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役員退職金支給時に争点となる
「退職の事実」とは?分掌変更の要件や判例も解説
役員退職金は、役員が退任する際に支給される一時金です。支給した役員退職金は法人の損金に算入され、受け取った個人は退職所得として取り扱われます。
ただし、前提として「退職の事実」が求められる点に注意しましょう。役員を退任したものの、実質的に役員と同じ業務を行っている場合、退職の事実が認められず税務上で問題になるリスクがあります。
今回は、役員退職金を支給する際に知っておくべき「退職の事実」について解説します。
役員退職金とは、役員が退任するときに支給する一時金です。企業に貢献してきた報酬的な意味合いがあり、役員のモチベーション向上や長期的な経営戦略にも関わる重要な要素です。
支給した役員退職金は、企業会計で損金算入できます。また、受け取った個人は退職所得として取り扱われ、退職所得控除の適用を受けることが可能です。
しかし、退職金は「退職」という名称があるように、役員から身を引いている必要があります。「退職の事実」がなければ、企業側の損金算入や個人の退職所得としての受け取りが否認されるため注意しましょう。
退職の事実がないにも関わらず役員退職金を支給すると、以下のような問題が起こります。
● 企業会計:役員賞与として支給額の全額が損金不算入となる
● 個人:給与所得として総合課税の対象となる(退職所得控除が受けられない)
つまり、法人でも個人でも納めるべき税額が増えます。中小零細企業にとっては、大きな問題になりかねません。適正に役員退職金を支給するには、法令や税務の知識が必須といえるでしょう。
役員を退任して勤務先から完全に離れる場合だけでなく、分掌変更によって役員としての地位や職務の内容が激変したときも、実質的に退職したと判断されます。
具体的に、退職の事実に該当するための条件は以下のとおりです。
● 常勤役員が非常勤役員になったこと(常勤していない者であっても代表権を有している場合や、実質的にその会社の経営たこと上主要な地位を占めていると認められる場合は除く)
● 取締役が監査役になったこと(監査役でありながら実質的にその会社の経営上主要な地位を占めていると認められる場合や、使用人兼務役員として認められない大株主である場合は除く)
● 分掌変更等の後の役員の給与が概ね50%以上減少したこと(分掌変更等の後においても、その会社の経営上主要な地位を占めていると認められる場合は除く)
つまり、肩書きが変わるだけでなく、実態として役員の業務から離れている必要があります。役員に、退職の事実や分掌変更をはじめとした退職に準ずる一定の事実がない場合、退職とは認められません。
事業承継のケースにおいて、退職の事実が認められるかを巡って争われることがあります。
例えば、前代表取締役が退任したあと、新代表取締役が独り立ちするまでの間、会社に残りサポートするのは実務上でもよく見られます。
前代表取締役が退任後も引き続き、代表取締役として法人の経営にあたっている場合、退職の事実が認められない可能性があります。報酬や出勤頻度などを総合的に加味したうえで最終的に判断しますが、実態として経営上主要な地位を有している場合は注意が必要です。
税務署より退職の事実を否定されてしまうと、企業の損金算入や個人の退職所得としての取り扱いが認められません。
税務調査で指摘されるリスクを軽減するためにも、以下のような対策を講じることが有効です。
● 議事録を作成する
● 登記をきちんと済ませておく
● 証拠資料を保管する
● 常勤役員が非常勤役員になった旨を社内報に掲載する
● 取引先にも役員退任の旨の挨拶状を送付する
● インターネット上で対外的に分掌変更したことを通知する
ただし、退職の事実が争点となった判例を見ると、「実質的」な退職の事実があるかどうかが肝となります。
● 形式的に退職の事実がありさえすれば当然に退職給与と認められるわけではなく、実質的な退職の事実がなければ退職の事実は認められない
● 取締役を退任し監査役に就任した役員に対して役員退職給与を支給している場合でも、実質的に退職したと同様の事情にあると認められるか否かを具体的な事情に基づいて判断する必要がある
「形式」ではなく「実態」を重視していることが分かる判例です。役員退職金を支給する際の税務上のリスクを軽減するためにも、実態としてどうなのかを判断することが大切です。
役員退職金を損金算入するには、役員に退職の事実があることに加えて、適正な金額である必要があります。税務署より「不相当に高額」と判断されると、適正値を超える額が損金不算入となり、法人税に影響が出るため注意が必要です。
会社法において、役員退職金を支給する際には、規程を定めたうえで定款または株式総会の決議により支給を決定する必要がある旨が定められています。規程において基準が曖昧である場合、税務署から「不相当に高額」として、否認される危険性が高まります。
つまり、役員退職金の損金算入が税務上認められないリスクを回避するうえで、役員退職金の支給基準を具体的かつ明確に定めることは有効な対策です。
なお、不相当に高額な部分かどうかは、以下のようなさまざまな要素を勘案したうえで判断します。
● 退職した役員の勤続期間
● 退職の事情
● 退職時の給与額
● 他の同規模同業種の会社における支給状況
つまり、一律的な正解はありません。役員の貢献度や責任範囲なども考慮し、公平かつ透明性のある規程を作成することが基本的な考え方となります。
役員退職金を支給する際には、煩雑な手続きを踏む必要があるうえに、退職の事実を客観的に評価しなければなりません。また、支給する金額が適正かどうかを考慮する必要もあります。
社内では適正に処理を進めていても、税務署から指摘を受けると税金に大きな影響を与える可能性があります。
税務リスクを軽減できる退職金制度の一つが、企業型確定拠出年金です。企業型確定拠出年金とは、加入者が自分の責任で運用しながら退職金を用意する制度です。
給付金は原則60歳以降に受け取りますが、運用成果によって受け取れる給付金額は異なります。加入者自身が運用するため、一般的な退職金のように退職の事実や適正な金額かをめぐって問題になるリスクがありません。
もちろん経営者や役員も加入でき、事業主が負担する掛金は全額福利厚生費として法人の経費として算入できます。また、企業型確定拠出年金では運用益が非課税となるため、税制優遇制度が用意されている点もメリットです。
法人税に影響を与えつつ、計画的に役員退職金を用意できる制度として企業型確定拠出年金は注目されています。役員一人のみの中小零細企業でも導入できるため、導入までのハードルが低い点も特徴です。
役員退職金の取り扱いは、企業の財務と税務に大きな影響を与えます。特に「退職の事実」をめぐって問題になるケースが多いことから、支給までのプロセスを慎重に進めなければなりません。
もし税務署から指摘を受けると、追徴課税となる可能性があります。事業運営に悪影響が出てしまう恐れがあるため、注意しましょう。
税務上のリスクを軽減できる退職金制度が、企業型確定拠出年金です。加入者が自分の責任で運用を行うため、企業としては税務上のリスクだけでなく運用リスクを負わずに済みます。
ただし企業型確定拠出年金を導入する際には、金融や年金、税金などさまざまな分野に関する知識が求められます。
日本企業型確定拠出年金センターでは、これまでに1,300社を超える企業に対して、企業型確定拠出年金の導入サポートを行ってきました。豊富な経験と知識を活かして、導入から制度運用のサポートをいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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