育成就労・特定技能の企業戦略。企業型DCで人材定着と差別化
育成就労・特定技能の企業戦略。企業型DCで人材定着と差別化
2027年から開始が予定される育成就労制度は、外国人材の育成と確保を目的としていますが、一方で一定の条件下での転籍が可能になるため、企業間の人材獲得競争の激化が予想されます。
このような状況下で優秀な人材を確保し、定着させるためには、他社との差別化が不可欠です。
その有効な戦略の一つが、退職金制度である企業型確定拠出年金(企業型DC)の導入です。
本記事では、企業型DCがどのように人材定着と企業の成長に貢献するのかを解説します。
目次
育成就労制度の開始で人材獲得競争が激化!今こそ福利厚生の差別化が必要な理由
育成就労制度では、原則として同一業務であれば本人の意向による転籍(転職)が可能になります。
これまでの技能実習制度との大きな違いはこの点にあり、外国人材の流動性が高まることが予想されます。
特に、より良い条件を求めて都市部の企業へ人材が流出する可能性も否定できません。
そのため、企業は給与だけでなく、従業員の将来の資産形成を支援する手厚い福利厚生を整備することが重要になります。
企業型DCのような制度は、長期的に働くインセンティブとなり、他社との明確な違いを生み出す強力な武器となります。

【企業向け】育成就労・特定技能人材に企業型DCを導入する3つの経営メリット
外国人材向けに企業型DCを導入することは、中小企業を含むあらゆる企業規模の経営戦略において有効です。
第一に、退職金制度として優秀な人材の長期定着を促します。
第二に、採用活動において他社にはない魅力として求職者にアピールでき、採用競争力を高めます。
第三に、選択制DCなどを活用すれば、社会保険料の負担を適正化し、コストを抑えながら福利厚生を充実させることが可能です。
これらは、持続的な企業成長の基盤となります。
メリット1:手厚い退職金制度で優秀な人材の長期定着を促進する
企業型DCは、企業が従業員の将来のために資産形成を支援する制度であり、長期的な就労を促す強力なインセンティブとなります。
特に、特定技能1号から2号への移行を目指す人材にとっては、5年以上の長期的なキャリアプランを描きやすくなります。
退職金制度が整備されていることは、従業員が「この会社で長く働きたい」と感じる大きな要因です。
将来受け取れる資産が明確になることで、働くモチベーションの向上と定着率アップに直結し、安定した組織運営を実現します。
外国人従業員にとって、日本の退職金制度は不透明に感じられがちです。企業型DCなら、自分のスマートフォンからいつでも積立額や運用状況を確認できます。「今やめるとこれだけの資産を失う」ということが数字でリアルタイムに把握できるため、感情的な離職を防ぎ、長期勤続への動機付けをより強固なものにします。
メリット2:採用活動で他社と差別化し、選ばれる企業になる
外国人材の採用市場において、給与や業務内容だけでなく、福利厚生の充実度が企業選びの重要な基準となっています。
多くの競合他社がまだ導入していない企業型DCを整備することで、「従業員の将来を大切にする企業」というポジティブな印象を与えられます。
特に、帰国時に一時金として受け取れる制度がある点は、外国人材にとって大きな魅力です。
採用面接や求人票でこの点を明確にアピールすることで、優秀な人材からの応募を増やし、採用競争において優位に立つことができます。
【外国人材向け】企業型DCの魅力!帰国時にも役立つ資産形成の仕組み
企業型DCは、外国人材にとっても大きなメリットがある制度です。
最大の魅力は、将来日本を離れて母国に帰る際に、積み立てた資産を「脱退一時金」として現金で受け取れる可能性がある点です。
これは、帰国後の生活設計に大いに役立ちます。
また、制度を利用している間は、税制優遇により効率的に将来の資産を形成できます。
日本の企業で働きながら、有利な条件で自分の未来のためにお金を貯められる仕組みです。

帰国時に現金で受け取れる「脱退一時金」制度とは
脱退一時金とは、企業型DCに加入していた外国人が、将来日本を離れて帰国する際に、それまで積み立てた年金資産を一時金として受け取れる制度です。
通常、年金資産は60歳まで引き出せませんが、一定の要件を満たす外国籍の方については特例が認められています。
この制度により、日本での就労期間中に形成した資産を帰国後の生活資金や事業資金として活用できます。
本人にとっては、給与とは別の形でまとまった資産を得られるため、大きなメリットと感じられるでしょう。
母国での起業や住宅購入を夢見て来日する人材は少なくありません。企業型DCの脱退一時金を、単なる「ボーナス」ではなく、帰国後の「第二の人生の準備金」として位置づけて説明しましょう。日本での頑張りが母国での成功に直結するというストーリーを提示することで、仕事に対するエンゲージメントが劇的に高まります。
外国人材が企業型DCに加入する際の重要ポイントを解説
外国人材が企業型DCに加入する際には、いくつかの重要なポイントを理解しておく必要があります。
まず、加入資格は国籍を問わず、厚生年金の被保険者であれば原則として誰でも対象となります。
また、帰国時に受け取れる脱退一時金には、具体的な受給要件が定められているため、事前に確認が不可欠です。
さらに、転職する際には積み立てた資産を次の制度へ引き継ぐことが可能ですが、手続きを怠ると不利益を被るリスクもあるため注意が必要です。

