2025年の年金支給額は上がった?いつから、いくら増額か解説

2025年の年金支給額は上がった?いつから、いくら増額か解説
2025年度(令和7年度)の年金支給額は、物価や賃金の上昇を背景に+1.9%引き上げられました。
年金を受給している方や、将来の受給額に関心がある方にとって、いつから、いくら増えたのかは大きな関心事です。 原則65歳から受け取る老齢年金をはじめ、公的年金の改定は私たちの生活設計に直接影響を与えます。
この記事では、2025年度の年金額改定の具体的な内容、その背景にある仕組み、そして手取り額への影響や注意点について詳しく解説します
1. 結論:2025年度の年金は3年連続で増額が決定
2025年度の公的年金の年金支給額は、2023年度、2024年度に続き3年連続で引き上げられました。

この改定は、近年の物価上昇や賃金の変動を年金額に反映させるための措置です。 年金の額は毎年見直されており、私たちの生活水準を維持するための重要な役割を担っています。
具体的な増額率(+1.9%)や、国民年金・厚生年金それぞれの支給額がいくら変わったのか、また、増額された年金がいつから振り込まれたのかについて、詳しく見ていきます。
2025年の年金額が引き上げられた背景と理由
2025年度の年金額が引き上げられた主な背景には、物価と賃金の変動があります。 日本の公的年金制度では、年金の価値が物価や賃金の変動によって損なわれないよう、毎年改定する仕組みが採用されています。
具体的には、前年の全国消費者物価指数や過去数年間の名目手取り賃金変動率といった指標が基準となります。 2024年の物価上昇率がプラスとなったことが、2025年度の年金額引き上げの直接的な要因です。
この改定は、年金受給者の生活水準を実質的に維持することを目的とした、年金制度の根幹をなす仕組みに基づいています。
増額された年金が実際に振り込まれたのは2025年6月13日(金)から
2025年度の年金額の改定は4月分から適用されていますが、増額された年金が実際に口座に振り込まれたのは、2025年6月13日(金)です。 これは、公的年金の支給が後払い方式であり、原則として偶数月の15日に直前の2ヶ月分が支払われるためです。
したがって、6月13日に振り込まれた年金は、改定が適用された4月分と5月分の合計額です。 受給者が増額を実感できたのはこのタイミングからとなります。 4月や5月の支給額が増えているわけではないため、注意が必要です。
それ以降は、改定後の金額で支払いが継続されています。
年金額はどのような仕組みで毎年見直されるのか
年金額は、法律に基づき毎年度改定される仕組みとなっています。 この改定ルールは、主に「名目手取り賃金変動率」と「物価変動率」という2つの指標を基に決定されます。
原則として、新たに年金を受け取り始める68歳未満の方(新規裁定者)は名目手取り賃金変動率を、すでに受給している68歳以上の方(既裁定者)は物価変動率を用います。 これは、現役世代の賃金の伸びに合わせるか、物価の変動に合わせて購買力を維持するかの違いを反映したものです。

2. 【種類別】2025年度の年金はいくら増えた?具体的な支給額を解説
2025年度の年金額改定によって、実際に受け取るお金はいくら増えたのでしょうか。 年金の増額は、国民年金(老齢基礎年金)と厚生年金で計算方法が異なります。

