50代からの資産形成は企業型DC・iDeCo・NISAどれがいい?わかりやすく解説します
50代からの資産形成は企業型DC・iDeCo・NISAどれがいい?わかりやすく解説します
50代は子育てが一段落し、定年を意識し始めるなど、ライフステージが大きく変化する時期です。
老後資金や将来のライフイベントへの備えとして、本格的に資産形成を考え始める方も多いのではないでしょうか。
本記事では、50代の方が資産形成を始めるにあたり、代表的な制度である企業型DC・iDeCo・NISAについて、それぞれの特徴や違い、ご自身の目的に合った選び方をわかりやすく解説します。
動画で解説:50代からの企業型確定拠出年金|おすすめ配分で賢く資産形成
50代からの老後資産形成の1つとして、企業型確定拠出年金がおすすめな理由を解説します。

1. 【結論】50代の資産形成は目的別に確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)とNISAを使い分けるのがおすすめ
50代からの資産形成において、確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)とNISAのどちらか一方を選ぶのではなく、それぞれの制度の特性を理解し、目的別に使い分けることが最適な選択です。
「老後資金を確実に貯めたい」「税金の負担を軽くしたい」という目的であれば確定拠出年金、「将来の趣味やリフォーム資金に充てたい」といった流動性を重視するならNISAが適しています。
2. 50代が知っておきたい確定拠出年金とNISAの制度概要
50代から資産形成を始める上で、まずは各制度の基本的な仕組みを理解することが重要です。
企業型DC、iDeCo、NISAは、いずれも税制上の優遇措置を受けながら資産形成ができる国の制度ですが、その特徴は異なります。
ここでは、それぞれの制度がどのような仕組みで、どのようなメリットがあるのか、基本的な概要を解説します。 ご自身の状況にどの制度が合っているかを見極めるための第一歩となります。
企業型DCは税制優遇・掛金拠出の面でメリットが大きい企業年金制度
企業型DC(企業型確定拠拠出年金)は、企業が従業員のために掛金を拠出し、従業員自身が運用商品を選んで資産を形成する企業年金制度です。
会社が掛金を負担してくれるため、自己負担なく資産形成を始められる点が大きなメリットです。 また、規約によっては従業員が掛金を上乗せする「マッチング拠出(今後の改正で主流が見込まれる)」も可能で、その場合はiDeCoと同様に掛金が全額所得控除の対象となり、高い節税効果を得られます。
50代で勤務先にこの制度がある会社員の方は、まず活用を検討すべき制度といえます。 運用益が非課税になる点や、受け取り時に各種控除が適用される点も、iDeCoと共通する税制優遇です。
iDeCoは税制優遇が大きい私的年金制度
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、個人が任意で加入し、自分で掛金を拠出して運用する私的年金制度です。 最大の特長は、掛金の全額が所得控除の対象になることで、所得税や住民税の負担を軽減しながら将来の資産を準備できます。
また、運用期間中に得た利益は非課税で再投資され、資産を受け取る際にも退職所得控除や公的年金等控除が適用されるなど、税制優遇が手厚く設計されています。 ただし、企業型DCと違い手数料が発生することや、こちらも老後の所得確保を目的としているため、原則として60歳になるまで引き出すことはできません。
この仕組みにより、他の用途に使ってしまうことなく、着実に老後資金を貯めることが可能です。
NISAは利益が非課税になる少額投資制度
NISAは、毎年の非課税投資枠の範囲内で購入した金融商品から得られる利益(配当金・分配金・譲渡益)が非課税になる制度です。 2024年から始まった新しいNISAでは、非課税で保有できる期間が無期限化され、年間の投資上限額も拡大しました。
最大の特長は、確定拠出年金とは異なり、積み立てた資産をいつでも自由に売却して引き出せる流動性の高さにあります。 そのため、老後資金はもちろんのこと、近い将来の住宅リフォーム費用や子どもの結婚資金、趣味のための資金など、様々なライフイベントに備えるための資産形成に適しています。
3. 確定拠出年金とNISAの重要な違いを5つのポイントで比較
確定拠出年金とNISAは、どちらも税制優遇のある魅力的な制度ですが、その仕組みには多くの違いがあります。
50代から資産形成を始めるにあたっては、運用できる期間が限られるため、よりご自身のライフプランに合った制度を選ぶことが重要です。
ここでは、加入年齢や資金の流動性、税制優遇の内容など、制度選択において特に重要となる5つのポイントに絞って両者を比較し、それぞれのメリット・デメリットを明らかにします。
①加入年齢と受取開始年齢の制限
企業型DCの加入可能年齢は70歳です。 iDeCoの加入可能年齢は、2022年5月から65歳未満まで延長されました(ただし国民年金に加入していることが条件)。
特に50歳以降にiDeCoに加入する場合、通算加入者等期間が10年に満たないと、受給開始年齢が61歳から65歳の間で段階的に引き上げられる点に注意が必要です。 例えば、55歳で加入した場合、受給開始は最短で63歳からとなります。
一方、NISAには加入年齢の上限はなく、成人であれば誰でも始めることが可能です。 また、NISAは受取開始年齢にも制限はなく、いつでも好きなタイミングで資産を売却し、現金化することができます。 この自由度の高さがNISAの大きな特徴です。
