40代経営者のための賢い資産形成術|失敗しない始め方とポイント

40代経営者のための賢い資産形成術|失敗しない始め方とポイント
事業が軌道に乗り多忙な日々を送る40代の経営者にとって、個人の資産形成は後回しになりがちな課題です。
しかし、経営者特有のリスクや将来のライフプランを考慮すると、40代からの資産形成は極めて重要な意味を持ちます。
本記事では、経営者という立場を踏まえ、賢く着実に資産を築くための準備、具体的な方法、そして陥りがちな注意点までを網羅的に解説します。
動画で解説!決算書でつくる 40代経営者のための資産形成術
本記事で解説した「失敗しない資産形成」を一歩深く、会社の「決算書」を基に解説します。

1. なぜ今、40代経営者にこそ資産形成が重要なのか
会社の成長に注力するあまり、個人の資産について考える余裕がなかった経営者も少なくありません。

しかし、サラリーマンとは異なる退職金事情や事業に伴うリスクを考慮すると、40代から資産形成を始めることには大きな意義があります。
会社の資産と個人の資産を明確に切り分け、将来に備える必要性を3つの観点から説明します。
事業リスクから個人の資産を守る必要性
経営者は会社の借入金に対して個人で連帯保証をしているケースが多く、会社の業績が悪化した場合、個人の資産まで差し押さえられるリスクを常に抱えています。 事業が順調な時ほど、このリスクに対する意識は薄れがちです。
しかし、万が一の事態に備え、会社の資産と個人の資産を明確に分離し、事業リスクの影響を受けないセーフティネットを築いておく必要があります。
資産防衛の観点からも、個人名義での資産形成は経営者にとって重要な課題です。
40代から始めることで複利効果を最大化できる
資産形成は、投資で得た利益がさらに利益を生む「複利」の効果を活かすことで、雪だるま式に資産を増やせる可能性があります。
20代など若いうちから始めるのが最も効果的ですが、事業が安定し、ある程度の自己資金を投じられる40代からでも決して遅くはありません。 むしろ、まとまった資金を長期で運用できる最後のチャンスと捉えることもできます。

2.賢い資産形成をスタートするための3つの準備
具体的な金融商品に目を向ける前に、まずは自身の現状を正確に把握し、計画の土台を固める準備段階が不可欠です。

会社の資産と個人の資産の切り分け、明確な目標設定、そして事業状況を考慮したリスク許容度の確認という3つのステップを踏むことで、その後の資産形成がよりスムーズかつ効果的に進みます。
ステップ1:会社の資産と個人の資産を明確に分ける
経営者は会社の財布と個人の財布の境界が曖昧になりがちですが、資産形成を始める上での第一歩は両者を完全に分離することです。
法人口座と個人口座の資金移動は役員報酬や貸付金といった明確なルールに基づいて行い、生活費などを会社の経費で支払う公私混同を避けなければなりません。 これにより、会社の正確な財務状況と個人の純資産を把握できるようになります。
事業リスクから個人資産を切り離す「資産防衛」の観点からも、この分離は極めて重要です。
ステップ2:具体的な目標金額と達成時期を設定する
「いつまでに」「いくら」必要なのかを具体的に設定することで、資産形成のモチベーションが維持され、取るべき戦略も明確になります。
例えば、「65歳でリタイアし、年間1000万円で生活するために1億円を準備する」といった目標です。子供の教育費、住宅の購入や修繕、趣味など、将来のライフイベントを洗い出し、それぞれに必要な金額を試算します。
この目標から逆算することで、毎月どのくらいのペースで資産を積み上げていくべきか、具体的な行動計画が見えてきます。
ステップ3:事業の状況から考える自身のリスク許容度を把握する
資産形成におけるリスク許容度は、年齢や年収だけでなく、経営者特有の事業の状況にも大きく左右されます。 事業が安定成長期にあり、キャッシュフローに余裕がある場合は、ある程度のリスクを取った積極的な投資も検討できます。
一方で、事業拡大のために大規模な投資を控えている時期や、業界の先行きが不透明な状況では、守りを重視した安定的な運用を優先すべきです。

