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コラム

退職一時金から企業型DCへ移行する方法|不利益変更にならない進め方と過去分の移換

退職一時金から企業型DCへ移行する方法|不利益変更にならない進め方と過去分の移換

結論(この記事で分かること) 今ある退職一時金制度は、企業型DCへ全部・一部・将来分のみのいずれかの形で移行できます。過去分を資産として移す場合は、移行年度から規約で定める年度(移行年度の翌年度から起算して3〜7年度以内)まで各年度に均等分割して移換する仕組みです(確定拠出年金法第54条・同法施行令第22条)。移行が労働条件の不利益変更に当たらないよう、制度設計の段階から従業員への説明と同意取得を計画することが重要です。

企業型DC導入支援を専門とする株式会社日本企業型確定拠出年金センター(1,300社以上の導入実績)が解説します。退職金を社内で積み立てる「退職一時金制度」は、将来の支払額が読みにくく、財源確保が経営の負担になりがちです。この記事では、退職一時金を企業型DCに切り替える3つのパターン、不利益変更を避ける進め方、過去分の資産移換、打切支給をした場合の税務までを一次資料に基づいて整理します。労務面の詳細は、提携する社会保険労務士法人とうかいと連携して対応する前提でお読みください。

株式会社日本企業型確定拠出年金センター
執行役員  企業型DC導入支援グループマネージャー
石黒充顕

  • DCプランナー2級
  • AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)
  • 企業年金管理士
  • 確定拠出年金ガイド(SBI Benefit Systems認定資格)
  • 情報セキュリティマネジメント試験合格
  • 知的財産管理技能検定3級
  • グーグルデジタルワークショップ修了
  • 給与計算実務能力検定2級

▶DCチャンネルはこちら
https://www.youtube.com/@ndc-center

NewsPicksやヒロ税理士、マキノヤ先生など動画出演も多数している。

1. この記事の要約

退職一時金から企業型DCへの移行は、「どこまで移すか(範囲)」「過去分をどう扱うか(移換か打切支給か据え置きか)」「従業員の同意をどう得るか(手続き)」の3点で設計が決まります。

  • 移行パターンは「全部移行」「一部移行」「将来分のみ移行」の3つ
  • 過去分をDCに移す場合は、法第54条・施行令第22条に基づき分割して移換する
  • 就業規則の変更で労働条件を不利益に変える場合は、労働契約法第9条・第10条の枠組みで合理性が問われる
  • 過去分を一時金で清算(打切支給)する場合、要件を満たせば退職所得、満たさなければ給与所得として課税される
  • 2026年12月から、他の企業年金がない場合の拠出限度額が月5.5万円から月6.2万円に引き上げられる予定で、将来分の設計の余地が広がる

2. そもそも、退職一時金から企業型DCへの「移行」とは?

退職一時金から企業型DCへの移行とは、会社が退職時に一括で支払う退職金制度の全部または一部を、会社が毎月掛金を拠出して従業員が運用する企業型DCに置き換えることです。退職給付の「金額を約束する制度」から「掛金を約束する制度」への転換といえます。

厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、退職給付制度がある企業は74.9%で、そのうち一時金のみの企業が69.0%を占めます。退職一時金の支払準備形態は「社内準備」が56.5%(複数回答)と最多で、社内で財源を用意する会社がなお多い状況です。

専門用語解説

  • 退職一時金制度とは、 退職金規程に基づき、退職時に会社が従業員へ一時金を直接支払う制度です。
  • 資産移換とは、 既存制度で積み上がった退職金相当額を、企業型DCの個人別管理資産として移すことです(確定拠出年金法第54条)。
  • 打切支給とは、 制度改定の際に、改定前の勤続期間に対応する退職金を、在職中に精算して支払うことです。
  • 不利益変更とは、 就業規則の変更によって、賃金・退職金などの労働条件を従業員にとって不利に変えることです(労働契約法第9条・第10条)。
  • 通算加入者等期間とは、 老齢給付金の受給開始時期の判定に使う加入期間のことで、資産移換を受けた場合は移換元制度での勤務期間の一部を算入します(確定拠出年金法第54条第2項)。

このセクションのポイント

  • 移行=「給付額を約束する制度」から「掛金を約束する制度」への切替え
  • 退職給付制度がある企業の69.0%が一時金のみ(令和5年就労条件総合調査)
  • 資産移換・打切支給・不利益変更の3つの用語を押さえておく

3. 制度の詳細:移行の3パターンと、不利益変更・資産移換・税務のルール

移行方法は3パターンに分かれ、どれを選ぶかで「過去分の扱い」と「不利益変更の論点の大きさ」が変わります。

移行の3パターンはどう違うのか?