②途中で資金を引き出せるかどうかの流動性
資金の流動性は、両制度の最も大きな違いの一つです。 確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)は、老後の所得確保を目的とした年金制度であるため、原則として60歳になるまで積み立てた資産を引き出すことはできません。
この資金がロックされる仕組みは、計画的に老後資金を準備する上ではメリットですが、急な出費には対応できないというデメリットもあります。 対照的に、NISAはいつでも保有している金融商品を売却して現金化できます。 子どもの教育費や住宅のリフォームなど、老後資金以外の突発的な資金ニーズにも柔軟に対応できる高い流動性が魅力です。
どちらの制度が適しているかは、資産形成の目的によって大きく異なります。
③税金の優遇措置から見た節税効果
税制優遇の面では、確定拠出年金がより手厚い仕組みとなっています。 企業型DCのマッチング拠出では、加入者の運用商品の選択の幅が広がることに加え、所得税・住民税が軽減されます。 さらに、運用中の利益は非課税で、資産を受け取る際にも退職所得控除や公的年金等控除が適用されます。
一方、NISAの税制優遇は運用益が非課税になる点のみで、掛金の所得控除はありません。 そのため、毎年の税負担を直接的に軽減したい場合には、確定拠出年金の方が効果は大きくなります。
特に50代は所得が高い傾向にあるため、所得控除による節税メリットは非常に魅力的です。
④選べる金融商品の種類の幅広さ
運用できる金融商品の選択肢にも違いがあります。 NISAでは、証券会社などが取り扱う多くの金融商品の中から、個別株式、投資信託、ETF(上場投資信託)など、幅広い選択肢から自由に選んで投資することが可能です。 積極的にリターンを狙いたい方から安定運用を好む方まで、多様なニーズに対応できます。
一方、確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)では、運営管理機関(金融機関)があらかじめ選定した、数十種類程度の金融商品ラインナップの中から選ぶことになります。 主に投資信託や定期預金などの元本確保型商品で構成されており、初心者でも選びやすい反面、NISAほどの自由度はありません。
50代の投資方針によって、どちらが適しているかは異なります。
⑤毎月かかる手数料の有無
制度を利用する上でのコスト、特に手数料の有無は重要な比較ポイントです。 iDeCoでは、加入時の初期費用に加え、国民年金基金連合会や運営管理機関(金融機関)に支払う口座管理手数料が毎月発生します。 金融機関によって手数料は異なるため、選択の際には比較検討が必要です。
企業型DCの場合は、基本的に企業が手数料を負担してくれます。 これに対し、NISAは多くの金融機関で口座管理手数料が無料となっており、コストを抑えて運用を始めやすいのが特徴です。
4. 50代から確定拠出年金・NISAを始めるのは遅い?得られるメリットを解説
50代になると「今から資産形成を始めても遅いのではないか」と考える方も少なくありません。
しかし、40代以前から始める場合とは異なる、50代だからこそ得られるメリットも存在します。所得が高くなる傾向にあるこの年代では、確定拠出年金の節税効果を大きく実感できますし、NISAを活用すれば退職後も見据えた柔軟な資産管理が可能です。
ここでは、50代からでも遅くない理由と、今から始めることで得られる具体的なメリットについて解説します。
確定拠出年金は節税効果をすぐに実感できる
50代は、キャリアの中で所得がピークを迎える方が多い年代です。 そのため、iDeCoや企業型DCのマッチング拠出を利用した場合の運用効率や節税効果が非常に大きくなります。
拠出した掛金は全額が所得から控除されるため、課税対象となる所得が減り、結果として所得税や住民税の負担が軽減されます。例えば、年収600万円の会社員が毎月2万円を確定拠出年金で積み立てた場合、年間で約4.8万円の税金が軽減される計算になります。
この節税効果は運用成果とは別で確実に得られるリターンと考えることができ、毎年の年末調整で還付金として実感できるため、資産形成を続けるモチベーションにもなります。
NISAは運用期間に縛りがなく柔軟な資産形成が可能
NISAの最大のメリットの一つは、運用期間に縛りがないことです。 2024年から始まった新NISAでは制度が恒久化され、非課税で商品を保有できる期間も無期限になりました。
そのため、50代から始めても、必ずしも60歳や65歳の定年時に運用を終える必要はありません。 退職後も運用を継続し、生活費の足しとして必要な分だけ取り崩したり、さらに資産を成長させたりといった柔軟な使い方が可能です。 人生100年時代といわれる現代において、退職後の生活は長期にわたります。
運用期間の制約がないNISAは、50代から始める長期的な資産管理のツールとして非常に有効です。
複利効果を活かして効率的に資産を増やせる
資産運用における「複利効果」とは、運用で得た利益を元本に加えて再投資することで、利益がさらに新たな利益を生み出す効果のことです。 投資期間が長くなるほど、この効果は雪だるま式に大きくなります。
50代からのスタートでは運用期間が短いと思われがちですが、仮に65歳まで15年間運用すれば、複利効果を十分に活かすことが可能です。 また、退職金などまとまった資金をNISAで運用し、さらに長期で保有を続けることも考えられます。 たとえ短期間であっても、元本が大きいほど複利の効果は表れやすくなります。
5. 【目的別】50代のあなたに合うのは確定拠出年金?それともNISA?
