企業型DCの拠出限度額が月6.2万円へ|退職金設計はどう変わる?
結論(この記事で分かること) 企業型DCの拠出限度額は、DB等の他制度がない場合で月5.5万円から月6.2万円へ、2026年12月1日から引き上げられる予定です。すでに2026年4月1日には「加入者掛金は事業主掛金を超えられない」というマッチング拠出の制限が撤廃されています。会社は、規約の掛金上限の定め方を確認し、必要に応じた規約変更・マッチング拠出の導入検討・従業員説明を施行前に進めることが求められます。
企業型DC導入支援を専門とする株式会社日本企業型確定拠出年金センター(1,300社以上の導入実績)が解説します。2025年6月に成立した年金制度改正法により、企業型DCは2026年4月と12月の2段階で見直されます。この記事では、何がいつ変わるのかを表で整理したうえで、小規模企業の経営者が施行前に検討すべき事項を、導入支援の現場で実際に寄せられるご相談をもとにお伝えします。
この記事の監修
株式会社日本企業型確定拠出年金センター
執行役員 企業型DC導入支援グループマネージャー
石黒充顕
- DCプランナー2級
- AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)
- 企業年金管理士
- 確定拠出年金ガイド(SBI Benefit Systems認定資格)
- 情報セキュリティマネジメント試験合格
- 知的財産管理技能検定3級
- グーグルデジタルワークショップ修了
- 給与計算実務能力検定2級
日本企業型確定拠出年金センターの立ち上げから事業化に関わり、自身も400社以上の企業に企業型DCを導入している。商工会議所や工事組合をはじめ多数の税理士法人で職員向け及び顧客向けにセミナーを実施している。
自身の出演するYouTube『DCチャンネル』は専門チャンネルでありながら1万人を超える登録者を誇っている。
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NewsPicksやヒロ税理士、マキノヤ先生など動画出演も多数している。

1. この記事の要約
2026年の企業型DC改正は「2026年4月1日施行済みの手続き・マッチング拠出の見直し」と「2026年12月1日施行予定の拠出限度額の引上げ」の2本立てです。
- 2026年4月1日(施行済み):マッチング拠出の「加入者掛金は事業主掛金以下」の制限撤廃、簡易型DCの通常の企業型DCへの統合、自動移換に関する説明時期の前倒し、iDeCo+(中小事業主掛金納付制度)の届出先の一元化
- 2026年12月1日(施行予定):企業型DCの拠出限度額を月5.5万円→月6.2万円へ引上げ、DB等併用時は6.2万円から他制度掛金相当額を控除、iDeCoの限度額見直し・加入可能年齢の引上げ
- 会社の対応:規約で掛金上限を「5.5万円」と金額で定めている場合は規約変更が必要になる可能性があります。あわせてマッチング拠出の導入・見直し、従業員への説明を検討します
2. そもそも、企業型DCの拠出限度額とは?
企業型DCの拠出限度額とは、確定拠出年金法令で定められた、1人あたり月に拠出できる掛金(事業主掛金と加入者掛金の合計)の上限額です。限度額の範囲内であれば、事業主掛金は全額損金に算入でき、従業員側でも給与として課税されません。

