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退職所得控除とは?役員退職金の手取り最大化と企業型DC併用の注意点

退職所得控除とは?役員退職金の手取り最大化と企業型DC併用の注意点

経営者にとって、リタイアメント時の「出口戦略」は、現役時代の報酬設計と同じくらい重要です。特に、長年の経営の対価である「役員退職金」は、額が大きくなるからこそ、税務知識の有無が手取り額に大きな差を生むことがあります。

本記事では、退職金にかかる税金を劇的に圧縮する「退職所得控除」の仕組みと計算方法、そして近年導入が進む「企業型確定拠出年金(企業型DC)」と併用する際の重要な注意点について解説します。

目次

1. 退職所得控除とは?経営者と従業員の「手取り」を最大化する税制優遇

退職金(退職手当等)は、長年の勤労に対する報償的性格や、退職後の生活保障という側面を持つため、他の所得(給与所得や事業所得など)に比べて極めて優遇された税制が適用されています。

退職金は「分離課税」と「2分の1課税」により税負担が圧倒的に軽い

通常、日本の所得税は所得が高いほど税率が上がる「超過累進税率」が適用され、給与など他の所得と合算して計算されます(総合課税)。

しかし、退職金は他の所得と切り離して計算する「分離課税」が適用されます。これにより、退職金を受け取った年だけ所得が跳ね上がり、高い税率がかけられる事態を防げます。

さらに、退職所得控除額を差し引いた残額に「2分の1」を乗じてから税率をかける仕組み(2分の1課税)となっており、実質的な税負担は給与所得の約半分以下に抑えられます。

控除額は「勤続年数」で決まるため、長期の制度設計が重要になる

退職所得控除の金額は、その会社での「勤続年数」によって決まります。勤続年数が長ければ長いほど控除額が積み上がり、非課税で受け取れる枠が大きくなります。

そのため、経営者や従業員の入社から退職までの期間を見据えた、長期的な制度設計が重要になります。

経営者自身の「役員退職金」においても最大の節税効果を発揮する

多くのオーナー経営者にとって、役員退職金は「会社から個人への資産移転」の最終仕上げです。

役員報酬として高額を受け取ると最大55%(所得税+住民税)の税負担が発生しますが、退職金として受け取ることで、この税率を大幅に引き下げることが可能です。

退職所得控除を最大限活用することは、資産防衛の要といえます。

2. 【早見表】退職所得控除額の計算式と勤続年数ごとの控除枠

退職所得控除額は、勤続年数が20年を超えるかどうかで計算式が変わります。勤続年数に1年未満の端数がある場合は、切り上げて1年として計算します(例:10年1ヶ月→11年)。

勤続年数20年以下の計算式(40万円×勤続年数)

勤続年数が20年までの期間は、1年につき40万円が控除されます。 なお、計算結果が80万円に満たない場合は、一律80万円となります。

退職所得控除額 = 40万円 × 勤続年数

勤続年数20年超の計算式(800万円+70万円×超えた年数)

勤続年数が20年を超えると、21年目以降は1年につき70万円が加算されます。長く勤めるほど税制優遇が加速する仕組みです。

・退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)

【早見表】勤続年数別の控除額リストと役員任期との兼ね合い

役員の任期や従業員の勤続年数に応じた控除額の目安は以下の通りです。

勤続年数 退職所得控除額
5年 200万円
10年 400万円
15年 600万円
20年 800万円
25年 1,150万円
30年 1,500万円
35年 1,850万円
40年 2,200万円

※勤続年数の端数は切り上げ(例:19年1日 → 20年)

3. 退職金にかかる税金(所得税・住民税)算出の3ステップ

実際に退職金にかかる税額は、以下の手順で算出します。

ステップ1:控除額を差し引いた「課税退職所得金額」を求める

まず、退職金の総支給額から退職所得控除額を引き、その残額をさらに半分にします。これが税率をかけるベースとなる「課税退職所得金額」です。

課税退職所得金額 = (退職金収入金額 – 退職所得控除額) × 1/2
※1,000円未満の端数は切り捨て

ステップ2:課税退職所得金額に税率をかけ「所得税額」を算出する

ステップ1で求めた金額に対し、所得税の速算表に基づいた税率(5%〜45%)をかけ、控除額を差し引きます。さらに、復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)を加算します。