パターン内容過去分の扱い主な留意点
全部移行退職一時金制度を廃止し、全額を企業型DCに置き換える資産移換または打切支給60歳まで受け取れない部分が増える。移換は分割で行う
一部移行退職一時金の一定割合(例:半分)をDCに置き換え、残りは一時金として存続移行割合分を移換、残りは据え置き規程が2本立てになるため、計算方法の整合が必要
将来分のみ移行移行日までの退職金は現行規程で確定・据え置き、移行日以降の積立分をDCにする過去分は退職時に一時金で支給過去分の支払財源は引き続き社内で確保する必要がある

小規模企業では、過去分の支払財源を一度に動かさずに済む「将来分のみ移行」や「一部移行」から検討するケースが多く見られます。一方、社内の積立を整理して将来の支払不安をなくしたい場合は「全部移行」が選択肢になります。

不利益変更にあたるかは、どう判断されるのか?

使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更して労働条件を不利益に変更することはできません(労働契約法第9条)。ただし、変更後の就業規則を周知し、変更が「労働者の受ける不利益の程度」「労働条件の変更の必要性」「変更後の就業規則の内容の相当性」「労働組合等との交渉の状況」「その他の就業規則の変更に係る事情」に照らして合理的なときは、変更後の内容が労働条件になります(同法第10条)。

退職一時金からDCへの移行で「不利益」と評価されやすいのは、主に次の点です。

  • 給付水準の低下:移行後の掛金を、現行制度の退職金額より低い水準で設計した場合
  • 運用リスクの移転:一時金は金額が規程で決まるのに対し、DCは運用結果で受取額が変わる
  • 受取時期の制約:DCの老齢給付は原則60歳以降であり、移換した過去分も60歳前には受け取れない
  • 勤続3年未満の返還:規約で事業主返還を定めると、短期退職者の受取額が減る(法第3条第3項第10号)

このため、実務では「移行前の退職金水準をどの前提で換算し、掛金をいくらに設定するか」を数字で示し、移行前後の比較資料を作ることが出発点になります。

従業員の同意はどう取ればよいか?

同意は「過半数代表者等の同意」と「個々の従業員の同意」の2層で考えます。企業型DCの規約は、過半数労働組合、ない場合は過半数代表者の同意を得て作成する必要があります(確定拠出年金法第3条第1項)。これはDCを実施するための法定要件です。

一方、不利益変更の有効性という観点では、労働契約法第9条のとおり個々の労働者との合意が原則です。そのため実務では、次の手順で進めるのが一般的です。

  1. 移行前後の比較資料(従業員ごとの過去分の額、将来分の掛金、想定される受取額の幅)を作る
  2. 全従業員向けの説明会を開き、質疑応答の記録を残す
  3. 個別面談で、本人の過去分の金額と移行方法を説明する
  4. 内容を理解したうえでの個別同意書を取得する
  5. 過半数代表者の同意(DC規約)と意見書(就業規則)を取得し、就業規則変更を届け出・周知する

個別同意を得た場合でも、説明が不十分だと同意の有効性が争われるおそれがあります。説明資料と記録の残し方は、社会保険労務士法人とうかいと連携して設計します。

過去分はどのように企業型DCへ移換するのか?

退職手当制度に係る資産は、政令で定めるところにより、企業型DCへ全部または一部を移換できます(確定拠出年金法第54条第1項)。移換のルールは同法施行令第22条第1項第5号に定められており、ポイントは次のとおりです。

  • 移換できる額:移行日の前日に全員が退職したとみなした退職給与額の合計から、移行日に全員が退職したとみなした退職給与額の合計を差し引いた額など、規程改正で減少した部分が基準になります(計算式の詳細は施行令第22条第1項第5号で確認してください)
  • 分割移換:移行日の属する年度(移行年度)から、移行年度の翌年度から起算して3年度以上7年度以内で規約に定める年度までの各年度に、均等に分割して移換します。移行年度を含めると4〜8年度にわたる計算です
  • 途中退職時:分割期間中に加入者が資格を喪失した場合は、未移換分を一括して移換します
  • 加入期間の通算:移換を受けた場合、移換元制度での勤務期間(60歳到達前の期間に限る)のうち政令で定めるものが、通算加入者等期間に算入されます(法第54条第2項)

「3〜8年で分割」などと略して紹介されることもありますが、条文上は上記のとおり「移行年度+翌年度起算3〜7年度」です。分割期間中は会社が各年度の移換額を資金として用意する必要があるため、資金繰り計画とあわせて年数を決めます。中退共からの移換は合併等の場合に限られるなど別の制約があるため、該当する場合は個別に確認が必要です。

過去分を打切支給した場合の税務はどうなるか?

