企業型DC・iDeCo「元本割れ8割」の嘘と真実|経営者が知るべき対策を解説
「iDeCoや企業型DCを導入しても、結局8割の人が元本割れして損をするらしい」
経営者の皆様の中には、このような噂を耳にし、従業員のための制度導入を躊躇されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。2025年12月現在、新NISAの普及とともに資産形成への関心は高まっていますが、ネット上には依然として不安を煽る古い情報や、制度の一側面だけを切り取った誤解が残っています。
結論から申し上げますと、「8割が元本割れ」という情報は、公的な統計データに基づく事実ではありません。しかし、「手数料(コスト)の構造」を理解せずに商品を契約すると、資産が目減りしてしまうリスクがあるのは事実です。
本記事では、なぜこのような「8割元本割れ」の噂が生まれたのかと、経営者が従業員の資産を守るために知っておくべき「2つの手数料」について解説します。
この記事の監修
株式会社日本企業型確定拠出年金センター
執行役員 企業型DC導入支援グループマネージャー
石黒充顕
- DCプランナー2級
- AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)
- 企業年金管理士
- 確定拠出年金ガイド(SBI Benefit Systems認定資格)
- 情報セキュリティマネジメント試験合格
- 知的財産管理技能検定3級
- グーグルデジタルワークショップ修了
- 給与計算実務能力検定2級
日本企業型確定拠出年金センターの立ち上げから事業化に関わり、自身も400社以上の企業に企業型DCを導入している。商工会議所や工事組合をはじめ多数の税理士法人で職員向け及び顧客向けにセミナーを実施している。
自身の出演するYouTube『DCチャンネル』は専門チャンネルでありながら1万人を超える登録者を誇っている。
▶DCチャンネルはこちら
https://www.youtube.com/@ndc-center
NewsPicksやヒロ税理士、マキノヤ先生など動画出演も多数している。

1. 結論:「元本割れ8割」は構造を誤解した噂である
まず、この衝撃的な数字の正体について整理します。この数字は確定拠出年金制度全体の運用実績を示すものではなく、「手数料負け(=コストによる資産の目減り)」という現象を過大に解釈した噂話です。
噂の出所と「手数料負け」のカラクリ
この噂が生まれた背景には、iDeCo(個人型確定拠出年金)特有の事情と、加入者の商品選択ミスがあります。
iDeCoは、加入者自身が最低でも月額171円(年間2,052円)以上の「口座管理手数料」を負担する必要があります。一方で、投資経験のない加入者が「元本確保型商品(定期預金など)」のみを選択してしまうケースが少なくありません。
超低金利時代において、定期預金の利息は微々たるものです。 つまり、「利息(ほぼゼロ)」から「口座管理手数料(年間2,000円以上)」が引かれることで、運用に失敗したわけではないのに、固定費で資産残高が目減りしていく現象が発生します。
これが「元本割れ」と言われる正体の一つです。
2. 企業型DCなら「手数料負け」を防げるのか
企業型DCを導入すればこの問題は解決するのでしょうか? 答えは「半分正解」ですが、「もう一つのコスト」に注意しなければ、企業型DCでも元本割れのリスクは残ります。
決定的な違いは「2つの手数料」の構造
元本割れ(資産目減り)の原因となるコストには、大きく分けて2種類あります。噂の元凶となった「口座管理手数料」と、投資商品にかかる「信託報酬」です。
1. 口座管理手数料(運営コスト):会社が負担
iDeCoでは個人負担で元本割れの原因となっていましたが、企業型DCでは「全額会社負担」です。 そのため、従業員が「定期預金」を選んだとしても、口座管理手数料で目減りすることは構造上発生しません。
2. 信託報酬(運用コスト):従業員(加入者)が負担
こちらは、投資信託を持っている間、資産から毎日自動的に引かれる手数料です。 ここに企業型DCの落とし穴があります。
もし、従業員が「信託報酬が高い商品」を選んでしまい、そのコスト以上の運用益が出せなかった場合、資産は目減りしてしまいます。
【元本割れの第2の原因】
運用リターン < 信託報酬(コスト) → 資産の目減り
