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人的資本経営と企業型DC|従業員の資産形成支援を情報開示で活用する方法

人的資本経営と企業型DC|従業員の資産形成支援を情報開示で活用する方法

「人的資本経営」という言葉が、経営界・投資家の間で急速に注目を集めています。従業員を「コスト」ではなく「投資対象」として捉え、その価値を最大化することが企業価値向上につながるという考え方です。

この流れの中、企業型確定拠出年金(企業型DC)は「従業員への投資」として人的資本開示に活用できる制度として注目されています。本記事では、人的資本経営の概要と、企業型DCを活用した情報開示のポイントを詳しく解説します。

株式会社日本企業型確定拠出年金センター
執行役員  企業型DC導入支援グループマネージャー
石黒充顕

  • DCプランナー2級
  • AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)
  • 企業年金管理士
  • 確定拠出年金ガイド(SBI Benefit Systems認定資格)
  • 情報セキュリティマネジメント試験合格
  • 知的財産管理技能検定3級
  • グーグルデジタルワークショップ修了
  • 給与計算実務能力検定2級

▶DCチャンネルはこちら
https://www.youtube.com/@ndc-center

NewsPicksやヒロ税理士、マキノヤ先生など動画出演も多数している。

人的資本経営とは?企業に求められる「人への投資」

人的資本経営の背景

人的資本経営とは、従業員(人材)を企業の「資本」として捉え、その価値向上に積極的に投資することで企業価値を高める経営手法です。2020年代に入り、ESG投資の拡大や岸田政権の「新しい資本主義」政策の影響を受け、日本でも急速に普及しています。

従来の経営では、人件費は「削減すべきコスト」として扱われがちでした。しかし現在は、優秀な人材の採用・育成・定着こそが持続的な競争力の源泉であるという認識が広がっています。その結果、従業員への投資を経営戦略の中心に置く「人的資本経営」が、上場企業を中心に急速に浸透しています。

人的資本開示の義務化(上場企業等)

2023年3月期決算より、上場企業等を対象に有価証券報告書への人的資本情報の開示が義務化されました(金融商品取引法改正)。内閣官房が策定した「人的資本可視化指針」では、以下の7つの項目について定性的・定量的な情報の開示が求められています。

  1. 健康・安全
  2. エンゲージメント
  3. 流動性(離職率・採用数など)
  4. ダイバーシティ
  5. スキル・経験
  6. 人材確保
  7. 人材育成

また、国際標準規格「ISO 30414」では19の指標が定められており、報酬・福利厚生に関連した指標(Benefit Cost、Total Compensation Costなど)も含まれています(ISO 30414の最新版)。

ESGの「S(社会)」との関連

人的資本への投資は、ESG(環境・社会・ガバナンス)のうち「S(社会)」に直結します。機関投資家や金融機関が企業のESGスコアを評価する際、従業員への処遇・福利厚生・資産形成支援は重要な評価項目のひとつです。企業型DCの整備はこの「S」評価の向上に貢献する可能性があります。

企業型DCが人的資本開示の好材料になる理由

「従業員エンゲージメント」への貢献

企業型DCを導入することで、従業員が「この会社は自分の老後を考えてくれている」と感じ、エンゲージメント(会社への愛着・コミットメント)の向上につながります。企業型DCの加入率や投資教育の実施状況を数値化することで、エンゲージメントに関する開示情報として有価証券報告書や統合報告書に記載できます。

「リテンション(定着率)」への貢献

企業型DCは原則として60歳まで引き出せない仕組みであるため、従業員が在籍し続けることで老後資産が積み上がります。制度の存在が従業員の長期在籍を促す動機付けになり、「人材確保」「流動性」の開示項目において施策のひとつとして記載できます。

「福利厚生」の充実度アピール

企業型DCの導入は、金銭的な報酬(給与)とは別の「非金銭的報酬」として従業員に提供できます。有価証券報告書や統合報告書において、「福利厚生の充実」として定性情報に記載することが可能です。

(株)日本企業型確定拠出年金センターが提供する「SBIぷらす年金プラン」は、SBIベネフィット・システムズとの共同開発による企業型DCプランです。全国1,300社以上の導入実績を持ち、人的資本開示を見据えた制度設計にも対応しています。

有価証券報告書・統合報告書への記載ポイント

有価証券報告書への記載

有価証券報告書の「サステナビリティに関する考え方及び取組」の欄に、人的資本に関する戦略・目標・指標・実績を記載します。企業型DCに関連して記載できる具体的な内容は以下の通りです。

  • 企業年金制度(企業型DC)の整備状況・制度概要
  • 加入者数・加入率(任意加入の場合)
  • 投資教育の実施状況・受講率
  • 従業員の老後資産形成支援への取り組み方針

