度のNISA改正要望書について解説しています。

1. NISA制度の新たな改正案とは?金融庁の要望内容を解説
2025年8月29日、金融庁は2026年度の税制改正要望を公表しました。

この要望内容には、現行のNISA制度をさらに拡充するための新たな提案が含まれています。
具体的には、18歳未満を対象とした非課税投資制度(通称:子どもNISA)の創設や、成長投資枠の対象商品を拡大する構想(通称:プラチナNISA)が柱となっています。
この要望がいつ実現するかは、年末に与党が取りまとめる「税制改正大綱」での議論を経て決定されるため、今後の動向が注目されます。
2. 【通称:プラチナNISA】対象商品の拡充で多様なニーズに対応?
「プラチナNISA」とは、主に高齢者のライフステージに合わせた資産活用や運用ニーズに対応するための制度拡充構想の通称です。
金融庁の要望では「様々な資産運用ニーズに応えるための、対象商品の拡充等」としていますが、これは必ずしも高リスクな商品への拡大を意味しません。 むしろ、低リスクである債券型ファンドのつみたて投資枠への追加や、インフラファンドの組み入れなど、多様な層のニーズに応えるための商品拡充が検討されています。
整理・監理銘柄といった高リスクな上場株式の追加については、現行の趣旨に鑑み、慎重な議論が必要とされています。
3. 非課税枠の「当年」復活を要望!より柔軟なスイッチングが可能に
2024年から始まった新NISAでは、商品を売却した場合、その商品の簿価分の非課税枠が翌年以降に復活します。
これに対し、金融庁の2026年度要望では、この復活のタイミングを「売却した当年中」に早めることが提案されています。 例えば、年内に投資した商品を売却した場合、現行では翌年まで再投資できませんが、要望が実現すれば、売却した年内に枠が復活し、すぐに再投資や商品の入れ替えが可能になります。

4. 【おさらい】2024年から始まった新NISA制度の3つのポイント
今回の改正案を理解するため、まずは2024年からスタートした新NISA制度の基本について振り返ります。

これまでのNISA制度から大きく変わり、より使いやすく、長期的な資産形成に適した制度へと生まれ変わりました。
特に重要な変更点として、非課税保有期間の無期限化、年間の投資上限額の大幅な拡大、そして2つの投資枠の併用可能という3つのポイントが挙げられます。これらの変更点が、今回の改正案の土台となっています。
ポイント①:非課税で保有できる期間が無期限になった
2024年からの新NISA制度における最大の変更点の一つが、非課税で商品を保有できる期間の恒久化です。
旧制度では、つみたてNISAで最長20年、一般NISAでは最長5年という非課税保有期間の期限が定められていました。 しかし、新NISAではこの期限が撤廃され、無期限で非課税の恩恵を受けながら資産を保有し続けることが可能になりました。
これにより、ロールオーバーといった複雑な手続きを気にする必要がなくなり、長期的な視点に立った資産運用をよりシンプルに行えるようになりました。
ポイント②:年間の投資上限額が大幅に拡大された
新NISAでは、年間で投資できる上限額が旧制度に比べて大幅に引き上げられました。 具体的には、「つみたて投資枠」で年間120万円、「成長投資枠」で年間240万円、合計で最大年間360万円までの投資が可能です。
さらに、生涯にわたって非課税で保有できる上限額として「生涯非課税限度額」が新たに設けられ、その上限は1800万円に設定されています。 このうち、成長投資枠で利用できるのは最大で1200万円までという制限があります。
これにより、これまで以上にまとまった資金を非課税で運用できるようになりました。
ポイント③:「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が併用できるようになった
旧制度では、つみたてNISAと一般NISAは年単位での選択制であり、両方を同時に利用することはできませんでした。
しかし、新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という2つの枠が設けられ、これらの併用が可能になりました。 つみたて投資枠は長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託が対象で、成長投資枠では個別株やより幅広い投資信託などへの投資ができます。

