企業型DC・iDeCoの死亡一時金の受取人・手続き・税金をわかりやすく解説 2025.10.24 企業型DC・iDeCoの死亡一時金の受取人・手続き・税金をわかりやすく解説 企業型確定拠出年金(企業型DC)や個人型確定拠出年金(iDeCo)は、老後資金を準備するための制度ですが、加入者が万が一亡くなった場合、積み立てた資産は遺族が死亡一時金として受け取れます。 この制度の資産は掛け捨てにはなりません。 本記事では、この死亡一時金を受け取る際の受取人の順位、具体的な手続きの流れ、そして課される税金について、企業型・個人型を問わず共通する点を中心に詳しく解説します。 目次1. 従業員とその家族を守る! 企業型DC・iDeCoの資産は死亡時に確実に遺族へ2. 死亡一時金の受取人には優先順位が適用! 確実な承継のための準備【受取人指定の重要性】死亡一時金は法定相続人とは別の優先順位企業型DCだからこそ推奨! トラブルを避けるための生前指定3. 企業型DCの安心設計! 遺族を迷わせない死亡一時金の手続きフローStep1:加入者が利用していた運営管理機関へ連絡するStep2:必要書類を準備して裁定請求書を提出する請求権の時効は5年! 遺族のために企業側も周知を徹底すべき4. 死亡一時金にかかる税金は受け取るタイミングで変わる死亡後3年以内の請求なら「みなし相続財産」として扱われる相続税には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠が適用できる死亡後3年を超えると「一時所得」として所得税・住民税の対象に5. 企業型DC・iDeCoをより活用するために! 加入者本人が生前に準備すべきこと家族に確定拠出年金に加入していることを伝えておく必要に応じて死亡一時金の受取人を指定・変更する6. まとめ 1. 従業員とその家族を守る! 企業型DC・iDeCoの資産は死亡時に確実に遺族へ 確定拠出年金の加入者が亡くなった場合、それまでに積み立てた年金資産は遺族が死亡一時金として一括で受け取ることが可能です。 これは、60歳未満で老齢給付金の受給前に死亡した場合でも同様で、運用期間の途中で資産が失われることはありません。 年金の受け取りを開始した後に亡くなった場合も、未受給分があれば遺族が請求できます。 コンサルタント石黒このように、確定拠出年金の資産は加入者が死亡した場合でも確実に遺族に承継される仕組みになっています。 2. 死亡一時金の受取人には優先順位が適用! 確実な承継のための準備 確定拠出年金の死亡一時金を受け取る人には、法律で定められた優先順位が存在します。 これは民法の法定相続人とは異なる場合があるため、注意が必要です。 加入者が生前に受取人を指定していない場合は、この法律上の順位に基づいて一時金が支払われます。 誰に資産を遺したいかという加入者本人の意思を確実に反映させるためには、あらかじめ受取人を指定しておくことがトラブル回避につながります。 【受取人指定の重要性】死亡一時金は法定相続人とは別の優先順位 確定拠出年金法では、死亡一時金の受取人の優先順位が定められています。 最も優先順位が高いのは戸籍上の配偶者です。 次に、加入者の収入で生計を維持していた子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順となります。 ここまでで該当者がいない場合は、残りの生計維持関係になかった子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹が受取人となります。 この順位は民法の法定相続順位とは異なり、例えば子がいる場合でも戸籍上の配偶者が最優先されます。ただし、事実婚のパートナーは、生前に受取人として指定されていない限り、この優先順位の配偶者としては扱われません。 生前に受取人の指定がない場合は、この順位に従って請求手続きが進められるため、意図しない人物に資産が渡る可能性も考慮しておく必要があります。 企業型DCだからこそ推奨! トラブルを避けるための生前指定 法律で受取人の順位が定められてはいるものの、相続トラブルを未然に防ぎ、特定の人物へ確実に資産を承継させたい場合は、生前に受取人を指定しておくことが推奨されます。 