所得税額 = (課税退職所得金額 × 税率 – 控除額) × 1.021

ステップ3:一律10%の税率で「住民税額」を算出する

退職金にかかる住民税は、所得の多寡にかかわらず一律10%(都道府県民税4%+市区町村民税6%)です。通常の住民税は翌年払いですが、退職金は引かれた状態で振り込まれるため、後から請求が来ることはありません。

住民税額 = 課税退職所得金額 × 10%

4. 【シミュレーション】役員退職金と企業型DC活用時の手取り事例

ここでは、退職金制度や企業型DCを活用した場合の具体的な効果を見てみましょう。

ケース1:従業員が企業型DCを活用し、退職一時金として受け取る場合

従業員が企業型DCで月額2万円を30年間積み立て、年利3%で運用できたと仮定します。

・積立元本: 720万円
・運用益含めた受取額: 約1,160万円

この従業員が30年勤続で退職する場合、退職所得控除額は1,500万円です。

DCの受取額(約1,160万円)は控除枠内に収まるため、税金は0円となり、全額が手取りとなります。運用益(通常約20%課税)も、退職一時金として受け取ることで非課税メリットを最大限享受できます。

ケース2:創業社長が勤続35年で「役員退職金」を受け取る場合

・役員退職金: 5,000万円
・勤続年数: 35年(退職所得控除額 1,850万円)

1. 課税退職所得金額: (5,000万円 – 1,850万円) × 1/2 = 1,575万円
2. 所得税・住民税の合計: 約531万円
3. 手取り額: 約4,469万円

もしこれを役員報酬(給与)として受け取っていた場合、税率は最高税率に近くなるため、手取りは半分程度になる可能性があります。

企業型DCの掛金は「全額損金」で積み立て可能

企業型DCの大きなメリットは、会社が拠出する掛金が全額損金として扱われる点です。

会社の法人税負担を抑えながら個人資金を積み立てることができ、拠出時は「給与」とみなされないため、現役期間中の所得税・住民税の負担が軽減されます。

5. 経営者が注意すべき「企業型DC・iDeCo」と退職金の併用ルール

企業型DCやiDeCo(個人型確定拠出年金)の老齢給付金を「一時金」として受け取る場合、税務上は「退職所得」として扱われます。

 

そのため、会社の退職金とDCの一時金を両方受け取る場合、「退職所得控除の調整」というルールが適用されます。

特に、2026年1月からの税制改正により、これまで有効だった「DCを先に受け取る」という出口戦略のルールが厳格化(5年→10年)されるため、注意が必要です。

受給時期が重なると控除枠が減る?「退職所得控除の調整」

短期間に複数の退職金を受け取る場合、退職所得控除(非課税枠)を重複して使わせないよう、控除額を減額調整する計算が行われます。 この調整が行われる期間要件は、「どちらを先に受け取るか」という順番によって大きく異なります。

【重要】受け取る「順番」と期間のルール(2026年1月改正)

退職所得控除を最大限に活用し、調整計算による控除額縮小を避けるためには、以下の期間を空ける必要があります。

1. DC一時金を「先」に受け取り、後から会社退職金を受け取る場合(改正の対象) これまで多くの経営者が活用していたのが、この「DC先取り」パターンです。 DCを先に受け取り、一定期間空けてから会社の退職金を受け取ることで、控除枠の調整を回避できていました。

しかし、この「空けるべき期間(期間制限)」が今回の改正で大幅に延長されます。

・改正前(2025年12月受取分まで): 前回(DC)から5年経過していれば調整なし
例:60歳でDC受給 → 65歳で会社退職金受給(両方の控除枠をフル活用可)

・改正後(2026年1月受取分から): 前回(DC)から10年経過しないと調整対象
例:60歳でDC受給 → 70歳以降でないと、会社退職金の控除枠が減らされる

【対策】 来月以降、従来のような「60歳DC・65歳退職金」という5年スパンの計画では、後から受け取る会社退職金の控除額が大きく削られ、増税となります。 「DC受取から退職まで10年空ける」あるいは「DCを一時金ではなく年金で受け取る」といった計画の見直しが必要です。

