2025年最新版!企業型確定拠出年金・企業型DCの年末調整の仕方を解説。iDeCoとの違いや今年の年末調整の注意点も。
2025年最新版!企業型確定拠出年金・企業型DCの年末調整の仕方を解説。iDeCoとの違いや今年の年末調整の注意点も。
令和7年(2025年)の年末調整は、基礎控除、給与所得控除、扶養控除に関する大規模な法改正が実施されるため、実務担当者は変更点を正確に理解する必要があります。
この改正は、多くの従業員の所得税額に直接影響を及ぼす内容です。
この記事では、令和7年の年末調整における具体的な変更点と、実務上の注意点について、企業の担当者向けにわかりやすく解説します。
1. 令和7年(2025年)の年末調整で変わる4つのポイント
令和7年(2025年)の年末調整における主な変更点は、大きく分けて4つあります。
具体的には、「基礎控除の見直し」(恒久的な10万円引き上げと時限的な上乗せ)、「給与所得控除の最低額引き上げ」、「扶養控除等の所得要件緩和」、「特定親族特別控除の新設」です。
これらの変更は、従業員の税負担を軽減することを目的としており、特に扶養家族がいる世帯に大きな影響を与えます。
2. 【変更点1】基礎控除額が最大95万円に引き上げられます
令和7年の年末調整から、基礎控除額が合計所得金額に応じて変動する仕組みに変わります。
合計所得金額が132万円以下の場合、基礎控除額は現行の48万円から95万円へと大幅に増えます。(所得2,350万円以下に対する恒久的な10万円引上げ後の58万円に37万円を上乗せした額)。
ただし、控除額は段階的に減少し、2,400万円を超えると控除額は0円になります。 この変更により、年末調整の際には、従業員一人ひとりの合計所得金額を正確に把握した上で、対応する基礎控除額を適用する必要があります。
合計所得金額に応じた新しい基礎控除額を解説
新しい基礎控除額の計算方法は、従業員の合計所得金額によって異なります。
具体的には、下記のようになります。
・132万円以下の場合は95万円
・132万円超336万円以下の場合は88万円
・336万円超489万円以下の場合は68万円
・489万円超655万円以下の場合は63万円
・655万円超2,350万円以下の場合は58万円
・2,350万円超2,400万円以下の場合は48万円
・2,400万円超2,450万円以下の場合は32万円
・2,450万円超2,500万円以下の場合は16万円
・2,500万円超の場合は0円
年末調整の実務においては、「給与所得者の基礎控除申告書」を用いて、従業員自身が給与所得やそれ以外の所得を合算し、合計所得金額を申告します。
3. 【変更点2】給与所得控除の最低額が65万円へ増額されます
令和7年分以降、給与所得控除の最低額が現行の55万円から65万円へと10万円引き上げられます。
給与所得控除は、給与収入から差し引くことができる、いわば給与所得者にとっての必要経費にあたるものです。
この最低額が増額されることにより、給与収入が比較的少ない従業員の課税対象となる所得が減少し、結果として所得税の負担が軽減されます。 この改正は、特にパートタイマーやアルバイトなど、非正規雇用で働く人々の手取り額の増加に寄与することが期待されています。
企業の担当者としては、給与計算システムがこの新しい控除額に対応しているかを確認する必要があります。
給与収入162.5万円以下の人が控除拡大の対象です
給与所得控除の最低額が65万円に引き上げられることに伴い、主に給与収入が162.5万円以下の人が控除拡大の恩恵を受けることになります。(給与所得控除額は収入162.5万円までは一律65万円のため)
具体的には、給与収入が162.5万円以下の従業員に対して、一律で65万円の給与所得控除が適用されます。 さらに、基礎控除も最大95万円に増額されるため、これらの控除を合わせると、課税対象となる所得が大幅に減少します。 この結果、パートやアルバイトとして働く配偶者や子の税負担が大きく軽減される可能性があります。
4. 【変更点3】扶養控除や配偶者控除の所得要件が緩和されます
今回の税制改正により、扶養控除や配偶者控除の対象となる親族の合計所得金額要件が、現行の48万円以下から58万円以下へと10万円引き上げられます。
この変更は、いわゆる「年収の壁」に大きな影響を与えます。 扶養の範囲内で働きたいと考えるパートタイマーやアルバイトの方にとって、これまで以上に収入を得られるようになります。
企業の担当者は、従業員が扶養親族の所得を見積もる際に、この新しい基準を適用する必要があることを周知徹底し、扶養控除等申告書の記載内容を正しく確認することが求められます。