3. 40代経営者におすすめする資産形成の具体的な方法
準備が整ったら、具体的な資産形成の方法を検討します。

40代の資産形成においては、経営者という立場を活かせる手法や、税制優遇制度を最大限に活用することがポイントです。
単一の方法に偏るのではなく、複数の選択肢を組み合わせることでリスクを分散し、より安定的かつ効率的に目標達成を目指すことが可能になります。
会社の成長にも繋がる可能性のある株式投資
株式投資は、値上がり益(キャピタルゲイン)と配当金(インカムゲイン)の両方が期待できる代表的な資産形成手法です。 経営者であれば、自社の事業に関連する業界や取引先の企業へ投資することで、事業への知見を深める相乗効果も期待できます。
ただし、個別株式への集中投資はリスクが高いため、全世界の株式に分散投資するインデックスファンドなどを活用し、リスクを管理することが基本です。
経済や市場の動向を学ぶことは、経営判断の精度を高めることにも貢献します。
安定収入と節税効果を両立できる不動産投資
不動産投資は、家賃収入という安定したインカムゲインを得られる点が魅力です。 経営者は社会的信用力が高く、金融機関からの融資を受けやすいというメリットを活かせます。
物件の購入費用をローンで賄い、少ない自己資金で大きな資産を運用するレバレッジ効果が期待できるのも特徴です。 また、建物の減価償却費などを経費として計上することで、所得税や住民税の節税に繋がる場合があります。
ただし、空室リスクや物件管理の手間も考慮し、慎重に物件を選ぶ必要があります。
税制優遇を活用して着実に増やす新NISA
2024年から始まった新NISAは、投資で得た利益が非課税になる強力な税制優遇制度です。
年間最大360万円(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)まで投資が可能で、生涯にわたる非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)と、大きな非課税メリットを享受できます。
投資信託の積立設定をしておけば、あとは自動で買い付けが行われるため、多忙な経営者でも手間をかけずに長期的な資産形成を実践可能です。
経営者の退職金づくりに役立つ小規模企業共済
小規模企業共済は、国が運営する経営者のための退職金制度です。 最大のメリットは、月々の掛金(最大7万円)が全額所得控除の対象となるため、高い節税効果を得ながら将来の資金を積み立てられる点です。
共済金を受け取る際も、退職所得控除や公的年金等控除といった税制上の優遇措置が適用されます。 将来の事業承継やリタイアに備えるための確実な資金準備として、多くの経営者が活用しています。
加入資格がある場合は、優先的に検討すべき制度の一つです。
万が一の備えにもなる生命保険を活用した資産防衛
生命保険は、本来の保障機能に加えて、資産形成や資産防衛のツールとしても活用できます。 経営者に万が一のことがあった場合、死亡保険金は会社の運転資金や借入金の返済に充てることができ、事業の継続を支えます。
また、解約返戻金のある貯蓄性の高い保険商品は、将来の資金準備にも役立ちます。 保険金を特定の受取人に残せるため、相続対策としても有効です。
ただし、保険料の負担や資金の流動性が低い点も考慮し、保障と資産形成のバランスを考えて加入することが求められます。
老後資産形成に最適な企業型確定拠出年金(企業型DC)
企業型確定拠出年金(企業型DC)は、経営者にとって老後の資産形成に最適な制度の一つです。
この制度では、会社が拠出した掛金が全額損金として扱われ、法人税の節税に繋がります。また、従業員が拠出する掛金も所得控除の対象となるため、従業員の福利厚生の強化にも役立つ上、運用益は非課税で再投資されるため、効率的に資産を増やせます。

4. 40代経営者が資産形成で注意すべき4つの落とし穴
資産形成を成功させるためには、積極的に資産を増やす方法を知るだけでなく、失敗につながる典型的なパターンを避けることも同様に重要です。

特に経営者は、使える資金の性質や時間の使い方において特有の課題を抱えており、資産形成が難しい状況に陥ることもあります。
ここでは、経営者が陥りやすい4つの落とし穴について解説します。
投資に時間を使いすぎて本業に支障が出るケース
日々の株価の動きが気になり、頻繁に市況をチェックしたり、短期的な売買を繰り返したりすることに夢中になると、経営者として最も重要な本業がおろそかになりかねません。
資産形成はあくまで将来に備えるための手段であり、事業運営という本業に支障をきたしては本末転倒です。
投資に多くの時間を割けない経営者だからこそ、一度設定すれば自動で積立ができる投資信託や、管理を専門家に任せられる不動産投資など、手間のかからない手法を選択することが賢明です。
目先の節税メリットだけで金融商品を選んでしまうケース
経営者は所得が高く、節税への関心が強い傾向にあります。 しかし、「節税になります」というセールストークだけで金融商品を安易に選んでしまうのは危険です。
節税効果を謳う商品の中には、手数料が高かったり、リスクが高かったり、流動性が極端に低かったりと、資産形成の観点からは不適切なものが少なくありません。
節税はあくまで副次的なメリットと捉え、その商品の本質的なリターンやリスク、コストを総合的に評価し、自身の目的に合致しているかを冷静に判断する必要があります。
専門家のアドバイスを吟味せず鵜呑みにしてしまうケース
資産形成を進める上で、ファイナンシャルプランナーや税理士などの専門家からアドバイスを受けることは非常に有益です。
しかし、専門家の意見を鵜呑みにせず、最終的な投資判断は自分自身で行うという姿勢が重要になります。 専門家によっては特定の金融商品を販売する立場にあり、その提案が必ずしも相談者にとって最適とは限らない場合も存在します。

5. まとめ
40代の経営者が賢い資産形成を実現するためには、サラリーマンとは異なる自身の立場を正確に認識することが出発点です。 事業リスクから個人資産を守るという防衛的な視点と、複利効果を活かして資産を育てるという攻撃的な視点の両方が求められます。
