これまで解説してきたように、企業型確定拠出年金(企業型DC)は、全従業員に掛金の拠出を行い、企業側が掛金を負担します。企業は制度設計にあたっては、自社にマッチした、なおかつ従業員の将来の老後資産のために、シミュレーションを行いながら、設計していくことになります。従業員個人個人のライフプランにピッタリと合う設計は非常に難しいものです。
そこで、企業型確定拠出年金のうち、企業の費用負担が少なく、また従業員が自身のライフプランに合わせて、企業型DCを行うかどうか「選択」できる仕組みがあります。
「選択制DC」とも呼ばれ、こちらも企業型確定拠出年金です。
従業員が掛金を拠出する場合には、企業型確定拠出年金と同様に扱い、拠出をしない場合には、通常の給与として支払います。
選択制DCを行う場合には、従業員の給与の一部を減額し、その減額分を「生涯設計手当」「ライフプラン手当」や「ライフプラン支援金」「ライフデザイン手当」などと、名称を設定して支給します。
従業員にとっての総支給額は減額されません。従業員はその手当をどのように受け取るか、選択できます。
1.選択制DCとして、掛金を拠出し、60歳以降に年金(一時金)として受け取れるように運用する
2.選択制DCは行わず、今まで通り給与と合わせて受け取る
この受け取り方を、従業員自身が選択できるのです。
「マッチング拠出」と似ていますが、マッチング拠出は、従業員の掛金は事業主掛金を超えることはできませんが、選択制DCでは制限がありません。
従業員それぞれが、自由に個別の資産状況やライフプランに合わせて、掛金を設定できるのも魅力のひとつです。掛金を拠出せず、そのまま給与として受け取ることも可能ですし、掛金を拠出したとしても、ライフプランに合わせて金額を変更することも可能です。より自由度の高いしくみになっています。
もちろん、従業員の掛金拠出に合算して、企業側も掛金拠出をすることができます。企業側の掛金は全額損金算入が可能であり、従業員の掛金は「所得」の対象外になるので、社会保険料や所得税に影響があります。
ただし、社会保険料に影響があるということは、老齢厚生年金を算定基礎となる平均報酬額が減ることにもなりますので、老齢厚生年金額が減る可能性もあります。
とはいえ、年々負担の大きくなる社会保険料を考えると、活用するメリットは大きいといえるでしょう。