加入資格は国籍不問!厚生年金の被保険者なら誰でも対象
企業型DCの加入資格に国籍の制限はありません。
その企業で働く厚生年金の被保険者であれば、日本人従業員と同様に、外国人材も加入することができます。
育成就労や特定技能の在留資格で働く方も、適用事業所で厚生年金に加入していれば対象者となります。
企業は、国籍によって加入の可否を判断するのではなく、公平な福利厚生としてすべての従業員に制度を提供することが求められます。
【要注意】脱退一時金を受け取るための具体的な受給要件
脱退一時金を受け取るには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
まず、国民年金の脱退一時金の支給決定を受けていることが前提です。
その上で、企業型DCの加入者資格を喪失していること、個人別管理資産額が1万5千円以下でないこと、そして資格喪失から2年以内に請求手続きを完了させることが求められます。
特に、請求期限が設けられている点には注意が必要です。
これらの要件を正しく理解し、計画的に手続きを進める必要があります。
転職後も安心!積み立てた資産を引き継げるポータビリティ制度
企業型DCには「ポータビリティ」という仕組みがあり、転職や退職をした場合でも、それまでに積み立てた年金資産を次の制度へ持ち運ぶ(移換する)ことができます。
例えば、転職先の企業が企業型DCを導入していればそちらへ移行できますし、導入していない場合でも個人型確定拠出年金(iDeCo)に資産を移して運用を続けることが可能です。
この制度により、キャリアチェンジの際にも大切な資産が途切れることなく、継続的な資産形成が実現します。
手続きを忘れると資産が目減りする「自動移換」のリスク
転職や退職後、6ヶ月以内に資産の移換手続きを行わなかった場合、その資産は国民年金基金連合会に「自動移換」されます。
自動移換されると、資産は現金化され運用が停止するため、増えることはありません。
さらに、管理手数料が継続的に差し引かれるため、長期間放置すると資産が目減りしてしまうリスクがあります。
大切な資産を守るためにも、転職・退職時には必ずポータビリティの手続きを忘れずに行うことが重要です。
企業型DCの導入を成功させるための運用ポイント
企業型DCの導入を成功させるためには、制度を設けるだけでなく、適切な運用が重要です。
特に外国人従業員に対しては、言語や文化の壁を考慮し、制度のメリットを正しく、分かりやすく伝える工夫が不可欠です。
また、すべての従業員に一律で加入を義務付けるのではなく、本人のライフプランや経済状況に応じて加入を選択できる「選択制DC」を活用するなど、多様なニーズに対応できる柔軟な制度設計が効果的です。
外国人従業員に制度のメリットを正しく伝える説明方法
外国人従業員に企業型DCのメリットを理解してもらうためには、分かりやすい説明が不可欠です。
日本語の専門用語が多い資料だけでは、内容が正確に伝わらない可能性があります。
母国語に翻訳した資料を用意したり、通訳を介して説明会を実施したりするなどの配慮が求められます。
特に、税制上のメリットや、帰国時に受け取れる脱退一時金の仕組みなど、本人にとって魅力的なポイントを具体的に伝えることで、制度への理解と加入意欲を高めることができます。
投資に馴染みのない外国人材にとって、資産が減るリスク(元本割れ)は強い不安材料です。導入時の説明会では、投資信託だけでなく「定期預金(元本確保型商品)」という選択肢があることを強調しましょう。まずは「非課税で確実にお金を貯められる箱」として理解してもらい、日本の生活に慣れてから投資教育をステップアップさせるのが、制度導入をスムーズにするコツです。
多様なニーズに対応できる選択制DCの活用が効果的
選択制DCとは、従業員が自身のライフプランや経済状況に合わせて、企業型DCに加入するかどうか、また掛金をいくらにするかを決められる制度です。
給与の一部を掛金として拠出するか、そのまま給与として受け取るかを選べます。
特に外国人材の場合、日本での就労期間や将来設計は様々です。
加入を強制するのではなく、選択制にすることで、従業員一人ひとりのニーズに寄り添った柔軟な福利厚生を提供でき、結果として制度の利用促進と満足度の向上につながります。
育成就労・特定技能 企業戦略 企業型確定拠出年金に関するよくある質問
ここでは、育成就労や特定技能で働く外国人材の企業型確定拠出年金(企業型DC)活用に関する、よくある質問にお答えします。
転籍時の資産の扱いや、帰国時の税金、永住権を取得した場合の対応など、具体的な疑問について解説します。
Q.育成就労制度を利用して転籍した場合、積み立てた年金資産はどうなりますか?
A.転職後も資産は引き継げます。
ポータビリティ制度を利用し、転職先の企業型DCや個人型年金(iDeCo)に資産を移換することが可能です。
育成就労から特定技能へ移行する際や、同一業務で別の企業へ転籍した場合でも、それまでに積み立てた大切な資産が無駄になることはありません。
Q.帰国時に受け取る脱退一時金から税金は引かれますか?
A.はい、引かれます。
脱退一時金を受け取る際には、所得税として20.42%が源泉徴収されます。
ただし、帰国後に日本国内の納税管理人を通じて確定申告(還付申告)を行うことで、納めすぎた税金が還付される可能性があります。
手続きについては専門家への相談をおすすめします。
Q.特定技能から永住権を取得した場合、DCの資産はどのように扱われますか?
A.日本人と同様の扱いになります。
永住権を取得し、日本に居住し続ける場合、脱退一時金を受け取ることはできません。
その代わり、積み立てた資産は老後資金として運用を続け、原則として60歳以降に老齢給付金として年金または一時金の形で受け取ることになります。
まとめ
育成就労制度の開始に伴い、外国人材の確保と定着は企業の重要な経営課題となります。
企業型確定拠出年金(企業型DC)は、退職金制度として長期就労を促すだけでなく、社会保険料の適正化や採用競争力の強化にも貢献します。
また、外国人材にとっては、帰国時に受け取れる脱退一時金や税制優遇など、具体的なメリットがあります。
制度を正しく設計・運用し、その魅力を従業員にしっかり伝えることが、これからの時代に選ばれる企業になるための鍵となります。




