事業承継・M&A時の企業型DC資産承継|合併・会社分割・株式譲渡での実務対応
中小企業の事業承継やM&Aが年々増加するなか、見落とされがちなのが企業型確定拠出年金(企業型DC)の取り扱いです。承継のスキーム(株式譲渡・合併・会社分割)によって、制度の存続可否や資産移換の要否がまったく異なります。手続きを誤ると、従業員の年金資産が一時的に宙に浮いてしまったり、不利益変更とみなされてトラブルになったりするおそれもあります。本記事では、導入支援実績1,300社以上の当センターが、承継スキーム別の実務ポイントを解説します。
この記事の監修
株式会社日本企業型確定拠出年金センター
執行役員 企業型DC導入支援グループマネージャー
石黒充顕
- DCプランナー2級
- AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)
- 企業年金管理士
- 確定拠出年金ガイド(SBI Benefit Systems認定資格)
- 情報セキュリティマネジメント試験合格
- 知的財産管理技能検定3級
- グーグルデジタルワークショップ修了
- 給与計算実務能力検定2級
日本企業型確定拠出年金センターの立ち上げから事業化に関わり、自身も400社以上の企業に企業型DCを導入している。商工会議所や工事組合をはじめ多数の税理士法人で職員向け及び顧客向けにセミナーを実施している。
自身の出演するYouTube『DCチャンネル』は専門チャンネルでありながら1万人を超える登録者を誇っている。
▶DCチャンネルはこちら
https://www.youtube.com/@ndc-center
NewsPicksやヒロ税理士、マキノヤ先生など動画出演も多数している。

株式譲渡の場合|制度自体は基本的に存続
株式譲渡は雇用主(事業主)そのものが変わらないため、企業型DC制度は原則としてそのまま存続します。従業員の資格・資産にも直接的な影響はありません。ただし、買収後に親会社の意向でグループ内の福利厚生方針を統一する場合は、運営管理機関の変更や商品ラインナップの見直しが検討されることがあります。

合併の場合|制度の統合手続きが必要
存続会社・消滅会社の双方が企業型DCを実施していた場合、合併後は原則として制度を一本化する必要があります。資産の移換、掛金体系・運用商品ラインナップのすり合わせ、そして従業員への説明会の実施が発生します。統合のタイミングによっては、一時的に旧制度と新制度が並走する期間が生じることもあるため、スケジュール管理が重要です。
会社分割の場合|承継会社への資産移換
事業の一部を切り出す会社分割では、承継される従業員の企業型DC資産をどちらの制度に帰属させるか、分割契約書上で明確に取り決めておく必要があります。承継会社に企業型DC制度がない場合は、新規導入または個人型(iDeCo)への移換対応を検討することになります。

実務で押さえるべき3つのポイント
- スケジュール確保:規約変更や資産移換には一定の手続き期間を要します。具体的な所要期間は運営管理機関によって異なるため、クロージングの数か月前から専門家に相談し逆算して準備することをおすすめします(詳細な標準処理期間は個別に要確認です)。
- 従業員への丁寧な説明:制度内容が変わる場合、不利益変更と受け取られないよう、変更理由と影響を分かりやすく伝える資料・説明会が欠かせません。
- 資産管理機関・運営管理機関の統一:統合後の管理を一本化することで、事務負担とコストを抑えられます。

デューデリジェンスの段階で確認しておきたいこと
M&Aにおいては、財務・法務のデューデリジェンスに比べて、企業型DCを含む福利厚生制度の確認が後回しにされがちです。買収前の段階で「対象会社が企業型DCを実施しているか」「掛金の未払いや規約違反がないか」「継続率・加入率はどの程度か」を確認しておくと、クロージング後の想定外のコストやトラブルを避けやすくなります。特に、対象会社が選択制DCを導入している場合、従業員の手取りに直結する制度であるため、買収後に安易に廃止・変更すると強い反発を招くことがあります。

よくある質問
Q. 株式譲渡でも制度の見直しは一切できないのでしょうか? A. 雇用主が変わらないため制度自体は存続しますが、労使合意を経れば規約変更(掛金体系の見直しや運営管理機関の変更など)は可能です。一方的な不利益変更にならないよう手続きを踏む必要があります。
Q. 合併時に双方の企業型DCの運用商品ラインナップが異なる場合はどうなりますか? A. 統合後の規約でラインナップを一本化する必要があります。従業員が保有している商品が新ラインナップにない場合は、スイッチング(預け替え)の案内が必要になります。
Q. 会社分割で承継会社に企業型DC制度がない場合、資産はどうなりますか? A. 新規に制度を導入するか、個人型(iDeCo)へ資産を移換することになります。放置すると自動移換となり資産が目減りするおそれがあるため、早めの案内が重要です。
まとめ
事業承継・M&Aにおける企業型DCの対応は、法務・労務・年金制度の知識を横断的に必要とする専門性の高い領域です。対応を誤ると従業員の不安や離職につながりかねません。
日本企業型確定拠出年金センターは、導入支援実績1,300社以上、継続率95%超という実績をもとに、M&Aや事業承継に伴う制度統合・資産移換もワンストップでサポートしています。承継のご予定がある企業様は、早めの無料相談をおすすめします。