ここでは、それぞれの年金種類別に、具体的な年金支給額がどの程度増えたのかをモデルケースを用いて解説します。 ご自身の状況と照らし合わせながら、将来の生活設計の参考にしてください。
具体的な金額を把握することで、家計管理にも役立てることが可能です。
国民年金(老齢基礎年金)は月額いくら増えた?
2025年度の国民年金(老齢基礎年金)は、満額受給の場合、前年度から増額されました。 具体的には、2024年度の満額は月額68,000円でしたが、2025年度には新規裁定者(68歳未満)の満額は月額69,308円(前年度比+1,308円)に引き上げられました。
65歳から受給を開始し、40年間(480ヶ月)すべての保険料を納付した場合に、この満額を受け取れます。 保険料の未納期間や免除期間がある場合は、その期間に応じて年金額は減額されるため、すべての方が満額を受け取れるわけではありません。
ご自身の加入記録に応じた正確な受給額は「ねんきんネット」などで確認することが重要です。
厚生年金はモデル世帯でどのくらい増えた?
厚生年金は、加入期間や現役時代の報酬額によって支給額が大きく異なるため、一律で増額幅を示すことは困難です。 そこで、厚生労働省が公表しているモデル世帯(平均的な収入で40年間就労した夫と、その期間専業主婦であった妻の世帯)を参考に見ていきます。
2024年度のモデル世帯の年金月額は230,483円(老齢基礎年金を含む)でしたが、2025年度の改定により、月額232,784円になりました。 ただし、これはあくまで標準的な一つの例であり、個々人の受け取るお金の額とは異なります。

年金はいつから受け取る?繰り上げ・繰り下げ受給の注意点

公的年金は原則65歳から受け取りが始まりますが、ご自身の選択により、60歳まで繰り上げて受け取る、または75歳まで繰り下げて受け取ることが可能です。
繰り上げ受給を選択すると年金額は減額されますが、早く受け取れます。一方、繰り下げ受給を選択すると年金額が大幅に増額されます。2025年度の増額を最大限に活かすには、この受給開始時期の選択が非常に重要です。
受給額の計算方法やメリット・デメリットについては、こちらのYouTube動画で詳しく解説していますので、参考にしてください。
3. 年金生活者支援給付金の支給額も引き上げ
2025年度は、公的年金の支給額だけでなく、所得が低い年金受給者の生活を支援する「年金生活者支援給付金」の額も引き上げられました。

この給付金は、年金収入を含めた所得が一定基準額以下の方を対象に、年金に上乗せして支給されるものです。 老齢年金の受給者に限らず、障害年金や遺族基礎年金を受給している方も対象となる場合があります。
年金額の改定と連動して給付基準額も見直されたため、対象となる方にとっては生活費を補う重要な支援となっています。
年金生活者支援給付金とはどんな制度?
年金生活者支援給付金は、公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準以下の年金受給者の生活を支援するために、年金に上乗せして支給される給付金です。 この制度は、消費税率の引き上げ分を財源として2019年10月に始まりました。
対象となるのは、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の受給者です。 この給付金は、年金制度を補完する役割を担い、特に所得の低い高齢者や障害を持つ方々の生活の安定を図ることを目的としています。
支給額は、保険料の納付済期間や免除期間に応じて算出され、所得額によっても調整されます。
給付金の対象となる条件を確認しよう
年金生活者支援給付金を受け取るためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
老齢基礎年金の受給者の場合、65歳以上であること、世帯員全員の市町村民税が非課税であること、そして前年の公的年金収入額とその他の所得額の合計が一定の基準額以下であることが主な要件です。 障害年金や遺族基礎年金の受給者の場合は、前年の所得が定められた基準額以下であることが条件となります。

4. 2025年の年金増額で手取りは増えた?知っておきたい注意点
2025年度の年金支給額は増額されましたが、それによって手取りのお金が同じように増えるとは限りません。

