企業型確定拠出年金(企業型DC)を一時金で受け取るとき。 | 計算方法を日本企業型確定拠出年金センターが解説します。 2025.03.14 2025.03.19 企業型確定拠出年金(企業型DC)は、会社が掛金を拠出し、従業員が自分自身で掛金を運用して、老齢給付金として受け取る制度です。 原則、60歳以降に受給が可能となります。受け取り方は、「年金」「一時金」「年金と一時金の併用」の3種類あります。受け取り方によって、所得控除が異なります。 今回は、「一時金」として受け取るときの計算方法について解説していきます。 企業型DCの受け取りは一括か?分割か?(動画) 企業型DCを一時金若しくは年金のどちらで受け取った方がいいのかについて分かりやすく解説しています。 こちらも併せてご覧ください。 下記画像をクリックしていただくと、動画が再生されます。 目次1. 退職金と確定拠出年金の受け取り方は税金に大きな違いがある2. 企業型確定拠出年金(企業型DC)の受け取り方法は2種類3. 企業型確定拠出年金(企業型DC)を「退職一時金」で受け取るとき1. 計算方法2. 実際の計算例4. まとめ 1. 退職金と確定拠出年金の受け取り方は税金に大きな違いがある 退職金と確定拠出年金(DC)の受け取り方においては、税金の取り扱いが異なります。一般的に「退職所得」として扱われ、その税金は優遇されています。退職所得控除が適用され、一定の金額まで課税されません。 補足すると、iDeCo(個人型確定拠出年金)も受け取り方に関しては同じようなルールが適用されます。企業型DCとiDeCoは、運用成績が良ければ受け取る金額が増える一方で、その分の課税も考慮しなければなりません。このため、企業型DCやiDeCoを利用する際には、それぞれの受け取り方法や税金の影響を十分に理解しておくことが非常に重要です。 通常の退職金制度は勤務年数に応じて計算され、確定拠出型年金は掛金拠出年数で計算されます。企業型確定拠出年金は、転職先でも導入している場合は掛金拠出年数に含まれますので、転職2回目といった方でも掛金拠出を継続する限り、退職所得控除額は大きくなります。 また、退職一時金受取と年金分割受取では最終的に手元に残る金額が変動しますので、以下で詳細を解説します。 退職金と確定拠出年金の受け取り方は税金に大きな違いがある 2. 企業型確定拠出年金(企業型DC)の受け取り方法は2種類 企業型確定拠出年金(企業型DC)は、原則、60歳から70歳までの時期で規約に定める「年金」「一時金」の2種類の方法で受け取ることが可能です。「一時金」には、障害が生じたとき、死亡した時等など受け取れるケースがあります。 また、年金と一時金を併用する方法を使えるプランもあります。 ※弊社プランの「SBIぷらす年金」は年金での受取と一時金の受取の2種類です。 ただし、企業型DC制度に50歳以上で加入した場合で通算加入者期間が10年に満たない場合は、受け取れません。ただし、他制度からDC制度へ移換された資産がある場合には、加入年数を合算することも可能です。 受給開始年齢 10年以上 8年以上 6年以上 4年以上 2年以上 1か月 受給可能年齢 60歳 61歳 62歳 63歳 64歳 65歳 3. 企業型確定拠出年金(企業型DC)を「退職一時金」で受け取るとき 企業型確定拠出年金(企業型DC)の老齢給付金を「一時金」として受け取るときには、「退職所得控除」が適用になります。勤続年数に応じて、一時金から控除することができ、金額によっては、一時金すべてが退職所得控除になるので、税制優遇としては非常にメリットの大きいものです。一時金で受け取る場合の計算方法をみていきます。 1. 計算方法 ①課税退職所得の計算方法 課税退職所得金額= (老齢一時金の額−退職所得控除額)✕1/2 ② 退職所得控除額の計算方法 勤続年数 退職所得控除額 20年以下 40万円×勤続年数 80万円に満たない場合には、80万円 20年超 70万円×(勤続年数-20年)+800万円 企業型DCの老齢一時金に対する課税所得を計算する際に注意しておきたいのが、勤続年数についてです。入社時点から企業型DC制度に加入している場合には、掛金払込期間=勤続年数となりますが、途中で加入した場合には、掛金払込期間が勤続年数と読み替えます。1年未満の端数は1年に切り上げます。 2. 実際の計算例 ① 勤続年数(掛金払込期間)が29年2ヶ月で退職。老齢一時金が1,200万円を受給したとき。 ・退職所得控除 =70万円✕(30-20年)+800万円=1,500万円 ・課税退職所得 退職所得控除額が、老齢一時金を上回っているので、課税はされません。 ② 勤続年数(掛金払込期間)が15年で退職。老齢一時金が1,000万円を受給したとき。 ・退職所得控除 =40万円✕15年=600万円 ・課税退職所得 =(1,000万円-600万円)✕1/2=200万円 ③老齢一時金の他にも退職金があるとき 企業型DCの老齢一時金の他に、退職金がある場合には、注意が必要です。他の退職金も併せて受け取る場合、受け取る時期が異なる場合により、算出方法が異なります。 他の退職金等を併せて受け取る場合で、勤続年数(掛金の払込期間)が重複している部分は合算しなければなりません。 例えば、同じ年に他にも退職金の支給を受けているとき ・勤続35年で退職、退職金を1,000万円受給 ・途中で企業型DCに加入(掛金払込期間15年)、老齢一時金1,000万円受給 ・退職所得控除 =70万円✕(35-20年)+800万円=1,850万円 ・課税退職所得 =(2,000万円-1,850万円)✕1/2=75万円 ・退職所得の源泉徴収税額 =(75万円✕0.05)✕1.021=38,287円 このように、課税退職所得の金額に、下記の速算表を当てはめることによって、源泉徴収税額を算出します。 【退職所得の源泉徴収税額速算表】 課税所得金額(千円未満切り捨て)から源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税の額を、以下の速算表に当てはめます。 (税額に1円未満の端数がある場合は切り捨て) 課税退職所得金額(A) 所得税率(B) 控除額(C) 税額=((A)×(B)-(C))×102.1% 195万円以下 5% 0円 ((A)×5%)×102.1% 195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円 ((A)×10%-97,500円)×102.1% 330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円 ((A)×20%-427,500円)×102.1% 695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円 ((A)×23%-636,000円)×102.1% 900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円 ((A)×33%-1,536,000円)×102.1% 1,800万円を超え 4,000万円以下 40% 2,796,000円 ((A)×40%-2,796,000円)×102.1% 4,000万円超 45% 4,796,000円 ((A)×45%-4,796,000円)×102.1% 4. まとめ 企業型確定拠出年金(企業型DC)の老齢給付金は、「年金」と「一時金」では、受けられる税制優遇が異なります。従業員のライフプランにあわせて、最適な受け取り方を選択することが必要です。 50代を過ぎた従業員は、老齢給付金の受け取り時期が近づいてきています。そのため、会社としてできることは、老齢給付金の受給や、受給方法による課税の違いなど、従業員が自身のライフプランを踏まえて選択ができるような情報提供やライフプランのシミュレーションなどのサポートを行ってあげることでしょう。 2025年3月現在、退職所得控除額は5年ルールが存在しており、60歳で確定拠出年金を受取り、65歳以上で退職金を受け取ることで、双方の退職所得控除をフルに活用できます。しかし、今後は退職所得控除額の適用間隔が5年から10年に延長される見込みとなっております。重複期間で退職金を受け取ると、税負担が増えることになりますので、改悪と声が上がっているのが実情です。 日本企業型確定拠出年金センターでは、制度についての質問、受給時の年金・一時金についての情報提供など、さまざまなアドバイスも行っています。お気軽にお問い合わせください。 お問合せ・ご相談はこちら お気軽にお問合せください 営業時間:9:00〜17:00休業日:土曜・日曜・祝日 お電話でのお問い合わせはこちらTEL:050-3645-9040※導入に関するご相談を承っております。個人の方の質問はお答えできませんのでご了承ください。 企業型確定拠出年金とはぐくみ基金は併用できる? 運用... 企業型確定拠出年金と確定給付型企業年金の違いとは? ...