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勤続年数8年の退職金は平均いくら?

大企業・中小企業別に相場を紹介

勤続年数が8年の場合、退職金の相場がどのくらいになるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。退職金制度の有無や計算方法は企業によって異なりますが、統計資料から概ねの目安を把握できます。

また、退職金制度として企業型確定拠出年金を採用している場合、受け取れる退職金は運用成績によります。どの退職金制度を導入しているのかによって、退職金額は異なる点を押さえておきましょう。

今回は、勤続年数8年の場合、退職金の目安はいくらなのか解説します。

中小企業における退職金の平均額

中小企業における退職金の平均額を見ていきましょう。

中小企業では、大企業に比べて退職金の額が低めに設定されていることが一般的です。

東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」で、中小企業で勤務したときの退職金をイメージしてみましょう。なお、以下で紹介するのは勤続年数10年のモデル退職金です。

勤続年数 自己都合退職 会社都合退職
高卒(10年) 90.7万円 122.3万円
高専・専門卒(10年) 98.7万円 126.9万円
大卒(10年) 112.1万円 149.8万円

中小企業に8年勤務した場合、退職金の平均額はおおよそ100万円程度と考えられるでしょう。なお、上表は新卒で入社した場合の退職金なので、より高い基本給で中途入社した場合、より多くの退職金が支給されると考えられます。

なお、退職金制度について「制度あり」と回答した企業は71.5%、「制度なし」と回答した企業は28.3%でした。

約3割の中小企業には、退職金制度が整備されていないことがわかります。

大企業における退職金の平均額

大企業における退職金の平均額を見ていきましょう。

     大企業では、一般的に中小企業よりも退職金額が高くなります。厚生労働省の「令和3年賃金事情等総合調査」を参考に、勤続8年の退職金をイメージしてみましょう。

勤続年数 退職金額
事務・技術系職種の高卒(3年) 52.2万円
事務・技術系職種の高卒(5年) 89.4万円
事務・技術系職種の高卒(10年) 214.2万円
生産系職種の高卒(3年) 54.9万円
生産系職種の高卒(5年) 95.0万円
生産系職種の高卒(10年) 240.1万円
事務・技術系職種の大卒(3年) 69.0万円
事務・技術系職種の大卒(5年) 118.0万円
事務・技術系職種の大卒(10年) 310.2万円

大企業の場合、勤続年数8年で退職したときの退職金額は100万円から200万円程度になると推測できます。中小企業よりも福利厚生面が充実している関係から、給付水準が高いと考えられるでしょう。

退職金を計算する仕組み

退職金を計算する仕組みを解説します。

退職金の計算方法は企業によって異なるため、「勤続年数〇年でいくら」と一概にはいえません。以下で、代表的な計算方法を解説します。

定額制の退職金

定額制の退職金とは、勤続年数や退職時の役職に関わらず、事前に定められた一定の金額を退職時に受け取れる退職金制度です。特に予算管理が厳しい中小企業において、用いられるケースが多く見られます。

メリット デメリット
計算が簡単で予測しやすい
労働者は自分がどのくらいの退職金を受け取れるかを早い段階で把握できる
企業側にとっても支出額が予測しやすい
勤続年数が長い労働者が不公平と感じる可能性がある
優れた成果を出している労働者が不公平と感じる可能性がある
労働者のモチベーション向上につながりにくい

メリットとデメリットの両面があるため、自社に合っている方法か慎重に判断しましょう。労働者のモチベーション維持や離職率の低下を図るためにも、基本的な定額制退職金に加えて、勤続年数に応じた追加支給の仕組みを導入するなどの工夫が考えられます。

基本給連動型の退職金

基本給連動型の退職金制度は、退職時の基本給を基準にして退職金を計算する方法です。基本給が勤続年数に応じて上昇する仕組みの企業であれば、一般的に勤続年数が長い労働者ほど退職金額が増えます。

メリット デメリット
労働者の長期的な定着を図れる
労働者が公平感を得やすい
労働者の貢献度や役職などを反映しやすい
計算が複雑になることがある
予算管理が複雑になる

基本給連動型であれば、長期的な職場への定着が見込めます。「勤続年数が長くなるほど受け取れる退職金が増える」というインセンティブがあるため、長期的な就労やモチベーションの向上につながるでしょう。

一方で、企業側から見ると退職金額が変動するため、定額制よりも計算が複雑になりがちです。また、労働者の勤続年数や基本給の上昇に合わせて退職金の積立を計画的に行う必要があります。

