確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)は70歳まで加入・運用した方がおとく?わかりやすく解説します。
確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)は70歳まで加入・運用した方がおとく?
2022年の法改正により、確定拠出年金の加入可能年齢が引き上げられ、老後資金の準備における選択肢が広がりました。
企業型DCは規約に定めることで70歳未満、iDeCo(イデコ)は原則65歳未満まで加入できるようになり、より長く資産運用を続けられる環境が整いました。(※注:iDeCoについては、今後さらに加入可能年齢の上限が70歳未満に延長されることが検討されています。)
この記事では、確定拠出年金を70歳まで運用するメリットや注意点を解説し、自分に合った受給タイミングを見つけるためのポイントを紹介します。
1. 【企業型DCの導入を検討の方へ】法改正で企業型DCの加入期間が70歳まで延長へ
2022年5月の法改正により、確定拠出年金制度が大きく変わりました。
これまで企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入資格は標準的に65歳未満でしたが、規約に定めることで70歳未満まで加入が可能となりました。
これにより、60歳以降も厚生年金に加入して働く場合、70歳になるまで掛金を拠出しながら資産運用を継続できるようになったのです。
2. 企業型DCを導入する前に知っておきたい!DCの受給開始時期と70歳までの運用
確定拠出年金(DC)の資産は、原則として60歳から老齢給付金として受け取ることができます。
確定拠出年金(DC)の資産は、原則として60歳から老齢給付金として受け取ることができます。
今回の法改正で、この受給開始時期の上限が70歳から75歳に引き上げられました。 つまり、加入者は60歳から75歳になるまでの15年間の中から、自身のライフプランに合わせて最適なタイミングを選んで受給を開始できます。
加入資格の上限と受給開始時期の上限は異なるため、それぞれの制度内容を正しく理解しておくことが重要です。
受給開始は原則60歳から75歳の間で自由に選べる
法改正によって、確定拠出年金の受給開始時期の上限が75歳まで延長されたことで、加入者はより柔軟な資金計画を立てられるようになりました。 例えば、60代でまだ働き続けている間は受給を開始せず、75歳まで運用を継続して資産の成長を目指すといった選択が可能です。
公的年金の繰下げ受給を検討している場合、先に確定拠出年金を受け取り、公的年金の受給額が増えるのを待つといった活用法も考えられます。
自身の退職時期や健康状態、他の年金とのバランスを考慮しながら、最適なタイミングを慎重に判断できます。
加入期間が10年未満だと受給開始年齢が繰り下がることも
確定拠出年金の老齢給付金を60歳から受け取るためには、原則として通算加入者等期間が10年以上必要です。
この期間が10年に満たない場合、受給を開始できる年齢が段階的に繰り下がり、最も短い場合だと65歳からとなります。 通算加入者等期間とは、企業型DCやiDeCo(イデコ)に加入して掛金を拠出した期間や、運用のみを行っていた期間などを合算したものです。
3. 【企業型DC加入者必見】確定拠出年金を70歳まで運用継続する3つのメリット
確定拠出年金の運用を60歳以降も継続することには、資産をさらに成長させる機会や、税制上の優遇措置を長く受けられるといった利点があります。
また、ライフプランの変化に柔軟に対応できる点も大きな魅力です。
ここでは、70歳まで運用を継続することで得られる具体的な3つのメリットについて詳しく解説します。
運用益で老後資金をさらに増やせる可能性がある
運用期間を長く確保することで、複利効果をより大きく享受できる可能性があります。
60歳ですぐに資産を受け取らずに運用を続ければ、その間に生じた運用益が非課税で再投資されるため、効率的に資産を成長させることが期待できます。 特に、受給開始を検討している時期に市場が下落していた場合でも、慌てて売却せずに運用を継続し、市場の回復を待つという選択肢が生まれます。
時間を味方につけることで、より豊かな老後資金を準備できる可能性があります。
企業型DCの掛金拠出なら非課税などの税制優遇が長く続く
60歳以降も厚生年金に加入して働き、企業型DCの加入資格を継続する場合、掛金を拠出し続けることで大きな税制優遇を受けられます。 拠出した掛金は全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税の負担を軽減する効果があります。
また、運用期間中に得た利益に対しても税金はかかりません。 これらの非課税メリットを60歳以降も享受できることは、長期的な資産形成において非常に有利です。
税金の負担を抑えながら、効率よく資産を増やしていくことが可能になります。
ライフプランに合わせて受給開始時期を柔軟に調整できる
受給開始時期を60歳から75歳までの間で自由に選択できるため、個々のライフプランに合わせた柔軟な資金計画を立てられます。 例えば、公的年金の受給を繰り下げて増額を目指す場合、その間の生活費を確定拠出年金で補うといった使い方が考えられます。
逆に、退職後も当面の生活資金に余裕があれば、受給を遅らせて運用を継続し、資産の最大化を目指すことも可能です。
4. 70歳まで確定拠出年金の運用を続ける場合の注意点
確定拠出年金を70歳まで運用継続することには多くのメリットがありますが、いくつかの注意点も存在します。
60歳以降も運用を続ける場合は、継続的に発生するコストや市場の変動リスク、そして資産が拘束されるという点を十分に理解しておく必要があります。
75歳まで運用を続けるという選択をする前に、これらのデメリットを把握しておきましょう。
運用期間中は口座管理手数料が継続してかかる