5. NISA改正案が実現した場合に期待される3つのメリット
もし金融庁が要望しているNISA改正案が実現すれば、投資家にとって多くのメリットが生まれると考えられます。

この改正の目的は、若年層を含むより幅広い世代の資産形成を後押しし、多様な投資ニーズに応えることにあります。
具体的には、子どもの将来に向けた資産形成の促進、より積極的な投資戦略の許容、そして非課税投資枠の効率的な活用という観点から、個人の資産運用にプラスの影響を与えることが期待されています。
メリット①:子どもの将来に向けた長期的な資産形成が始めやすくなる
「子どもNISA」が創設されれば、0歳からでも非課税での積立投資を始められます。 子どもの教育資金や結婚資金など、将来必要となる大きな資金を、非課税のメリットを活かしながら計画的に準備できます。
特に、非常に長い期間をかけて運用できるため、複利効果を最大限に享受できるのが大きな利点です。
少額からの積み立てでも、時間を味方につけることで着実な資産形成が期待でき、子どもの金融リテラシーを高めるきっかけにもなり得ます。
メリット②:多様な投資戦略でライフプランに合わせた運用が可能になる
金融庁が要望する対象商品の拡充が実現すると、債券型ファンドのような比較的低リスクな商品や、特定の資産に特化したファンドなど、選択肢が大きく広がります。
これにより、退職後のキャッシュフローを重視した運用や、リスクを抑えた安定的な運用など、個々人のライフプランやリスク許容度により合ったポートフォリオを組むことが可能になります。
ただし、どの金融機関でどのような商品が取り扱われるかは、制度の詳細が決まるまで注視が必要です。
メリット③:非課税投資枠をより柔軟かつ効率的に活用できる
金融庁の要望する「当年復活」が実現すれば、ライフプランの変更にさらに柔軟に対応できるようになります。
例えば、マイホームの頭金や子どもの進学費用などで一時的にまとまった資金が必要になった場合、NISA口座から商品を売却して現金化しても、年内にその非課税枠を再利用できます。そのため、一度資金を引き出した後も、再び非課税での投資を再開でき、生涯にわたる非課税メリットを途切れさせることなく活用できます。

6. NISA改正案について知っておきたい2つの注意点
NISAのさらなる拡充案には期待が集まりますが、メリットばかりに目を向けるのではなく、いくつかの注意点を理解しておくことが重要です。

特に、投資対象の拡大がもたらすリスクの変化と、この改正案がまだ正式に決定したものではないという点は、今後のニュースを見る上で念頭に置くべきです。
これらのポイントを押さえることで、制度の変更に対して冷静かつ適切に対応できるようになります。
注意点①:選択肢の増加により、リスクとリターンのバランス判断がより重要になる
金融庁の要望する対象商品が拡大されると、多様な運用目標やリスク許容度に対応できる一方で、投資家自身が商品ごとのリスク特性を正確に理解することがこれまで以上に重要になります。
例えば、債券型ファンドやインフラファンドなども、それぞれ価格変動リスクや流動性リスクを持っています。 非課税というメリットは、あくまで利益が出た場合に税金がかからないというものであり、損失を補填するものではありません。
リスクの高い投資はNISA枠ではなく特定口座で行うなど、自身の投資経験やリスク許容度を慎重に判断する必要があります。
注意点②:あくまで要望段階であり実現するかは未定
現在議論されている「子どもNISA」や「プラチナNISA」といった改正案は、2025年8月末時点では金融庁が提出した要望であり、まだ何も決定していません。
今後、与党内の税制調査会で議論が進められ、その内容が2025年末に公表される「令和8年度(2026年度)税制改正大綱」に盛り込まれて初めて制度化が決定します。 要望がそのまま通るとは限らず、内容が修正されたり、見送られたりする可能性も十分にあります。

7. 企業型DCとNISAは、どちらが老後資産形成に向いている?
企業型確定拠出年金(企業型DC)とNISAは、ともに資産形成に役立つ制度ですが、老後資金の形成という目的に特化すると、企業型DCが有利です。

企業型DCの掛金は全額が所得控除の対象となるため、その年の課税所得が減り、所得税と住民税が軽減されるという、NISAにはないメリットがあります。この「拠出時」の税制優遇は、現役世代にとって最も大きな節税効果をもたらします。加えて、運用益の非課税、受け取り時の税制優遇も受けられます。
一方、NISAは運用益が非課税となる点が魅力ですが、掛金に対する所得控除はありません。 いつでも自由に引き出せる流動性の高さがNISAの最大のメリットであり、これは老後資金よりも、教育資金やマイホーム資金など、ライフイベントに備えるための資金形成に適しています。
したがって、老後資金形成を最優先し、最大の税制メリットを享受したい場合は、企業型DCを優先的に利用すべきでしょう。

8. まとめ
2024年の新NISA開始に続き、今回の改正要望は、個人の資産形成をさらに後押しする内容を含んでいます。 2023年末で終了した旧NISAからの移行やロールオーバーの悩みから解放された新制度が、さらに使いやすくなる可能性があります。
