企業型確定拠出年金(企業型DC)と貯金はどちらがお得?DC導入した場合のシミュレーションをご紹介します。 2025.03.14 日本に確定拠出年金制度が導入されて以来、制度改正などを経て、加入者は企業型・個人型ともに増え続けています。とくに中小企業では、労働の多様化が進むなか、従業員のモチベーション向上や人材の採用や定着、さまざまな税制優遇のメリットに注目がされている制度です。 今回は企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入した場合に、加入者となる役員や従業員の将来資産がどのようになるのか、日本企業型確定拠出年金センターが解説していきます。 目次1. 知っておきたい、企業型確定拠出年金(企業型DC)のポイント①企業型DCの特徴②企業型DCの導入・加入条件③企業型DCの拠出金(掛金)④企業型DCの運用⑤企業型DCのメリット⑥企業型DCの給付2. 25歳、月給30万円。選択制DCでのシミュレーションは?①税と社会保険の変化額②投資資産の運用と資産残高3. メリットの多い選択制DCにも注意点がある!①原則として60歳まで、資産の引き出しができない②社会保険料等の変化による各種給付への影響4. まとめ 1. 知っておきたい、企業型確定拠出年金(企業型DC)のポイント DC導入のシミュレーションの前に、まずは企業型確定拠出年金(企業型DC)のポイントを押さえておきましょう。 ①企業型DCの特徴 これまでの企業年金制度は、将来の支給額を約束する確定給付型の仕組みでした。資産を運用するのは企業側となり、運用に失敗し不足分ある場合には、企業側が不足分を補わなくてはなりません。 一方、新しい退職金制度や福利厚生制度として導入の進む企業型確定拠出年金(企業型DC)は、加入者である従業員が掛金を運用し、その運用結果によって将来受け取る給付額が変動する新しい企業年金です。 今までの企業年金と比べ、退職金給付債務を負わないという点で、かなり負担が減る、さらに節税効果があることもあり、興味をもつ企業が増えているというわけです。 さらに、転職などを行う場合に、それまでの運用資産を持ち運ぶ「ポータビリティ」制度があることも、この企業型DC制度の大きなメリットの一つです。人材採用に悩む中小企業にとっては、会社のメリットとして打ち出せる要素となるのではないでしょうか。 ②企業型DCの導入・加入条件 企業型DCを導入・加入するには、厚生年金の適用事業所であり、厚生年金に加入している役員・従業員が対象となります。 ③企業型DCの拠出金(掛金) 企業型DCを導入する際には、掛金の拠出のルールに沿って、拠出金を決定します。原則、会社が掛金を拠出することになり、限度額も決められています。 併用する制度 拠出限度額 企業型DCのみ 月額55000円 年額660,000円 企業型DCと退職一時金 企業型DCと中小企業退職金共済 (中退共) 企業型DCと確定給付企業年金(DB) 月額27,500円 年額330,000円 企業型DCと厚生年金基金 企業型DCを導入すると、厚生年金被保険者である従業員は、原則全員が加入対象者となります。ただし、規約に定めることによって、従業員が加入するか、しないかを選択するといった「選択制DC」を導入することも可能です。 選択制DCは、給与(賞与)の一部を、企業型DCの掛金として拠出することが最大の特徴です。例えば、月給の一部を“生涯設計手当”として設計し、選択制DCの加入者はライフプラン手当から掛金を拠出、選択制DCに加入しない者は、そのまま給与として引き続き受け取るといったことが可能です。 最近人気の『選択制DC』 企業型DCを導入すると、厚生年金被保険者である従業員は、原則全員が加入対象者となります。ただし、規約に定めることによって、従業員が加入するか、しないかを選択するといった「選択制DC」を導入することも可能です。 選択制DCは、給与(賞与)の一部を、企業型DCの掛金として拠出することが最大の特徴です。例えば、月給の一部を“ライフプラン手当”として設計し、選択制DCの加入者はライフプラン手当から掛金を拠出、選択制DCに加入しない者は、そのまま給与として引き続き受け取るといったことが可能です。 ④企業型DCの運用 企業型DCを導入する際には、運用商品のラインアップを決定します。安全性が高く元本確保型の定期預金や保険商品、利回りの高い投資信託など、さまざまな運用商品を用意します。 その中から、加入者(従業員)が選択して、運用指図を行うことになります。 ⑤企業型DCのメリット 企業型DCを導入するうえで、最大のメリットは、税制優遇でしょう。大きくどのような優遇があるのか確認しておきます。 ・掛金を拠出したとき:所得税非課税、住民税非課税 ・資産運用で利益が生じたとき:運用益非課税 ・給付金を受け取るとき:一時金で受け取る場合は退職所得控除、年金で受け取る場合は公的年金等控除 その他、選択制DCを選んだ場合には、社会保険料等への効果も見込めます。 ⑥企業型DCの給付 将来の資産確保は自助努力で、といった意識が高まってきた昨今、受給開始時期までにどのように資産を形成するのかは、非常に重要です。 2. 25歳、月給30万円。選択制DCでのシミュレーションは? 一番気になるのは、“結局、どのくらいお得なの?”ということ。今、加入者が増えている選択制DCを例に、25歳・月給が30万円の人が、毎月2万円の掛金を拠出した場合、どのようになるのかシミュレーションをみていきます。 