つまり、企業型DCで従業員の資産を守るためには、会社が口座管理手数料を負担するだけでなく、「信託報酬の低い、優良な商品ラインナップ」を選定・提供することが重要です。
3. 経営者が推奨すべき「従業員を守る投資原則」
一時的な市場変動(値動き)によるリスクに加え、前述の「手数料負け」を防ぐために、企業は適切な投資教育を提供する必要があります。
長期・積立・分散の徹底
世界経済の成長に合わせて資産を増やす王道です。長期積立により、高値掴みを防ぎ(ドルコスト平均法)、リスクを平準化します。
信託報酬(コスト)への意識
「高い手数料の商品=良い商品」とは限りません。特に長期投資においては、年率数パーセントの信託報酬の差が、将来の受取額に大きな差を生みます。
低コストなインデックスファンドなどを活用し、「運用益をコストが食いつぶさない」ポートフォリオを組む重要性を伝える必要があります。
税制優遇を含めたトータルリターン
企業型DCの最大のメリットは税制優遇です。掛金は全額が給与算定対象外となるため、所得税・住民税の負担を軽減できます。
仮に運用益がゼロだったとしても、負担軽減できた金額分だけ、従業員の実質手取り額は増加します。
これも元本割れリスクを補う大きな要素です。
4. 掛金コストを抑えて福利厚生を充実させる「選択制DC」
「従業員のために制度を入れたいが、掛金コストが増えるのは厳しい」とお考えの経営者様に適しているのが、「選択制DC」です。
選択制DCは、従業員に対し「今の給与の一部を、DCの掛金として積み立てるか、そのまま給与として受け取るか」の選択権を与える制度です。
経営者と従業員双方のメリット
1. 会社側の掛金負担なし: 既存の給与原資を活用するため、会社が新たに掛金を上乗せする必要はありません。「将来のための積立制度(箱)」を用意し、利用するかどうかは従業員の判断に委ねることができます。
2. 従業員の「手取り」を増やす支援: 掛金として拠出した分は、給与算定対象外となります。そのため、従業員は「所得税」と「住民税」の負担を軽減しながら、効率よく老後資金を作ることができます。
3. 経営者自身の資産形成も可能: 企業型DCは役員も加入可能です。拠出する掛金は全額損金算入できます。
5. まとめ
「iDeCo・企業型DCは8割が元本割れ」という噂は極端ですが、「コスト意識」を持たないと損をするというのは真実です。
企業型DCであれば、以下の3つのポイントによって、この「手数料負け」のリスクを最小限に抑えることが可能です。
・口座管理手数料:会社負担の仕組みにより、手数料負けの入り口を構造的に塞ぐこと。
・信託報酬の低い商品ラインナップ:低コスト商品などを選択することで、運用コストによる目減りを防ぐこと。
・投資教育の実施:従業員が正しくリスクとコストを理解し、適切な商品を選べるようにすること。
「従業員の将来を守りたいが、どの商品を選べばいいかわからない」「掛金コストを抑えて導入したい」とお考えの経営者様は、ぜひ弊社にご相談ください。
経営者・企業担当者の方へ
日本企業型確定拠出年金センターでは、経営者・企業担当者のみなさまに、企業型DC導入に関する個別相談を無料で行っています。企業型DC導入のメリット・デメリットも詳しくお伝えできますので、ぜひ一度お問合せください。
よくある質問(FAQ)
Q 「確定拠出年金は8割が元本割れする」というのは本当ですか?
A いいえ、事実ではありません。
この数字は公的なデータではなく、iDeCo(個人型)で定期預金を選んだ場合などに発生する「手数料負け」を極端に解釈した噂に過ぎません。
ただし、商品選びを間違えるとコストにより損をする可能性はあります。
Q なぜ「手数料負け」が起きるのですか?
A 主に2つの原因があります。
1つ目は、iDeCo等で「利息よりも口座管理手数料が高くなる」ケース。
2つ目は、投資信託の「運用益よりも信託報酬(運用コスト)が高くなる」ケースです。
特に信託報酬が高い商品を選んでしまうと、運用成績が振るわない時期にコスト負けして資産が目減りすることがあります。
Q 運用で損をするのが不安です。リスクを減らす方法はありますか?
A 「長期・積立・分散」と「低コスト」を意識することです。
一般的に、時間をかけて広く分散投資することに加え、信託報酬の低い商品を選ぶことで、手元に残る利益を最大化し、リスクを抑えることができるといわれています。
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