労働者が自身の努力や成果に応じた報酬を得られれば、組織全体のエンゲージメントが向上します。基本給連動型をベースにしつつ、報酬体系と連携させることで労働者が自身のパフォーマンスを意識するようになり、生産性の向上を見込めるでしょう。

ポイント制の退職金

ポイント制の退職金は、労働者の勤続年数や業績に応じてポイントを付与し、そのポイントをもとに退職金を支給する仕組みです。労働者は在職中に一定の基準でポイントを獲得し、退職時のポイントに基づいて退職金が計算されます。

メリット デメリット
労働者の貢献度や役職などを反映しやすい
透明性が高く労働者のモチベーション向上につながりやすい
業績に応じて柔軟に設定できる
明確な基準を作る必要がある
不公平感があると労働者の不満につながる

ポイント制の大きな特徴は、透明性の高さです。労働者は自分の獲得ポイントを随時確認でき、受け取れる退職金の見通しを立てやすくなります。

目標とする退職金額を計画的に設定し、そのためにどのような業績や行動が求められるのかを明確に把握すれば、労働者がスキルアップに励む効果が期待できます。また、労働者のモチベーション向上にもつながり、日々の業務に対する意欲を高める要因となるでしょう。

企業にとっても、ポイント制退職金は経済状況や自社の業績に応じて柔軟に設定を変更できるメリットがあります。経済的な負担を抑えつつ、退職金制度を持続可能な形で運用できるでしょう。

ただし、ポイントの付与基準が不明確・不公正だと労働者の不満につながるため注意が必要です。そのため、透明性を保ちながらも公正な基準を設定し、全ての労働者が納得できる制度運用が求められます。

退職金にかかる税金について

退職金にかかる税金について見ていきましょう。。

退職金には所得税と住民税がかかりますが、税制上の優遇措置が設けられています。退職金は、長年の労働に対する報償的給与としての性格を有しているためです。

以下で、退職金の計算方法について解説します。

 

退職所得控除とは

退職所得控除とは、退職金に対する税負担を軽減するための特別な控除です。

勤続年数が20年以下の場合、1年あたり40万円の控除が適用されます。20年を超える部分については、1年あたり70万円の控除が適用され、勤続年数が長ければ長いほど税負担が軽減されます。

20年以下勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

例えば、勤続年数が30年の場合、退職所得控除は「800万円+70万円×(30年-20年)」で1,500万円です。つまり、退職金が1,500万円までは税金がかかりません。 

税額の計算方法

退職金にかかる税額は、退職所得控除を適用したあとの金額を基に計算します。具体的な計算式は「(収入金額-退職所得控除額)× 1/2」です。

支給される退職金から退職所得控除額を差し引き、1/2を乗じれば課税対象となる退職所得金額を算出できます。

例えば、退職金額が2,000万円で退職所得控除が1,500万円の場合、退職所得は+
「(2,000万円-1,500万円)× 1/2」で250万円です。

課税対象となる退職所得を計算したら、以下の速算表に当てはめて税額を計算します。

40%課税される所得金額 税率 控除額
1,000円〜194万9,000円 5% 0円
195万円〜329万9,000円 10% 9万7,500円
330万円〜694万9,000円 20% 42万7,500円
695万円〜899万9,000円 23% 63万6,000円
900万円〜1,799万9,000円 33% 153万6,000円
1,800万円〜3,999万9,000円 40% 279万6,000円
4,000万円〜 45% 479万6,000円

例えば、課税対象となる退職所得が250万円の場合「(250万円×10%)-9万7,500円」で納める所得税は15万2,500円です。

退職所得控除や退職所得の計算ができれば、退職金の税金は簡単に計算できます。

退職金の受け取り方

退職金の受け取り方を解説します。

退職金の受け取り方法には、いくつか選択肢があります。企業によって「一時金のみ」「年金のみ」「一時金と年金の併用」というパターンを用意しているケースもあるでしょう。

それぞれの受け取り方にはメリットとデメリットが存在します。事業主は労働者から受け取り方法について相談を受ける可能性があるため、退職金の受け取り方を理解しておきましょう。

一時金として受け取る場合

一時金を選択した場合、全額を一括で受け取ります。まとまった資金を得られるため、住宅ローンの完済や子どもの進学費用、海外旅行など多額の支出予定がある方に向いています。