確定拠出年金とNISA、それぞれの制度の特徴を理解した上で、次はご自身の具体的な目的に合わせてどちらがより適しているかを考えていきましょう。
50代の資産形成では、「老後資金の準備」と「近い将来のライフイベントへの備え」という二つの側面が重要になります。 ここでは、目的別にどちらの制度が向いているか、また、両方を組み合わせるという選択肢についても解説します。
ご自身のライフプランと照らし合わせながら、最適な活用法を見つけてください。
老後資金を確実に準備したいなら確定拠出年金が向いている
資産形成の目的が「老後の生活資金を確実に準備すること」に絞られるのであれば、確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)が最も適しています。 その最大の理由は、原則として60歳まで資金を引き出せないという点です。
この「ロック機能」により、途中で他の目的に使ってしまう誘惑に駆られることなく、着実に老後資金を積み立てることが可能です。 また、掛金の全額所得控除という強力な節税メリットがあるため、現役世代のうちに手取り収入を減らすことなく、効率的に将来への備えを進められます。
意志の力に頼らず、制度の力で半強制的に貯蓄できる仕組みは、老後資金準備において大きな強みとなります。
教育費やリフォームなど近い将来の出費に備えるならNISAが最適
老後資金だけでなく、数年後から10年後といった比較的近い将来に予想される出費に備えたい場合には、NISAが最適です。 例えば、子どもの大学院進学費用や結婚資金の援助、自宅のリフォーム、車の買い替えなど、50代には様々なライフイベントが考えられます。
NISAはいつでも必要な時に資産を売却して現金化できるため、こうした多様な資金ニーズに柔軟に対応できます。 非課税の恩恵を受けながら資産を増やし、必要なタイミングで活用できる流動性の高さは、確定拠出年金にはない大きな魅力です。
6. 50代からの資産形成で失敗しないための3つの注意点
50代からの資産形成は、若い世代とは異なり、運用できる期間やリスクの許容度に限りがあります。
そのため、メリットを最大限に活かしつつ、失敗を避けるための注意点を押さえておくことが非常に重要です。
ここでは、50代の方が資産形成を始める際に、特に心に留めておくべき3つのポイントを解説します。 これらの注意点を守ることで、より安全かつ着実に資産を築いていくことが可能になります。
運用期間が短いためハイリスクな商品は避ける
50代からの資産運用は、20代や30代に比べて運用期間が短くなるため、時間的な制約を考慮する必要があります。 もし大きな価格変動を伴うハイリスクな商品に投資して損失を被った場合、その損失を回復するための十分な時間が確保できない可能性があります。
そのため、個別株への集中投資や、リスクの高いテーマ型ファンドなどへの過度な投資は避けるべきです。
資産を守りながら着実に増やすことを目指し、世界中の株式や債券に分散投資されたバランス型の投資信託をポートフォリオの中心に据えるなど、安定性を重視した運用を心がけることが賢明です。
退職金の受け取り方と確定拠出年金の出口戦略を考えておく
資産を「増やす」ことだけでなく、「受け取る」際の出口戦略をあらかじめ考えておくことが、60歳が近づく50代にとって重要です。 特に確定拠出年金は、一時金で受け取るか、年金形式で分割して受け取るか、あるいは両者を併用するかを選択でき、受け取り方によって税金の計算方法が異なります。
会社の退職金と受け取るタイミングをずらすことで、退職所得控除を最大限に活用し、税負担を抑えることも可能です。
NISAについても、一括で現金化するのか、生活費として毎年一定額を取り崩していくのかなど、自身のライフプランに合わせた計画を立てておくことが、資産を長持ちさせる秘訣です。
まずは生活防衛資金を十分に確保してから始める
投資は、日々の生活に影響のない余剰資金で行うのが大原則です。 特に50代は、自身の病気や親の介護、予期せぬ失業など、突発的な出費が発生する可能性が高まる年代です。 そのため、資産運用を始める前に、万が一の事態に備えるための「生活防衛資金」を必ず確保しておく必要があります。
目安としては、生活費の半年分から1年分程度を、いつでも引き出せる預貯金で用意しておくと安心です。
7. まとめ
50代からの資産形成は決して遅くなく、確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)とNISAを賢く使い分けることで、効率的に将来への備えをすることが可能です。
企業型DCは企業が手数料を負担するため、福利厚生として活用いただけます。
所得控除による高い節税効果を得ながら確実に老後資金を準備したいなら確定拠出年金、老後資金以外の様々なライフイベントにも柔軟に対応できる流動性を重視するならNISAが適しています。
そして、多くの場合、この二つを併用することが、節税と柔軟性を両立させる最適な選択肢となります。 ご自身のライフプランや資産形成の目的を明確にし、60歳以降の豊かなセカンドライフの実現に向けて、今から着実な一歩を踏み出しましょう。