打切支給した過去分は、合理的な理由による退職金制度の実質的な改変に伴う精算であれば、退職所得として扱われます。国税庁タックスアンサーNo.2725は、退職所得となるものとして「中小企業退職金共済制度や確定拠出年金制度へ移行するなどの相当の理由により従来の退職給与規程を改正した場合に、使用人に対し制定前または改正前の勤続期間に係る退職手当等として支払われるもの」を挙げ、「合理的な理由による退職金制度の実質的な改変により精算の必要から支払われるものに限られます」としています(所得税基本通達30-2)。

国税庁の質疑応答事例では、判断が分かれる場面が具体的に示されています。

  • 従業員が「移換」か「一時金」かを選べる場合:全額移換を選んだ人は課税関係が生じませんが、一時金を選んだ部分は給与所得になるとされています(質疑応答事例「確定拠出年金制度への移行による打切支給の退職手当等として支払われる給与(使用人が資産移換又は一時金の支給を選択することができる場合)」)
  • 規約で加入者とされない従業員への打切支給:一定年齢以上の従業員を加入者としない規約で、その従業員に移行前の勤続期間に係る退職金相当額を一律に支払う事例では、退職所得として扱って差し支えないとされています(同「確定拠出年金制度の規約により加入者とされない使用人を対象に打切支給の退職手当等として支払われる給与」)
  • 基本となる事例:「確定拠出年金制度への移行による打切支給の退職手当等として支払われる給与」の照会要旨・回答要旨の詳細は、国税庁ページで個別に確認してください(要確認)

つまり、「本人の選択で現金化できる」設計にすると、一時金部分は退職所得にならない点に注意が必要です。打切支給を検討する場合は、税理士とも確認しながら進めます。

このセクションのポイント

  • 移行は「全部・一部・将来分のみ」の3パターン
  • 不利益変更は労働契約法第10条の5要素で合理性が判断される
  • 過去分の移換は移行年度から翌年度起算3〜7年度以内まで均等分割(施行令第22条)
  • 打切支給は合理的理由による精算なら退職所得、本人選択で一時金を選ばせると給与所得

4. 経営者が今すぐ対応すべきこと|NDCセンターからのアドバイス

最初にやるべきことは、「今の退職金規程で、今日全員が退職したらいくらになるか」を把握することです。この数字がないと、移行パターンも掛金も決められません。

優先度別アクションリスト

  • 優先度【高】:現行の退職金規程と全従業員の要支給額(自己都合・会社都合)を一覧にする
  • 優先度【高】:3パターンのうち、過去分の財源と資金繰りに合う方法を選ぶ
  • 優先度【中】:将来分の掛金水準を決める(現行の上限は月5.5万円、2026年12月から月6.2万円の予定)
  • 優先度【中】:移行前後の比較資料と説明会・個別面談の計画を作る
  • 優先度【低】:分割移換の年数と各年度の資金計画、打切支給の有無を税理士と確認する

よくある誤解・落とし穴

  • 「過去分は一括でDCに移せる」:退職手当制度からの移換は分割が原則で、一括になるのは資格喪失時などに限られます
  • 「過半数代表者が同意すれば全員に適用できる」:DC規約の同意と、不利益変更の有効性は別問題です。個別同意の取得も検討します
  • 「一時金か移換かを選ばせれば親切」:一時金を選んだ部分は給与所得として課税される事例が示されています
  • 「移換すれば従業員はすぐ引き出せる」:DCの老齢給付は原則60歳以降です。移換した過去分も同様です

専門家に相談するとできること

NDCセンターでは、現行規程の読み解き、移行パターン別の掛金試算、規約案の作成、地方厚生局への承認申請、加入者説明会までを一貫して支援します。就業規則・退職金規程の改定、不利益変更の検討、個別同意書の整備は、提携する社会保険労務士法人とうかいと連携して対応します。

このセクションのポイント

  • まずは現行規程での要支給額を一覧化する
  • DC規約の同意と個別同意は分けて考える
  • 移換は分割が原則、一時金選択は給与所得になり得る

5. 導入事例・よくある相談パターン

導入事例

※導入事例は実在事例に差し替えてください(業種・規模・課題・効果)

