選択制の企業型確定拠出年金(企業型DC=401kを導入すると、残業代はどうなる? 2025.03.14 企業型確定拠出年金(企業型DC=401k)は、中小企業においても導入が進み、今後の法改正なども影響して、さらに増えていくことが予想されます。 なかでも、「選択制DC」と呼ばれる従業員が掛金を拠出するタイプのDC制度を導入する企業も増えています。 選択制DCは、従業員の給与の一部を掛金として拠出するため、就業規則や給与規程の見直しなど、入念に準備をしておく必要があります。企業担当者にとっては、給与の計算方法にも影響が出てくるものです。なかでも、残業計算の取り扱いをどうしたら?との声もあります。 従業員にとって重要な「給与」に関わることですので、間違いや認識違いがあっては、後々大変です。 今回は、選択制DCを導入する場合の、給与の取り扱いについて、日本企業型確定拠出年金センターが解説していきます。 目次1. 「選択制DC」は従業員の給与の一部を掛金として拠出する2. 選択制DC制度を導入するには、「就業規則」「給与規程」の改定が必要①新たに給与項目を設定する②従業員に選択権を付与する③給与明細書も変更する3. 選択制DC制度を導入すると、残業手当は変わる?4. 従業員への選択制DC制度の説明が重要5. まとめ 1. 「選択制DC」は従業員の給与の一部を掛金として拠出する 選択制DCとは、企業型確定拠出年金(企業型DC=401k)の制度のうちの一つです。企業型DC(401k)は、原則、会社が毎月掛金を拠出し、従業員が運用するしくみです。一方で、選択制DCは、従業員が毎月掛金を拠出することになります。 その毎月の掛金は、従業員の給与の一部を切り出して拠出することになります。“選択”という名の通り、従業員が給与の一部を掛金としてDCに拠出するか、そのまま給与として受け取るかを選択できることから、選択制DCと呼ばれています。 ■AかBかを選択する A:選択制DCを行わない。給与として、今、受け取る B:選択制DCを行う。掛金として拠出し、将来、受け取る。 2. 選択制DC制度を導入するには、「就業規則」「給与規程」の改定が必要 選択制DC制度を導入する場合、従業員は、今まで通り給与としてそのまま受け取るか、給与の一部を掛金として拠出するかを選択することになります。そのため、会社は、給与に関する事項を変更しなければならないため、就業規則や給与規程の改定が必要となります。 ①新たに給与項目を設定する 従業員の給与の一定額について、毎月支払われる給与と異なる区分となるよう給与項目を設定し、就業規則や給与規程に規定します。 ②従業員に選択権を付与する 従業員の選択によって、給与として“今”受け取るのか、選択制DCの掛金として拠出し、“将来”受け取るのかが決定されます。そのため、給与の一部の受け取り時期を決める選択権が従業員に与えられる、ということになります。 【給与規程の記載例】 第○条 (生涯設計手当) 「生涯設計手当」は、従業員の老後の生活と福祉の向上を目的に、「確定拠出掛金」として支給するものとする。 選択制DC制度を導入する際には、就業規則も提出する必要があります。 ③給与明細書も変更する 就業規則、給与規程を改定したら、給与明細書も忘れず変更しておきましょう。支給総額が変わらないので、変更しなくてもよさそうな気もしますが、選択制DC制度利用する人も、利用しない人であっても、給与明細書を変更しておく必要があります。 3. 選択制DC制度を導入すると、残業手当は変わる? 選択制DC制度を導入すると、今まで基本給として設定されていた給与項目に加え、掛金を拠出する項目が新たに設定されることになります。 ここで注意したいのが、新たに給与項目を加えたことによって、従来基本給として設定していた金額が減少することになります。残業手当を計算する際に、基本給を算定基礎としている場合には、不利益な取り扱いにならないようにしなければなりません。生涯設計手当とした分を残業手当の算定基礎に含みます。 選択制DCとして掛金を拠出する従業員も、通常通り給与として受け取る従業員も、残業手当の計算には同等に取り扱うことをおすすめします。 そのため、「基本給」+「生涯設計手当」を残業手当算定の基礎とする取り扱いとし、就業規則や給与規程に規定しておきましょう。 【給与規程の記載例】 第○条 (生涯設計手当) ・確定拠出年金掛金とされた額は、時間外手当、法定休日出勤手当、深夜勤務手当、欠勤、遅刻、早退に対する給与の減額、賞与、退職金等の計算においては、確定拠出年金の掛金として拠出しなかったものとみなす。 4. 従業員への選択制DC制度の説明が重要 選択制DCは、従業員の意思で選択できるため、比較的受け入れやすい制度といえます。しかし、選択制DCを利用しない従業員にとっても、基本給と生涯設計手当などに給与項目がわかれることになるため、基本給が下がるのでは?と抵抗感を抱く従業員がいないとも限りません。 制度についての正しい理解がされていないと、トラブルに発展してしまうこともあります。選択制DC制度の説明はもちろんのこと、就業規則・給与規程・退職金規程などを体系的に説明して、理解を深めてもらいましょう。 5. まとめ 選択制DC制度は、企業側に掛金負担がないメリットがあります。しかしながら、費用負担がないからこそ、より従業員への理解促進には慎重に丁寧に進めることが必要になってきます。 事前の制度説明会はもちろんのこと、制度導入後も定期的に理解を深めてもらう機会も必要になってきます。就業規則や給与規程を改定することになりますので、労使の協議も必要です。制度導入は、企業担当者にとって案外に労力を要するイベントです。そこでおすすめするのは、企業型DC(401k)に詳しいサポート先の協力を得ることです。日本企業型確定拠出年金センターでは、制度導入から導入後の運営まで、幅広くサポートしています。お気軽にお問い合わせください。 お問合せ・ご相談はこちら お気軽にお問合せください 営業時間:9:00〜17:00休業日:土曜・日曜・祝日 お電話でのお問い合わせはこちらTEL:050-3645-9040※導入に関するご相談を承っております。個人の方の質問はお答えできませんのでご了承ください。 企業型確定拠出年金(企業型DC)と米国401kの違い... 勤続年数8年の退職金は平均いくら?大企業・中小企業別...