受取人をあらかじめ指定しておけば、法定の優先順位に関わらず、指定された人が死亡一時金を受け取ることが可能です。 例えば、特に世話になった子や内縁のパートナーなど、特定の人物に遺したいという明確な意思がある場合に有効な手段です。 また、受取人が指定されていれば、遺族は請求手続きをよりスムーズに進めることができます。 コンサルタント石黒指定がない場合は、請求者が最も優先順位の高い遺族であることを証明するために多くの書類が必要になることがあります。 3. 企業型DCの安心設計! 遺族を迷わせない死亡一時金の手続きフロー 加入者が亡くなった後、遺族が死亡一時金を受け取るための手続きは、定められた手順に沿って進める必要があります。 まず、加入者が利用していた運営管理機関へ連絡することから始まり、必要書類を揃えて請求を行います。この請求には時効があるため、遺族が手続きで迷わないよう、全体の流れを把握しておくことが重要です。 ここでは、具体的な手続きのフローをステップごとに解説します。 Step1:加入者が利用していた運営管理機関へ連絡する 遺族が最初に行うべきことは、加入者が利用していた運営管理機関(銀行、証券会社、保険会社など)に連絡し、加入者が死亡した事実を伝えることです。 どの金融機関を利用していたか不明な場合は、企業型DCであれば勤務先の担当部署に、iDeCoであれば国民年金基金連合会に問い合わせることで確認できます。 連絡を受けた運営管理機関は、死亡一時金の請求に必要な書類(裁定請求書など)を遺族へ送付します。 この手続きにおいて、特別な手数料が発生することは基本的にありませんが、請求が完了するまでの期間、口座管理手数料などが資産から差し引かれる場合があります。 Step2:必要書類を準備して裁定請求書を提出する 運営管理機関から「死亡一時金裁定請求書」が届いたら、必要事項を記入し、添付書類と共に提出します。 一般的に必要となる書類は、死亡の事実を証明する書類(死亡診断書のコピーなど)、請求者の本人確認書類、加入者と請求者の続柄を証明する戸籍謄本、一時金の振込先となる金融機関の口座情報などです。 生前に受取人が指定されていない場合は、請求者が最も優先順位の高い遺族であることを証明するための書類が追加で求められることもあります。 書類に不備がなければ、請求後おおむね1か月から2か月程度で指定口座に一時金が振り込まれます。 請求権の時効は5年! 遺族のために企業側も周知を徹底すべき 死亡一時金を請求する権利には、加入者の死亡後5年という時効が定められています。 この期間内に請求手続きを行わないと、請求権が消滅してしまうため注意が必要です。 時効を過ぎた場合、積み立てた資産は法務局などに供託され、最終的には遺族の相続財産として扱われることになります。 そうなると、遺産分割協議を経て相続人全員の同意を得るなど、手続きが非常に煩雑化する可能性があります。 コンサルタント石黒企業型DCの場合、事業主は従業員に対して、万が一の際の手続きについて家族にも共有しておくよう促すなど、制度に関する定期的な情報提供を行い、遺族が困らないよう周知を徹底することが求められます。 4. 死亡一時金にかかる税金は受け取るタイミングで変わる 遺族が受け取る死亡一時金は非課税ではなく、税金の課税対象となります。 ただし、どの税金が課されるかは、加入者が亡くなってから遺族が一時金を受け取るまでの期間によって異なります。 具体的には、死亡後3年以内に受け取るか、3年を超えてから受け取るかで、相続税の対象になるか、所得税の対象になるかが変わります。 この違いは税負担額に大きく影響するため、仕組みを正しく理解しておくことが大切です。 死亡後3年以内の請求なら「みなし相続財産」として扱われる 加入者が死亡してから3年以内に遺族が死亡一時金を受け取った場合、その資産は税法上「みなし相続財産」として扱われ、相続税の課税対象となります。 みなし相続財産とは、民法上の相続財産ではないものの、被相続人の死亡を原因として遺族が受け取るため、実質的に相続で得た財産と同等とみなされるものです。 確定拠出年金の死亡一時金は、税制上「死亡退職金」と同じ扱いを受けます。 そのため、速やかに手続きを進めることが、死亡退職金の非課税枠の適用を受け、結果として税負担の軽減につながる可能性があります。 