退職給付の準備手段として、企業型DCはすでに中心的な存在です。厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、退職年金制度がある企業の支払準備形態(複数回答)は企業型DCが50.3%で最も多く、DB(44.3%)を上回っています。限度額の引上げは、こうした企業の退職金設計に直接影響します。
専門用語解説
- 事業主掛金とは、会社が従業員(加入者)ごとに拠出する掛金です。規約で定めた方法(定額・定率など)で決まります。
- マッチング拠出とは、事業主掛金に加えて、従業員本人も規約に定められた範囲内で掛金を拠出できる仕組みです。加入者掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象になります。
- 他制度掛金相当額とは、確定給付企業年金(DB)など企業型DC以外の企業年金を併用している場合に、その制度の掛金を月額換算した額です。2024年12月からは一律2.75万円ではなく、実際の制度ごとの額で控除する仕組みになっています。
- 規約とは、企業型DCの掛金、加入資格、給付などを定めた制度の根拠となる取り決めで、厚生労働大臣(地方厚生局)の承認を受けて実施します。
このセクションのポイント
- 拠出限度額は、事業主掛金と加入者掛金を合計した1人あたりの月額上限
- 退職年金制度がある企業の50.3%が企業型DCで支払準備をしている(令和5年就労条件総合調査)
- DB等を併用する場合は、制度ごとの他制度掛金相当額を控除して限度額を計算する
3. 今回の変更点:何が、どう変わるのか?
結論として、2026年12月1日から企業型DCで拠出できる上限が月7,000円増え、マッチング拠出の上限もそれに合わせて広がる予定です。すでに4月施行分で、マッチング拠出の使い勝手を制約していた要件は撤廃されています。
2026年4月1日施行(施行済み)の変更点は?
| 項目 | 改正前 | 改正後(2026年4月1日〜) |
|---|---|---|
| マッチング拠出の加入者掛金 | 事業主掛金の額を超えられない | この制限を撤廃(限度額の範囲内で拠出可能) |
| 簡易型DC | 通常の企業型DCと別の類型 | 通常の企業型DCに統合 |
| 自動移換に関する説明 | 資格喪失「後」に説明 | 資格喪失「前」(喪失見込み時)に説明 |
| iDeCo+(中小事業主掛金納付制度) | 国民年金基金連合会に加え厚生労働大臣への届出も必要 | 国民年金基金連合会への届出に一元化 |
特に影響が大きいのはマッチング拠出です。これまでは事業主掛金が月5,000円の会社では、従業員も月5,000円までしか上乗せできませんでした。4月以降は、限度額から事業主掛金を差し引いた範囲で、従業員が自分の判断で掛金を増やせます。

2026年12月1日施行予定の変更点は?
| 項目 | 現行(2026年11月まで) | 改正後(2026年12月1日〜予定) |
|---|---|---|
| 企業型DC(DB等なし)の拠出限度額 | 月5.5万円 | 月6.2万円 |
| 企業型DC(DB等併用)の拠出限度額 | 5.5万円−他制度掛金相当額 | 6.2万円−他制度掛金相当額 |
| マッチング拠出の上限 | 5.5万円−事業主掛金 | 6.2万円−事業主掛金 |
| 企業型DC加入者のiDeCo(第2号) | 企業型DCのみ加入の場合、月2.0万円が上限 | 6.2万円から事業主掛金(及び他制度掛金相当額)を控除した額 |
| 第1号被保険者のiDeCo(国民年金基金と合算) | 月6.8万円 | 月7.5万円 |
| iDeCoの加入可能年齢 | 原則65歳未満(国民年金被保険者であること) | 70歳未満まで拡大(一定の要件あり) |
なお厚生労働省の事業主・従業員向けリーフレットでは、企業型DC加入者がiDeCoに加入する要件として「企業型DCのマッチング拠出(加入者掛金拠出)を利用していないこと」が示されています。つまり従業員は、マッチング拠出とiDeCoのどちらで上乗せするかを選ぶことになります。
退職金設計にはどう影響するか?
限度額の引上げは、企業型DCを「退職金の主要な受け皿」として使う設計を後押しします。月6.2万円を40年間拠出した場合、掛金の元本だけで約2,976万円(6.2万円×12か月×40年)となり、就労条件総合調査の定年退職者1人平均退職給付額(全規模・大卒管理事務技術職・勤続35年以上で2,037万円)を上回る水準まで拠出できる枠が用意されることになります(運用結果により受取額は変動します)。

一方で、限度額が上がっても会社が掛金を増やす義務はありません。「上限いっぱいまで出すか」ではなく、「自社の退職金水準・人件費の中で、どの層にいくら拠出するか」を改めて設計する機会と捉えることが大切です。
このセクションのポイント
- マッチング拠出の「事業主掛金以下」の制限は2026年4月1日に撤廃済み
- 2026年12月1日から企業型DCの限度額は月6.2万円に引き上げられる予定(DB等併用時は他制度掛金相当額を控除)
- マッチング拠出を利用する従業員はiDeCoに加入できない点は引き続き説明が必要
- 限度額が上がっても会社に掛金の増額義務はない
4. 経営者が今すぐ対応すべきこと|NDCセンターからのアドバイス
結論として、12月の施行日までに「規約の確認」と「掛金方針の決定」を済ませることが最優先です。厚生労働省のリーフレットでも「企業型DCの上限額を引き上げる際は、規約変更が必要となる場合があります」と案内されています。
優先度別アクションリスト
【優先度A】規約の掛金上限の定め方を確認する(今すぐ) 規約で事業主掛金やマッチング拠出の上限を「55,000円」と金額で定めているか、「法令に定める拠出限度額」のように定めているかで、規約変更の要否が変わります。運営管理機関から届く案内とあわせて、自社規約の該当条文を確認しましょう。規約変更が承認事項か届出事項か、申請期限はいつかは、変更内容によって異なるため運営管理機関へ確認が必要です。