年金収入からは、所得税や住民税、介護保険料、国民健康保険料(後期高齢者医療保険料)などが天引きされるため、額面の増加が直接手取り額の増加につながらない場合があります。
また、働きながら年金を受給している場合や、現役世代の保険料負担にも変更がありました。 年金増額のニュースと合わせて、これらの注意点も理解しておくことが重要です。
働きながら年金をもらう「在職老齢年金」の基準額も変わった
60歳以降に厚生年金に加入しながら働き、給与(総報酬月額相当額)と年金(基本月額)の合計額が一定の基準額を超えた場合、年金の一部または全額が支給停止される「在職老齢年金」という制度があります。
この支給停止の基準となる金額は、毎年の賃金変動に応じて見直される仕組みです。 2025年度は賃金の上昇に伴い、この基準額も引き上げられ、51万円になりました。 基準額が上がったことにより、これまで年金の一部が支給停止されていた方でも、停止されずに受け取れる年金額が増えました。
特に65歳以上で働き続ける方にとって、この年金制度の変更は収入に直結する重要なポイントです。
国民年金保険料の負担は前年度より増加した
年金受給額が増額された一方で、現役世代が納める国民年金保険料の負担は増加しました。 国民年金保険料の額は、法律で定められた額に、毎年度の保険料改定率を乗じて決定されます。
この改定率は賃金の変動を基に算出されるため、賃金が上昇すれば保険料も引き上げられます。 2025年度の保険料は、月額17,510円(前年度比+530円)になりました。これは、2024年度の月額16,980円から引き上げられたものです。

5. 今後の年金はどうなる?将来の見通しと今からできる備え
2025年度の年金増額は決まりましたが、少子高齢化が進む日本において、長期的な年金制度の将来に不安を感じる方は少なくありません。

将来の年金支給水準を調整する「マクロ経済スライド」という仕組みや、今後の年金額の見通しを理解することは、将来のお金に関する計画を立てる上で不可欠です。
公的年金制度の動向を把握するとともに、変化に対応するための個人レベルでの備えについても考えていく必要があります。
年金額を調整する「マクロ経済スライド」をわかりやすく解説
マクロ経済スライドは、社会情勢の変化(現役世代の人口減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。 具体的には、その年の物価や賃金の伸び率から、「スライド調整率」と呼ばれる数値を差し引いて年金の改定率を決定します。
これにより、物価や賃金が上昇したとしても、年金額の伸びはそれよりも緩やかに抑制されます。 この仕組みの目的は、将来の現役世代の負担が過重になることを防ぎ、長期にわたって年金制度を安定的に運営していくことです。
デフレで物価や賃金がマイナスの場合は発動されず、その分は翌年度以降に繰り越される「キャリーオーバー」という仕組みもあります。
2026年以降も年金額は増え続けるのか
2026年以降の年金支給額がどうなるかは、その時々の物価や賃金の動向に左右されます。 経済が成長し、物価や賃金が上昇を続ければ、年金額の額面もそれに連動して増額改定される可能性を残しています。
しかし、長期的な視点で見ると、「マクロ経済スライド」が発動されるため、年金額の伸びは物価や賃金の伸びを下回ることになります。 これは、年金の実質的な価値が少しずつ減少していくことを意味します。
少子高齢化が続く限り、年金財政は厳しい状況に置かれるため、将来の年金支給水準が現在と同等を維持することは難しいと考えられています。
将来のために個人でできる資産形成の重要性
公的年金は老後の生活を支える基盤ですが、その支給水準が将来的に実質価値で減少する可能性を考慮すると、公的年金だけに頼る生活設計にはリスクが伴います。
そのため、個々人が主体的に資産形成に取り組み、老後のための「もう一つのお金の柱」を作っておくことの重要性が高まっています。 確定拠出年金(企業型DC、iDeCo)や新しいNISAなど、国が税制上の優遇措置を設けている制度を活用することは、効率的な資産形成の有効な手段です。

6. まとめ
2025年度の年金額は、物価や賃金の上昇を反映して3年連続で増額されました。 この改定は、年金制度が社会経済の変動に対応する仕組みに基づいています。

ただし、額面が増えても税金や社会保険料が引かれるため、手取り額の増加は限定的になることがあります。 また、長期的にはマクロ経済スライドにより年金の伸びは抑制される傾向があります。
このような年金制度の現状と将来をふまえ、公的年金の仕組みを正しく理解するとともに、確定拠出年金やNISAといった制度を活用して個人で老後のお金に備える資産形成の重要性が一層増しています。