相続税には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠が適用できる 死亡一時金が「みなし相続財産」として扱われる場合、死亡退職金の非課税枠が適用されます。 この非課税枠の金額は「500万円×法定相続人の数」という計算式で算出可能です。 例えば、法定相続人が配偶者と子2人の合計3人いる場合、500万円に3を乗じた1,500万円までが非課税となります。 この非課税枠は、確定拠出年金の死亡一時金だけでなく、会社から支給される死亡退職金などすべてを合算した金額に対して適用されます。 非課税枠を超えた部分の金額が、他の預貯金や不動産といった本来の相続財産と合計され、相続税の計算対象となります。 死亡後3年を超えると「一時所得」として所得税・住民税の対象に 加入者の死亡から3年が経過した後に死亡一時金を受け取ると、その資産は相続税の対象ではなく、受け取った遺族の一時所得として扱われます。 一時所得には所得税および住民税が課されます。 この場合、死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)は適用できません。 課税対象となる一時所得の金額は、収入金額(死亡一時金)から収入を得るために支出した金額を差し引き、さらに特別控除額50万円を差し引いた金額を算出し、その2分の1の金額が総所得金額に算入され、他の給与所得などと合算され、総合課税の対象となります。 コンサルタント石黒一般的には相続税として扱われるよりも税金の負担が大きくなる傾向にあります。 5. 企業型DC・iDeCoをより活用するために! 加入者本人が生前に準備すべきこと 万が一の事態が発生した際に、遺された家族が困らないようにするためには、加入者本人が受給前に生前の準備をしておくことが極めて重要です。 複雑な手続きや相続トラブルは、少しの準備で回避できる可能性があります。 家族の負担を軽減し、築き上げた資産を円滑に承継させるために、今からできることを確認しておきましょう。 家族に確定拠出年金に加入していることを伝えておく 最も基本的かつ重要な準備は、自身が企業型DCやiDeCoに加入している事実を家族に明確に伝えておくことです。 そもそも遺族が制度への加入を知らなければ、死亡一時金を請求するという発想に至らず、手続きを開始することすらできません。 どの運営管理機関(金融機関)を利用しているのかを伝え、加入者サイトのIDやパスワード、コールセンターの連絡先などが記載された書類や、定期的に送られてくる残高通知書などの保管場所を家族と共有しておくことが望ましいです。 これにより、いざという時に遺族がスムーズに問い合わせを行い、手続きを進めることができます。 必要に応じて死亡一時金の受取人を指定・変更する 法定の優先順位とは異なる特定の人物に資産を遺したい場合や、相続に関する将来的なトラブルを避けたいと考える場合には、生前に死亡一時金の受取人を指定または変更しておくことが非常に有効です。 受取人の指定手続きは、加入している運営管理機関に連絡し、所定の書類を取り寄せて提出することで行えます。 受取人として指定できるのは、原則として配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹です。 コンサルタント石黒結婚や離婚、子の独立といったライフステージの変化があった際には、指定した受取人が現状に適しているかを見直し、必要であれば変更手続きを行うことも大切です。 6. まとめ 企業型DCやiDeCoの年金資産は、加入者が死亡した場合でも失われることはなく、遺族が死亡一時金として受け取ることが可能です。 この死亡一時金の受取人には法律で定められた優先順位がありますが、加入者が生前に受取人を指定することで、自身の意向を反映した資産承継ができます。 請求手続きには死亡後5年という時効があり、また、死亡後3年以内に受け取るか否かで税金の種類が相続税か所得税かに分かれるため、早めの手続きが肝心です。 遺族が円滑に資産を受け取れるよう、加入者本人が制度に加入している事実や利用金融機関を家族に伝え、必要に応じて受取人指定をしておくことが重要です。 企業型DC・iDeCoの障害給付金とは?障害年金につ...