【優先度A】掛金上限規定を見直すかどうかを決める(10〜11月) 役員や一部の職位で上限額まで拠出している会社は、6.2万円への引上げを検討する余地があります。増額する場合は、損金算入の効果とあわせて、人件費全体・他の従業員とのバランス・退職金規程との整合を確認します。
【優先度B】マッチング拠出の導入・見直しを検討する 4月の要件撤廃で、事業主掛金が少額の会社でもマッチング拠出の効果が大きくなりました。導入には規約への定めが必要です。従業員にとっては、加入者掛金が全額所得控除となるメリットがある一方、マッチング拠出を選ぶとiDeCoには加入できない点を説明する必要があります。

【優先度B】従業員への説明資料を準備する 限度額の変更点、iDeCoとの関係、DB等を併用している会社は他制度掛金相当額の考え方を周知します。4月から求められている、退職予定者への自動移換に関する事前説明の運用ができているかもあわせて点検しましょう。
【優先度C】退職金規程・就業規則との整合を確認する 企業型DCを退職金制度の一部として位置付けている場合、掛金の変更は退職金規程の改定を伴うことがあります。労務面の手続きは、提携する社会保険労務士法人とうかいと連携して対応します。
よくある誤解・落とし穴
- 「12月になれば自動的に6.2万円まで出せる」:規約で上限を金額で定めている場合、規約変更をしない限り従来の上限のままです。
- 「マッチング拠出は事業主掛金と同額まで」:この制限は2026年4月1日に撤廃済みです。古い説明資料を使い続けていないか確認しましょう。
- 「選択制DCの上限も上げれば会社も従業員も得」:選択制DCで給与から掛金へ振り替える額を増やすと、標準報酬月額が下がり、将来の厚生年金や傷病手当金等の給付に影響し得ます。上限を引き上げる場合は、この留意点を従業員に丁寧に説明することが前提です。
- 「iDeCoとマッチング拠出は両方使える」:企業型DC加入者がiDeCoに加入するには、マッチング拠出を利用していないことが要件です。
専門家に相談するとできること
企業型DCの専門会社に相談すると、自社規約の該当箇所の確認、上限引上げ時の掛金シミュレーション、マッチング拠出導入の規約変更手続き、従業員向け説明会の実施までを一貫して進められます。退職一時金とDC一時金の受取時期の設計(いわゆる10年ルール)も、制度変更と同時に見直しておくと効果的です。
このセクションのポイント
- 規約で上限を金額で定めている場合は、規約変更をしない限り6.2万円にならない
- 掛金方針(据え置き・一部引上げ)を施行前に決め、運営管理機関に手続きを確認する
- マッチング拠出の導入時は、iDeCoと併用できない点を必ず説明する
- 選択制DCの枠を広げる場合は、標準報酬低下による給付への影響を留意点として伝える
5. 導入事例・よくある相談パターン
導入事例
※導入事例は実在事例に差し替えてください(業種・規模・課題・効果)
よくある相談とNDCセンターの回答
相談1:「社長だけ上限まで拠出している。12月から6.2万円に上げたい」 役員を含め規約で定めた方法により掛金を決める必要があるため、まず規約の掛金の定め方を確認します。特定の役員だけ掛金を引き上げる設計は、加入者間の掛金の定め方として認められる範囲かを事前に確認する必要があります。規約変更の手続きと施行日に間に合うスケジュールを運営管理機関と調整します。

相談2:「事業主掛金は月5,000円。マッチング拠出を入れる意味はある?」 4月の要件撤廃で意味は大きくなりました。従来は従業員も月5,000円までしか上乗せできませんでしたが、現在は限度額から事業主掛金を差し引いた範囲で拠出できます。会社の追加負担なしに従業員の資産形成の選択肢を広げられる一方、iDeCoを使っている従業員には選択の説明が必要です。
相談3:「DBと企業型DCを併用している。何が変わる?」 限度額が「6.2万円−他制度掛金相当額」に変わるため、DC側の拠出枠が7,000円広がります。他制度掛金相当額は制度ごとに異なるため、自社のDBの額を確認したうえで、DC掛金の見直し余地を試算します。従業員への周知も求められます。
このセクションのポイント
- 役員の掛金引上げは、規約で定めた掛金の決め方の範囲で検討する
- 事業主掛金が少額の会社ほど、4月のマッチング拠出要件撤廃の恩恵が大きい
- DB併用企業はDC側の枠が広がるため、他制度掛金相当額を確認して試算する
6. 無料相談・セミナーのご案内|株式会社日本企業型確定拠出年金センター
株式会社日本企業型確定拠出年金センターは、SBIベネフィット・システムズと共同で設計した「SBIぷらす年金」を軸に、中小企業への企業型DC導入を専門に支援しています。
- 1,300社以上の導入実績(小規模事業者を中心)
- 全国オンライン対応(来社不要で導入手続き完結)
- 導入後の継続教育・加入者説明会を一貫支援