扶養親族の合計所得金額要件が58万円以下に変わります
令和7年から、扶養控除の対象となる扶養親族の合計所得金額要件が58万円以下に緩和されます。 給与所得控除の最低額が65万円になるため、給与収入のみの場合、年収123万円(123万円-給与所得控除65万円=所得58万円)までであれば、扶養の対象となります。
これにより、これまで「103万円の壁」を意識して就労調整をしていたパートタイマーなどが、より多く働けるようになります。
年末調整の実務では、従業員から提出される扶養控除等申告書に記載された扶養親族の「所得の見積額」が、この新しい基準に基づいているかを確認することが重要です。
配偶者控除と配偶者特別控除の所得要件も変更されます
扶養控除と同様に、配偶者控除の対象となる配偶者の合計所得金額要件も58万円以下に変わります。 これにより、配偶者の給与収入が123万円以下であれば、納税者は配偶者控除(最大38万円)の適用を受けることが可能です。
また、配偶者特別控除についても所得要件が変更され、例えば控除額38万円が適用される配偶者の給与収入の上限は、現行の150万円から160万円に引き上げられます。
5. 【変更点4】年収123万円超の大学生等がいる世帯向けの「特定親族特別控除」が新設
扶養控除の所得要件が緩和された結果、アルバイト収入が123万円を超える大学生など(特定扶養親族)が扶養から外れ、世帯の税負担が急増する、いわゆる「年収の壁」問題が生じます。
この急激な負担増を緩和する目的で、新たに「特定親族特別控除」が創設されました。 なぜこの控除が必要かというと、特定扶養控除(63万円)が適用されなくなると、一気に税負担が増加してしまうためです。
この新設された控除は、その「崖」をなだらかにすることを意図しています。 対象となるのは19歳以上23歳未満の特定親族で、一定の所得要件を満たす場合に適用されます。
特定親族特別控除の対象者(合計所得金額58万円超123万円以下)と控除される金額
特定親族特別控除の対象者となるのは、年齢が19歳以上23歳未満の扶養親族で、かつ合計所得金額が58万円を超え123万円以下である場合です。
この要件に該当する親族がいる場合、納税者は特定親族の合計所得金額に応じて、控除額が段階的に設定されます。例えば、合計所得金額が58万円超85万円以下(給与収入で123万円超150万円以下)の場合、控除額は特定扶養控除と同額の最大63万円から段階的に減少し、合計所得金額120万円超123万円以下(給与収入で185万円超188万円以下)の場合、控除額は3万円となります。
この控除は、扶養から外れた際の急激な税負担増を緩和することを目的としています。年末調整の計算においては、対象となる親族の所得を正確に確認し、この新しい控除を適用する手続きを行います。
控除を受けるための親族の合計所得金額要件(58万円超123万円以下)を確認しましょう
特定親族特別控除の適用を受けるためには、対象となる親族の合計所得金額が「58万円超123万円以下」の範囲内であることを確認する必要があります。
この所得要件は厳密に判定されるため、従業員からの申告内容を慎重にチェックすることが求められます。 年末調整の実務では、この新しい控除に対応するため、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の様式が変更される可能性があります。
担当者は、従業員がこの要件を正しく理解し、申告書に正確に記入できるよう、事前に情報提供を行うことが重要です。
6. 企業型DCの掛金控除に変更はある?年末調整への影響を解説
令和7年の税制改正において、企業型DC(企業型確定拠出年金)の掛金に対する所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の制度自体に変更はありません。
従業員が拠出した掛金は、これまでと同様に全額が所得から控除されます。 ただし、基礎控除や給与所得控除の額が引き上げられることにより、多くの従業員で課税所得金額が減少します。
その結果、同じ金額の掛金を拠出していても、所得税率が下がることで、節税効果が変動する可能性があります。 年末調整の手続きとしては、従来通り従業員から提出された申告書に基づき、掛金の全額を控除する点に変わりはありません。
7. iDeCoの掛金は?年末調整で提出する書類と手続きの注意点
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金についても、令和7年の改正で控除の仕組みに変更はありません。