2. 会社退職金を「先」に受け取り、後からDC一時金を受け取る場合

逆に、会社の退職金を先に受け取る場合は、期間制限が非常に長く設定されています。こちらは今回の改正による変更はありませんが、元々ハードルが高いルールです。

ルール: 前回(会社退職金)から19年経過しないと調整対象

・会社退職金の勤続年数と重複している期間分、DC側の控除枠がまるごと削除されます。
例:60歳で会社退職金 → 79歳以降にDC受給(現実的にはiDeCo/DCの受給上限年齢である75歳を超えるため、このパターンで調整を回避するのは困難です)

勤続5年以下の役員は「2分の1課税」が全額適用外(特定役員退職手当等)

勤続年数が5年以下の役員等(法人税法上の役員、議員、公務員など)が受け取る退職金については、「2分の1課税」の適用がありません。

「退職金支給額-退職所得控除額」の全額が課税対象となるため、税負担が倍増します。役員就任期間が短い場合の退職金設定には十分な注意が必要です。

勤続5年以下の従業員も300万円超は調整対象

2022年より、役員以外の従業員等であっても、勤続年数が5年以下の場合は「短期退職手当等」という区分が新設されました。

「退職所得控除額を控除した残額」のうち、300万円を超える部分については2分の1課税が適用されなくなりました。

6. 退職所得控除を正しく適用するための申告手続き

退職金の税制メリットを受けるためには、適切な事務手続きが不可欠です。

 

提出必須:「退職所得の受給に関する申告書」の役割

退職金を受け取る人は、原則として支払を受ける時までに「退職所得の受給に関する申告書」を提出する必要があります。

・会社退職金の場合: 会社(勤務先)へ提出
・企業型DC/iDeCo一時金の場合: 運営管理機関(証券会社や銀行など)へ提出

提出しなかった場合は約20%の「高額徴収」となる

もしこの申告書を提出しなかった場合、会社は退職金支給額の全額に対して一律20.42%の税率で源泉徴収しなければなりません。退職所得控除も適用されないため、本来よりも大幅に高い税金を支払うことになります。

救済措置: 払い過ぎた税金を取り戻すためには、受給者本人が翌年に確定申告を行う必要があります。余計な手間を防ぐためにも、退職時の提出を徹底しましょう。

【重要】住民税は「天引き」で完結する(現年分離課税)

退職金にかかる住民税は、給与とは異なり、支払われるその瞬間に天引きされて課税関係が終了します(現年分離課税)。 そのため、「退職した翌年に、忘れた頃に高額な住民税の請求が来る」という事態は、退職金に関しては発生しません。

これは、リタイア後の資金計画を立てる上で大きな安心材料となります。

7. まとめ

退職所得控除は、日本における最強の節税手段の一つです。

しかし、その効果を最大化するためには、「勤続年数(加入期間)の管理」と「受取時期(出口)の分散」が鍵を握ります。

特に、企業型DC(選択制DC)を導入している企業では、役員退職金とDC一時金の受給時期が重なることで、想定していた控除枠が使えないという事態が起こり得ます。

「いつ」「どのような形式で(一時金か年金か)」「どの順番で」受け取るのが、社長個人の手取りにとって最適なのか。これは会社ごとの退職金規定や、経営者のライフプランによって正解が異なります。

日本企業型確定拠出年金センターでは、企業担当者のみなさまに、企業型DC導入に関する個別相談を無料で行っています。企業型DC導入のメリット・デメリットも詳しくお伝えできますので、ぜひ一度お問合せください。

よくある質問(FAQ)

Q 退職金にかかる税金は、なぜ給与に比べて安いのですか?

A 「分離課税」と「2分の1課税」の優遇措置があるためです。

退職金は給与などの他の所得と合算せずに分けて計算(分離課税)し、さらに控除額を引いた残額を「半分(2分の1)」にしてから税率をかけるため、税負担が抑えられます。

Q 勤続年数に端数(例:14年3ヶ月)がある場合の計算はどうなりますか?

A 1年未満の端数は切り上げて計算します。

例えば「14年3ヶ月」の場合は「15年」として計算するため、控除額は 40万円 × 15年 = 600万円 となります。

Q 企業型DCやiDeCoの一時金も退職金に含まれますか?

A はい、税務上は「退職所得」として扱われます。

そのため、退職所得控除の枠を利用することができ、運用益を含めた受取額にかかる税金を大きく圧縮、あるいはゼロにできる可能性があります。

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