よくある相談とNDCセンターの回答

相談1:「社内積立の退職金が膨らみ、支払いの見通しが立たない」 将来分のみ移行を基本に、移行日以降はDC掛金に切り替える案をまずご提案します。過去分は現行規程で確定させるため、将来の支払額の上限が見えるようになります。

相談2:「古くからの従業員の不利益にならないか心配」 移行前後の比較資料を作り、勤続の長い従業員ほど過去分の据え置き・移換の方法を丁寧に説明します。必要に応じて経過措置の設計も検討し、とうかいと連携して同意手続きを整えます。

相談3:「過去分を一気に精算して制度をすっきりさせたい」 打切支給の税務要件と、分割移換の資金計画を並べて比較します。本人に選択させる設計は課税上の不利が生じ得るため、原則として避ける方向でご説明しています。

このセクションのポイント

  • 小規模企業では「将来分のみ移行」から検討するケースが多い
  • 長期勤続者への個別説明と比較資料が同意の鍵になる
  • 打切支給は税務要件と資金計画をセットで検討する

6. 無料相談のご案内|株式会社日本企業型確定拠出年金センター

株式会社日本企業型確定拠出年金センターは、SBIベネフィット・システムズと共同で設計した「SBIぷらす年金」を軸に、中小企業への企業型DC導入を専門に支援しています。

  • 1,300社以上の導入実績(小規模事業者を中心)
  • 全国オンライン対応(来社不要で導入手続き完結)
  • 導入後の継続教育・加入者説明会を一貫支援

「自社に企業型DCが合うか知りたい」「費用を試算してほしい」「すでに導入済みだが2026年改正への対応を確認したい」などのご相談を無料で承っています。まずはお問い合わせフォームよりご連絡ください。

退職一時金からの移行では、退職金規程の改定や不利益変更の検討が欠かせません。NDCセンターは提携する社会保険労務士法人とうかいと連携し、制度設計から規程改定・従業員同意まで一体でご相談いただけます。

7. よくある質問(FAQ)

Q1. 今ある退職金制度を企業型DCに変えられますか? はい、変えられます。全部移行・一部移行・将来分のみ移行の3つの方法があり、過去分は資産移換、打切支給、据え置きのいずれかで扱います。

Q2. 過去分の退職金は一括でDCに移せますか? いいえ、原則として分割です。移行年度から、翌年度起算3〜7年度以内で規約に定める年度まで、各年度に均等に分割して移換します(施行令第22条)。

Q3. 退職一時金をDCに変えると不利益変更になりますか? 内容によっては不利益変更に当たります。給付水準の低下や受取時期の制約がある場合、労働契約法第10条の要素に照らした合理性や個別同意が問題になります。

Q4. 過半数代表者の同意があれば、全員の同意は不要ですか? いいえ、別に考える必要があります。過半数代表者等の同意はDC規約作成の要件で、不利益変更の有効性は個々の従業員の合意や変更の合理性で判断されます。

Q5. 打切支給した退職金は退職所得になりますか? はい、DC移行など合理的な理由による制度改変に伴う精算であれば退職所得になります。ただし従業員が一時金を選択できる設計では給与所得とされる事例があります。

Q6. 移換した過去分はいつ受け取れますか? 原則60歳以降です。企業型DCの老齢給付は60歳から受給でき、移換した分も同じ扱いになります。受給開始時期は通算加入者等期間によって異なります。

Q7. 中退共に加入している場合も企業型DCへ移換できますか? 移換できる場面は限られます。中退共から企業型DCへの移換は合併等の場合に限られるなどの制約があるため、個別に確認が必要です。

Q8. 移行後の掛金はいくらまで設定できますか? 他の企業年金がない場合、現在は月5.5万円が上限です。2026年12月から月6.2万円に引き上げられる予定です。

まとめ

退職一時金は、全部・一部・将来分のみの3つの方法で企業型DCに移行でき、過去分は分割移換・打切支給・据え置きから選びます。不利益変更を避けるには、移行前後の比較資料を作って丁寧に説明し、DC規約の同意と個別同意を分けて整えることが欠かせません。移行を検討し始めたら、社会保険労務士法人とうかいと連携したNDCセンターの無料相談をご利用ください。

出典・参考資料

監修:株式会社日本企業型確定拠出年金センター(企業型DC導入支援の専門会社・1,300社以上の導入実績)

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