『シミュレーションの条件』 25歳・月給30万円・選択制DC掛金2万円 加入前 加入後 給与 245,000 245,000 生涯設計手当 55,000 35,000 選択制DC掛金 20,000 総支給額 300,000 300,000 毎月2万円×12か月=24万円(年)の投資資産 ①税と社会保険の変化額 社会保険料(月額) 加入前 加入後 変化額 厚生年金保険料 27,450 25,620 -1,830 健康保険料 17,505 16,338 -1,167 雇用保険料 900 840 -60 合計 45,855 42,798 -3,057 選択制DCの掛金を拠出することにより、社会保険料の算定対象額が変わることになり、社会保険料に影響があります。会社負担・本人負担ともに変化します。 税金(月額) 加入前 加入後 変化額 所得税 5,992 5,433 -558 住民税 11,942 10,850 -1,092 合計 17,933 16,283 -1,650 変化額 月額 4,707 年額 56,484 累計変化額 (60歳まで加入した場合) 1,976,940 年56,484円の効果があり、この税制優遇は加入期間中ずっと続くため、25歳から60歳までの35年間では、 56,484円×35年=1,976,940円の効果が見込まれます。 ※昇給・降給等を考慮していない数値です。 ②投資資産の運用と資産残高 上記のように、選択制DCにおいて、税制優遇や社会保険料への効果は、大きなメリットですが、加えて資産運用中の運用益も非課税であることは、ぜひ押さえておきたいところです。 低金利が続き預貯金を銀行においておくだけでは、資産形成が難しい現在では、どのように運用していくかも非常に大切。利回りによって得られる運用益が非課税となるのであれば、利用しない手はありません。一般的に堅実な運用で目指す利回り3%でシミュレーションを行ってみます。以下のシミュレーションは、25歳・月給30万円の加入者が60歳まで加入した場合の、資産残高を示しています。大きなリターンはのぞめなくても、長期の加入になれば、定期預金との差は歴然です。掛金2万円のケースでは、641万円もの差が発生します。 当たり前ですが、投資はリスクとリターンには相関関係があります。利回りが高い投資になれば、その分リスクも大きいものです。利回りの高い商品と安全な元本確保型商品などを組み合わせながら、自分にあった金融商品を総合的に検討することとなります。とはいえ、DCの場合はバランスの取れた運用商品がセットされますし、ハイリスクハイリターンの株式投資といったようなイメージのものとは異なります。 タンス預金 定期預金 3%の利回りで運用 掛金2万円 掛金3万円 掛金2万円 掛金3万円 掛金(月) 20,000 20,000 30,000 20,000 30,000 運用期間(月) 420 420 420 420 420 投資元本 8,400,000 8,400,000 12,600,000 8,400,000 12,600,000 利回り 0% 0.01% 0.01% 3% 3% 資産残高 8,400,000 8,414,682 12,622,023 14,831,273 22,246,910 3. メリットの多い選択制DCにも注意点がある! 会社にとっては、退職給付負債の減少や社会保険料の負担軽減、従業員にとっては税制優遇など、メリットばかりが目につく選択制DCですが、もちろん注意点もあります。その注意点が次の2つです。 ①原則として60歳まで、資産の引き出しができない 意外にもこの点を忘れがちです。いくら税制優遇などメリットが多くとも、無理して掛金を多く拠出するのは禁物です。60歳までの長期に渡って加入するものですから、環境の変化、家族の事情など、途中でお金が必要なケースが発生するかもしれません。臨時に発生する資金などの余裕も考えながら、掛金を設定することが大切です。 ②社会保険料等の変化による各種給付への影響 選択制DCにとって社会保険料・雇用保険料への影響は、会社にとってメリットではありますが、加入者にとっては、必ずしもメリットだけでもありません。社会保険や雇用保険料が減少すれば、その分給付額に影響する可能性もあるのです。会社に選択制DCを導入する際には、丁寧に従業員への説明が必要です。 4. まとめ 選択制DCを例にシミュレーションを見ていただきましたが、いかがでしたか。実際に数字で確認すると、導入を検討されている企業のみなさまにとっては、より具体的に制度がイメージできるのではないでしょうか。 とくに選択制DCは、豊かな老後生活を迎えるために、必要な資産を準備する自助努力の要素が強い企業年金です。会社としては、従業員自身が正しく制度を理解し、運用を行っていけるよう十分な説明を行っていくことで、適切な制度運営が可能です。 日本企業型確定拠出年金センターでは、300社を超える企業の導入サポートを行っています。制度構築から制度運営支援、もちろんシミュレーションもおまかせいただけます 企業型DC制度を通して、長くお付き合いができるサポート先として、安心してご利用ください。 お問合せ・ご相談はこちら お気軽にお問合せください 営業時間:9:00〜17:00休業日:土曜・日曜・祝日 お電話でのお問い合わせはこちらTEL:050-3645-9040※導入に関するご相談を承っております。個人の方の質問はお答えできませんのでご了承ください。 合同会社の退職金制度。企業型DC活用方法と導入事例に... 企業型確定拠出年金(企業型DC)の掛金配分割合:20...