在職老齢年金とは?制度のポイントや利用のメリットを詳しく解説
在職老齢年金制度は、働きながら年金を受け取る高齢者に対して適用され、一定の収入を超えると年金の一部または全部をカットする仕組みです。
年金月額と収入の月額の合計が「支給停止調整額」である50万円の基準に達すると、受け取れる年金額が調整されます。高齢者の就労意欲を削いでいる、という指摘もあり、制度の改正や廃止が見直されています。
今回は、在職老齢年金により年金が支給停止になる流れや、具体的な金額などを解説します。
この記事の監修
株式会社日本企業型確定拠出年金センター
執行役員 企業型DC導入支援グループマネージャー
石黒充顕
- DCプランナー2級
- AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)
- 企業年金管理士
- 確定拠出年金ガイド(SBI Benefit Systems認定資格)
- 情報セキュリティマネジメント試験合格
- 知的財産管理技能検定3級
- グーグルデジタルワークショップ修了
- 給与計算実務能力検定2級
日本企業型確定拠出年金センターの立ち上げから事業化に関わり、自身も400社以上の企業に企業型DCを導入している。商工会議所や工事組合をはじめ多数の税理士法人で職員向け及び顧客向けにセミナーを実施している。
自身の出演するYouTube『DCチャンネル』は専門チャンネルでありながら1万人を超える登録者を誇っている。
▶DCチャンネルはこちら
https://www.youtube.com/@ndc-center
NewsPicksやヒロ税理士、マキノヤ先生など動画出演も多数している。

1. 在職老齢年金とは?基本的な仕組みと概要
在職老齢年金とは、厚生年金を受給しながら働いて収入を得ている方に適用される制度です。厚生年金受給者の収入が基準額を超えた場合に、年金の一部または全部が支給停止の対象となります。
2. 在職老齢年金で支給停止となるケースをシミュレーション
まずは、在職老齢年金の仕組みをまとめます。
| 基本月額と総報酬月額相当額との合計が50万円以下の場合 | 全額支給 |
| 基本月額と総報酬月額相当額との合計が50万円を超える場合 | 基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2が減額される |

たとえば、基本月額(年金月額)が20万円、総報酬月額相当額が40万円の場合、合計額は60万円です。この場合、基準額を超過している部分は「60万円-50万円=10万円」となります。
基準額を超えている部分の半額である5万円が支給停止額として、年金額から差し引かれます。つまり、年金が「20万円-5万円=15万円」となり、受給額は15万円に減額となります。
3. 在職老齢年金の支給停止額の確認方法と注意点
在職老齢年金の支給停止額を確認するには、自分の基本月額や総報酬月額相当額を確認する必要があります。
基本月額に関しては、ねんきんネットやねんきん定期便で確認できます。ねんきんネットでは、自身のこれまでの保険料納付実績や年金支給額などを確認できるため、有効活用しましょう。
総報酬月額相当額に関しては、1年分の給与明細を確認するか、前年の源泉徴収票を確認する方法があります。総収入を12で割った数字が総報酬月額相当額になり、基本月額と合算すれば「50万円を超えるかどうか」を判断できるはずです。
4. 在職時における在職老齢年金の手続きと留意点
2022年より、支給される年金額を毎年10月に見直す「在職定時改定」という制度が始まりました。
これにより、65歳以上に引き続き働いている方でも、これまでの保険料納付実績が毎年10月に年金額へ反映されます。年金額の改定に伴って、在職老齢年金へ影響する可能性がある点に留意しましょう。
①在職定時改定制度とは
在職定時改定制度とは、支給される年金額を毎年10月に見直す制度です。老齢厚生年金は、加入期間や加入中の平均報酬に応じて受給額が計算されます。
2022年3月までは、65歳以降に納めた保険料に関して、70歳になるか退職するまでが支給額に反映されない仕組みでした。
しかし、2022年4月より在職時改定制度が始まり、毎年10月に前年に支払った保険料が年金額へ反映されます。
②退職時改定について
退職時改定とは、年金受給者が退職した際に、その時点における加入期間や支払った保険料の額に基づいて年金額を再計算する制度です。つまり、退職に伴って、これまでの納付実績に基づく年金を受け取れるようになります。
5. 年金の受給権が発生した後の被保険者期間が年金額に反映される時期
在職老齢年金を受けている65歳以上の方が9月1日に厚生年金に加入しているとき、在職定時改定により10月分の年金額から見直されます。
なお、9月1日前に被保険者の資格を喪失して、そこから9月1日をまたぎ1ヶ月以内に厚生年金に加入したときも、在職定時改定として年金額の再計算が行われます。
在職老齢年金を受けている方が退職したときや70歳に到達したときは、退職して1カ月を経過したとき、退職した翌月分の年金額から見直されます(退職改定)。
また、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受けている70歳未満の方が70歳に到達したときは、70歳到達した翌月分の年金額から見直されます。
6. 在職老齢年金と繰り下げ受給の関係
在職老齢年金の規定により年金が減額されてしまう場合、老齢厚生年金の繰り下げ受給を検討する方もいるかもしれません。
しかし、在職老齢年金によって支給停止される部分は、繰り下げの対象外です。つまり、在職老齢年金で支給対象外とならない部分しか、増額の増額にはなりません。
例えば、65歳以降の在職老齢年金による支給率が平均して70%(30%が支給停止)となる場合、繰り下げ受給による増額の対象となるのは70%の部分のみです。
7. 自営業者は在職老齢年金の対象外
在職老齢年金の対象となるのは、厚生年金に加入している人です。つまり、厚生年金に加入しない自営業者やフリーランスは、基本月額とフリーランスの報酬月額相当額の合計が50万円を超えても、在職老齢年金により減額の対象とはなりません。
そのため、もし在職老齢年金による年金減額を避けたい場合は、雇用されるのではなく業務委託として業務を請け負う方法が考えられます。
勤務先との交渉や調整が必要になりますが、年金の受給が始まるタイミングで、雇用契約から業務委託契約に変更できないか相談するとよいでしょう。
8. 今後在職老齢年金は廃止される可能性
在職老齢年金の基準額は、これまでも段階的に引き上げられてきました。昨今は60歳以上でも働く人が増えている関係で、「高齢者の就業意欲を削ぐ」「無駄な就業調整を発生させている」という指摘がされています。
実際に、厚生労働省では在職老齢年金制度の見直しと廃止に関する議論が進行中です。具体的には、基準額を62万円や71万円に引き上げる案や、在職老齢年金制度そのものを廃止する案が出ているようです。
日本経済団体連合会も、在職老齢年金の将来的な廃止を政府へ提言しています。このように、在職老齢年金制度については多方面からの見直しが進められており、高齢者の就労環境や年金受給に大きな変化をもたらす可能性があります。
9. まとめ
在職老齢年金の制度は、働きながら年金を受給したとき、収入額に応じて年金の一部または全部を支給停止とする制度です。年金財源を守る側面がある一方で、高齢者の就業意欲を阻害し、労働力不足を招いている、という指摘がされています。