「自社に企業型DCが合うか知りたい」「費用を試算してほしい」「すでに導入済みだが2026年改正への対応を確認したい」などのご相談を無料で承っています。まずはお問い合わせフォームよりご連絡ください。
2026年12月の拠出限度額引上げに向けて、経営者・人事担当者向けに改正内容と規約見直しのポイントを解説するセミナーも開催しています。制度の全体像をまとめて把握したい方は、ぜひセミナーにご参加ください。
7. よくある質問(FAQ)
Q1. 企業型DCの拠出限度額はいつから月6.2万円になりますか? A. 2026年12月1日から引き上げられる予定です。DB等の他制度がない場合の限度額が月5.5万円から月6.2万円になり、DB等併用時は6.2万円から他制度掛金相当額を控除した額になります。
Q2. マッチング拠出の要件撤廃はすでに施行されていますか? A. はい、2026年4月1日に施行済みです。加入者掛金が事業主掛金を超えられないという制限が撤廃され、限度額の範囲内で従業員が拠出できるようになりました。
Q3. 限度額が上がったら規約変更は必要ですか? A. 規約の定め方によっては必要です。掛金上限を「55,000円」など金額で定めている場合は、引き上げるには規約変更が必要になると考えられます。具体的な手続きは運営管理機関に確認してください。

Q4. 限度額が上がったら、会社は掛金を増やさなければいけませんか? A. いいえ、増やす義務はありません。限度額は拠出できる上限であり、掛金水準は自社の退職金方針と人件費のバランスで決めます。
Q5. 企業型DCの加入者はiDeCoにいくらまで拠出できるようになりますか? A. 2026年12月からは、6.2万円から事業主掛金(DB等併用時は他制度掛金相当額も)を控除した額の範囲になる予定です。ただしマッチング拠出を利用している場合はiDeCoに加入できません。
Q6. マッチング拠出とiDeCoは併用できますか? A. いいえ、併用できません。企業型DC加入者がiDeCoに加入するには、マッチング拠出を利用していないことが要件です。従業員はどちらで上乗せするかを選びます。
Q7. 簡易型DCを実施している会社は何か手続きが必要ですか? A. 2026年4月1日に簡易型DCは通常の企業型DCに統合されました。既存の規約の取扱いや必要な手続きは、運営管理機関に確認することをおすすめします。

Q8. 従業員への説明は何をすればよいですか? A. 限度額の変更点、マッチング拠出とiDeCoの関係、DB等併用時の他制度掛金相当額を説明します。あわせて退職予定者への自動移換に関する事前説明の運用も点検しましょう。
まとめ
企業型DCの拠出限度額は2026年12月1日から月6.2万円へ引き上げられる予定で、マッチング拠出の制限は2026年4月1日にすでに撤廃されています。会社は、規約の掛金上限の定め方を確認し、掛金方針の決定・マッチング拠出の検討・従業員説明を施行前に進めることが重要です。改正対応の全体像を把握したい方は、株式会社日本企業型確定拠出年金センターのセミナーまたは無料相談をご利用ください。

執筆・監修:株式会社日本企業型確定拠出年金センター(企業型DC導入支援専門/1,300社以上の導入実績)
出典・参考資料
- 厚生労働省「2025年の制度改正」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2025kaisei.html
- 厚生労働省「企業型DCを実施する事業主・従業員の皆さまへ」(2026年12月拠出限度額引上げリーフレット) https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001739467.pdf
- 厚生労働省「令和7年度税制改正における企業年金・個人年金制度の見直しについて」 https://www.mhlw.go.jp/content/10600000/001365075.pdf
- 厚生労働省「2020年の制度改正」(2024年12月の他制度掛金相当額の見直し等) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2020kaisei.html
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」退職給付制度 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/23/dl/gaiyou03.pdf
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」退職給付額 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/23/dl/gaiyou04.pdf