また、退職金の一部を余剰資金として、投資に回すことも可能です。まとまったお金を管理し、計画的に活用できる自信がある方にとって、向いている受け取り方法といえるでしょう。

ただし、多くの会社員や公務員にとって、退職金はまとまったお金を受け取れる数少ない機会です。無計画に退職金を使ってしまうと、生活資金が不足したり医療費や介護費への備えが不十分になったりするケースが考えられます。

退職金を支給する側の事業主としても、退職する労働者に対して慎重に資金計画を立てるように伝える必要があります。

年金形式で受け取る場合

年金を選択した場合、退職金を一定期間にわたって分割して受け取ります。毎月もしくは毎年一定額を受け取れるため、安定した収入源を確保できるメリットがあります。

「公的年金の上乗せとなる定期的な収入が欲しい」と考えている方にとって、向いている受け取り方法といえるでしょう。

退職金制度によっては、年金として受け取っていない部分を運用できます(主に企業年金)。運用して増やしながら退職金を少しずつ受け取れるため、経済状況次第では受け取れる総額が一時金よりも多くなる可能性があります。

ただし、退職金制度によっては年金受け取りを選択できません。また、「60歳以降」「65歳以降」のように受け取り開始年齢が決まっているため、規定の年齢よりも前に退職する労働者は、そもそも年金で受け取れない点に注意しましょう。

一時金と年金の併用受け取り

一時金と年金を併用して退職金を受け取る方法もあります。それぞれのメリットを活かせるため、バランスの取れた受け取り方法といえます。

一部を一時金として受け取り、残りを年金形式として分割で受け取ることで、まとまった資金と安定的な収入を同時に得ることが可能です。

近い将来必要となる支出分を一時金で受け取り、それ以外を年金で受け取ればバランスのよい資金計画を立てられるでしょう。退職後すぐに発生する資金ニーズに対応しつつ、長期的な資金計画を重視する方にとって有効な手段です。

退職金制度の導入を検討している場合は企業型確定拠出年金がおすすめ

企業型確定拠出年金がおすすめです。

「役員や労働者のために退職金制度を導入したい」とお考えの事業主の方は、企業型確定拠出年金がおすすめです。企業型確定拠出年金では、拠出した掛金を役員や労働者が自分の責任で運用しながら、自分専用の退職金を用意できます。

中でも「選択制企業型確定拠出年金」であれば、加入するかどうかの判断を各役員や労働者が自分で決められます。自由度が高いため、多くの企業にとって導入しやすい制度といえるでしょう。

選択制企業型確定拠出年金に加入する役員や労働者がいる場合、給与の中から掛金を拠出します。一般的な退職金のように、企業が責任を持って運用する必要がないため、事業主が負うリスクが小さいメリットがあります。

企業型確定拠出年金は転職しても資産の持ち運び(引継ぎ)が可能で、勤続年数が8年程度で転職する役員や労働者が損をすることもありません。

転職先の企業に確定拠出年金制度があれば資産を移転でき、企業型確定拠出年金制度がなくてもiDeCo(個人型確定拠出年金)に移行できます。

 

企業型確定拠出年金コンサルタントのアドバイス

昨今は転職市場が活発で人材が流動化しているため、資産の持ち運びができる点は魅力の一つです。企業が運用リスクを負う必要がないため、多くの企業にとって導入しやすいでしょう。

まとめ

まずは無料相談にお申込みください。

勤続年数が8年の場合、退職金の相場は中小企業であれば100万円程度、大企業であれば100万円から200万円程度になると推測できます。退職金の計算方法は、どのような制度を導入しているかによって異なりますが、おおむねの目安として参考にしてみてください。

人材の流動化が進み転職がスタンダードになっている昨今においては、定年まで勤務せずに転職をする労働者が出てくるかもしれません。逆に、自社に中途で入社する労働者が増える可能性もあります。

退職金制度の中でも、企業型確定拠出年金は転職しても運用している資産を持ち運びできるメリットがあります。加入者の資産形成を後押ししつつ、転職に伴う不安を軽減できる有用な制度といえるでしょう。

日本企業型確定拠出年金センターでは、退職金制度や企業年金制度に詳しい専門家が、企業の状況に合わせて最適な制度導入をサポートしています。役員や労働者の入退社に伴う手続きも継続してサポートするため、ご安心ください。

無料相談を通じて、退職金制度の概要やおすすめのプランなどを説明いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

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