拠出した掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除として、所得から差し引かれます。
年末調整でこの控除を受けるためには、従業員は国民年金基金連合会が発行する「小規模企業共済等掛金払込証明書」を「給与所得者の保険料控除申告書」に添付して会社に提出する必要があります。
実務担当者としては、この証明書の添付漏れがないかを必ず確認することが重要です。 特に年の途中でiDeCoに加入した従業員の場合、証明書の到着が遅れることもあるため、早めの提出を促す必要があります。
8. 令和7年の年末調整で実務担当者が注意すべき3つのポイント
令和7年の年末調整は、基礎控除や扶養控除の大幅な改正に伴い、実務担当者が注意すべき点がいくつかあります。
所得金額調整控除や生命保険料控除といった既存の控除との兼ね合いも考慮しつつ、正確な処理が求められます。 特に重要なのは、「申告書の様式変更への対応」「控除額の計算ミス防止」「従業員への事前周知」の3点です。
ひとり親控除や勤労学生控除の所得要件も緩和されるため、これらの変更点も含めて総合的に理解しておく必要があります。
各種申告書の様式変更と記入ミスに注意が必要です
令和7年の税制改正を反映するため、年末調整で使用する各種申告書の様式が変更される見込みです。
特に「給与所得者の基礎控除申告書」や「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、新しい控除制度に対応した項目が追加されるなど、大幅な様式変更が予想されます。 担当者は、必ず最新の様式の用紙を準備し、従業員に配布しなければなりません。
また、従業員が新しい様式での書き方に戸惑い、記入ミスや入力ミスをする可能性も高まります。 混乱を避けるため、事前に記入例や記載例を共有し、提出書類に不備がないか慎重に確認する作業が不可欠です。
控除額の計算間違いを防ぐための確認事項
今回の改正では、基礎控除額が所得に応じて変動したり、特定親族特別控除が新設されたりと、所得控除額の計算が従来よりも複雑になります。
手計算やエクセルで処理している場合、計算間違いのリスクが高まるため、給与計算システムが最新の法令に対応済みかを確認することが重要です。 また、手動で計算する際は、国税庁が提供する年末調整のチェックリストなどを活用し、二重三重のチェックを行うことが望ましいです。
無料の計算ツールやアプリも存在するため、それらを利用して試算し、正確性を期すなどの対策が求められます。
従業員への変更点の事前周知が重要になります
扶養の壁の変更など、今回の改正は従業員の働き方やライフプランに直接影響する内容を多く含みます。 そのため、従業員一人ひとりが変更点を正しく理解し、自身の状況を正確に申告できるよう、企業側からの丁寧な事前周知が不可欠です。
変更点をまとめた案内資料を配布したり、社内イントラネットで情報を共有したり、場合によっては説明会を開催したりすることも有効です。
9. 令和8年以降の月々の源泉徴収事務にも影響が出ます
令和7年の年末調整における変更は、その年の年税額を確定させるだけでなく、令和8年1月以降の月々の給与計算における源泉徴収事務にも直接影響を及ぼします。
具体的には、いつから影響が出るかというと、令和8年最初の給与支払日からです。
令和7年末に提出される「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の内容をもとに、令和8年分の源泉徴収税額表に当てはめる扶養親族等の人数を決定するため、その判定基準が変わることを理解しておく必要があります。
この変更は、法定調書の作成にも関わってきます。
源泉控除対象親族の範囲が変わるため確認が必要です
令和8年からの月々の源泉徴収税額を計算する上で基礎となる「源泉控除対象親族」の判定要件が、合計所得金額48万円以下から58万円以下に緩和されます。
この変更により、これまで扶養親族として数えられなかった家族が、新たに源泉控除対象親族に含まれる場合があります。 例えば、公的年金収入のみの親族がいる場合、年金収入額から公的年金等控除額を差し引いた後の所得で判定するため、年収ベースでの影響も確認が必要です。
従業員にこの変更を伝え、令和8年分の扶養控除等申告書を正しく記入してもらうよう、適切な案内が求められます。
10. まとめ
令和7年(2025年)の年末調整は、基礎控除、給与所得控除、扶養控除という根幹部分に関わる大きな法改正が適用されるため、実務担当者は正確な知識と慎重な対応が求められます。