確定拠出年金の資産を保有している限り、口座管理手数料は継続して発生します。 これは、掛金の拠出が終了し、運用の指図のみを行う「運用指図者」になった後も同様です。
手数料の額は運営管理機関によって異なりますが、運用益が手数料を下回ってしまうと、資産が目減りする可能性も否定できません。
運用を継続する際は、年間の手数料がどのくらいかかるのかを事前に確認し、長期的なコストとして認識しておくことが重要です。
運用実績によっては元本割れのリスクも残る
確定拠出年金は、投資信託などの価格が変動する商品で運用されるため、常に元本割れのリスクが伴います。
運用期間が長引けば、それだけ市場の変動に資産がさらされることになり、受給を予定していた時期に市況が悪化すると、積み立てた資産が元本を下回る可能性もあります。
大切な老後資金を守るためには、年齢やリスク許容度に応じて、定期預金のような元本確保型商品の割合を高めるなど、資産配分の見直しを定期的に行うことが求められます。
60歳以降も原則として資産を引き出すことはできない
確定拠出年金は老後の資産形成を目的とした制度のため、60歳以降であっても、一度受給手続きを開始するまでは資産を途中で引き出すことは原則としてできません。
運用を継続する選択をした場合、その期間中に急な出費が発生しても、確定拠出年金の資産を充てることは困難です。
5. 70歳までの運用継続はどんな人におすすめ?3つのケースを紹介
確定拠出年金の運用を70歳まで継続することは、すべての人にとって最適な選択肢とは限りません。
自身の経済状況やライフプランによって、そのメリットの大きさは異なります。
企業型DCやiDeCoに加入している方が、どのような状況であれば運用継続の恩恵を受けやすいのか、ここでは具体的な3つのケースを紹介します。
退職後も当面の生活資金に余裕がある人
退職金や預貯金が十分にあり、確定拠出年金の資産をすぐに引き出す必要がない人は、70歳までの運用継続を検討する価値があります。
当面の生活資金に困らないため、市場の動向を見ながら、より有利なタイミングで受給を開始する戦略をとることが可能です。 非課税で運用できるメリットを最大限に活用し、時間をかけて資産をさらに増やすことを目指せます。
焦って受け取る必要がないという精神的な余裕も、長期的な資産形成においては有利に働くでしょう。
60歳以降も働き続け、所得控除を受けたい人
60歳以降も会社に勤務し、厚生年金に加入し続ける場合は、企業型DCで掛金の拠出を継続できます。 拠出した掛金は全額が所得控除の対象となるため、所得税や住民税の負担を軽減することにつながります。
働き続けて安定した収入を得ながら、同時に税金の優遇も受けたいと考えている人にとって、掛金を拠出しながら運用を続けることは合理的な選択です。
長く働くことで、より多くの資産を積み上げつつ、節税効果も享受できます。
公的年金の繰下げ受給を検討している人
公的年金は、受給開始年齢を本来の65歳から最大75歳まで遅らせる「繰下げ受給」を選択することで、1カ月あたり0.7%ずつ受給額を増やすことが可能です。
この制度の利用を考えている人にとって、確定拠出年金は非常に有効なツールとなります。 年金を受け取らない期間の生活費を、先に企業型DCやiDeCo(イデコ)の資産で補うという方法です。
6. 受給タイミングを決める前に確認したい3つのポイント
確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)の受給タイミングは、老後のキャッシュフローに直接影響する重要な判断です。
最適なタイミングを見極めるためには、自身のライフプランや他の年金制度との関連性を多角的に検討しなくてはなりません。 ここでは、受給開始時期を決定する前に、必ず確認しておきたい3つのポイントを解説します。
60歳以降の働き方や収入の見通しを立てる
まず最初に、60歳以降のキャリアプランを具体的に描くことが重要です。 定年後も再雇用や別の形で働き続けるのか、あるいは完全にリタイアするのかによって、必要となる資金額や収入源は大きく異なります。
働き続ける場合は給与収入があるため、確定拠出年金の受給を遅らせる余裕が生まれます。 一方、リタイアする場合は、いつから生活費として資金が必要になるかを算出し、それに合わせて受給計画を立てる必要があります。
自身の働き方と収入の見通しが、すべての計画の土台となります。
公的年金を受け取る時期とのバランスを考える
確定拠出年金は、老後資金を構成する要素の一つであり、国民年金や厚生年金といった公的年金と合わせて考えることが不可欠です。 公的年金の受給開始時期を繰り上げるか、繰り下げるかによって、生涯にわたる受給総額は変動します。
例えば、公的年金を繰り下げて受給額を増やす戦略をとる場合、その間の生活費を確定拠出年金で補うといった連携が考えられます。
老後の生活を安定させるために、これらの制度をどう組み合わせるのが最も効果的か、シミュレーションしてみることが大切です。
一時金と年金、どちらの受け取り方が自分に合っているか検討する
確定拠出年金の受け取り方には、一括で受け取る「老齢一時金」と、分割で受け取る「老齢年金」があります。 一時金の場合は退職所得控除が、年金の場合は公的年金等控除が適用され、それぞれ税金の計算方法が異なります。
まとまった資金で住宅ローンの完済などを考えているなら一時金、毎月の生活費として安定的に受け取りたいなら年金形式が適しているでしょう。
7. まとめ
法改正によって、企業型DCやiDeCoは70歳近くまで加入・運用ができるようになり、老後資金の準備において柔軟性が増しました。
70歳まで運用を継続すれば、非課税の恩恵を受けながら資産のさらなる成長を期待できる一方、口座管理手数料や元本割れといったリスクも存在します。
最適な選択は、個人のライフプランや経済状況によって異なります。 自身の60歳以降の働き方、公的年金の受給計画、そして必要な生活資金などを総合的に考慮し、自分にとって最も有利な受給タイミングと方法を見極めることが重要です。