記載の際は、単なる「制度の有無」にとどまらず、「なぜその制度を設けているか」という経営方針との連動性を示すことが重要です。

統合報告書・CSRレポートへの記載

統合報告書やCSRレポートでは、定量情報に加えて定性情報(制度の目的・設計思想・従業員の声など)も記載できます。「従業員の財務健全性(Financial Wellbeing)への投資」として企業型DCの取り組みをストーリーとして伝えることで、投資家・取引先への訴求力が高まります。

投資額(掛金総額・加入者数)と従業員への効果(定着率・エンゲージメント指標)をセットで示すと、人的資本投資のROIを示すことができ、説得力が増します。

中小企業でも活用できる人的資本の「見える化」

上場企業でなくても人的資本の見える化は有効

有価証券報告書の人的資本開示義務は上場企業等に限られますが、中小企業でも人的資本の「見える化」は有効です。採用活動、銀行融資、取引先との関係強化といった場面で活用できます。

採用活動での活用

求人票・会社説明会・採用サイトにおいて、「企業年金制度(企業型DC)を整備し、従業員の老後資産形成を支援しています」と明記することで、求職者へのアピールになります。特に若い世代は老後への不安が高く、資産形成支援制度の有無は就職先選びに影響します。

銀行・投資家との関係での活用

メインバンクとの融資交渉や外部投資家との対話において、人的資本への投資姿勢を示す材料として企業型DCの導入実績を活用できます。金融機関側もSDGs・ESG対応を重視する傾向が強まっており、従業員への投資姿勢は評価につながる可能性があります。

「人的資本スコアカード」の簡易版を作成する

中小企業でも、次のような簡易スコアカードを作成して経営会議や決算報告に活用することをお勧めします。

指標内容自社の状況
企業年金制度企業型DC導入有無・加入率○○%
投資教育実施回数・受講率年○回
定着率在籍○年以上の従業員比率○○%
採用競争力求人倍率・内定承諾率○倍

選択制DCなら会社の新たな掛金負担なしで制度を整備し、この「人的資本スコアカード」の実績を積み上げることができます。コストをかけずに人的資本への投資姿勢を示せる点が、中小企業にとって大きなメリットです。

FAQ(人的資本経営と企業型DC)

Q1. 中小企業でも有価証券報告書に人的資本を記載しなければなりませんか?

A. 有価証券報告書の提出義務があるのは上場企業等(金融商品取引法の規定による)です。中小企業に義務はありませんが、採用・融資・取引先との関係強化のために、自主的に人的資本情報を開示・発信することは有効です。ウェブサイトや会社案内、採用資料への掲載から始めることをお勧めします。

Q2. 企業型DCの導入だけで人的資本開示の要件を満たせますか?

A. 人的資本開示は複数の項目をカバーする必要があるため、企業型DCだけで全要件を満たすことはできません。しかし、「エンゲージメント」「人材確保」「報酬・福利厚生」などの項目における具体的な施策として有効に活用できます。他の施策と組み合わせて開示することで、全体的な取り組みの充実度を示せます。

Q3. 企業型DCの加入率を開示した場合、低い加入率は評価に影響しますか?

A. 選択制DCの場合、加入は任意であるため加入率が低いケースもあります。開示の際は、制度の設計趣旨と加入率向上への取り組み(投資教育の実施など)を併せて記載することで、投資家・取引先への説明力を高めることができます。数値の良し悪しよりも、改善に向けた姿勢を示すことが重要です。

Q4. ESG投資家から企業型DCについて質問されることはありますか?

A. 大企業では、機関投資家からのESGアンケート(MSCI・FTSE等)で福利厚生制度の整備状況が問われるケースがあります。企業型DC(企業年金制度)の有無は、ESGの「S(社会)」スコアの評価に影響する可能性があります。

Q5. 企業型DCを「人への投資」として経営資料に記載したい場合、どう整理すればよいですか?

A. 損益計算書上では「福利厚生費」として計上されますが、統合報告書や経営計画において「人的資本への投資」として定性的に説明することは有効です。投資額(掛金総額・加入者数)と従業員への効果(定着率の変化・エンゲージメントスコアなど)をセットで示すと、説得力のある情報開示になります。

まとめ

人的資本経営の潮流の中、企業型DCは「従業員への投資」として人的資本開示に活用できる有力な制度です。上場企業では有価証券報告書への記載、中小企業では採用・融資・取引先対応において、企業型DCの導入実績を積極的にアピールすることをお勧めします。

特に選択制DCは、会社の新たな掛金負担なしで企業年金制度を整備できるため、中小企業にとって最もコストパフォーマンスの高い人的資本への投資手段のひとつです。制度を整えるだけでなく、その取り組みを対外的に発信することで、採用力・信用力・従業員エンゲージメントの向上という複合的な効果が期待できます。

(株)日本企業型確定拠出年金センターは、全国1,300社以上の企業型DC導入を支援してきた専門機関です。SBIベネフィット・システムズと共同開発した「SBIぷらす年金プラン」を通じて、人的資本経営を見据えた制度設計から情報開示のアドバイスまで一貫してサポートします。オンライン全国対応で、まずはZoom 60分の無料相談をご活用ください。

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