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経営者の退職金でお得なのは?小規模企業共済と企業型確定拠出年金の違い

小規模企業共済と企業型確定拠出年金は、どのように違うのか疑問に感じている経営者も多いのではないでしょうか。どちらも資産形成を行う積み立て制度ですが、その特性や細かな違いまで比較する機会は、なかなかないかもしれません。

そこで今回は、小規模企業共済と企業型確定拠出年金の違いを比較し、どちらの制度に加入するのがお得なのかをわかりやすく解説します。

小規模企業共済や企業型確定拠出年金に加入を検討している方は、この記事を読んで参考にしてみてください。

動画でのわかりやすい解説はこちらから(DCチャンネル)

経営者のための共済金「小規模企業共済」

小規模企業共済とは
どんな制度なのでしょうか。

小規模企業共済は経営者に特化した制度です。退職金の準備になるだけでなく、事業の安定に役立つメリットも盛り込まれています。

 まずは、小規模企業共済がどのような制度なのかを解説します。

小規模企業共済とは

小規模企業共済は、その名の通り小規模企業の役員や個人事業主が加入できる共済制度です。廃業したり退職したりした場合に給付され、生活の安定や事業の再建を図るための資金に充てられます。

国の機関である「独立行政法人中小企業基盤整備機構」が運営しており、全国で約160万人以上が加入している制度です。

掛金や受け取る共済金について、税制面での大きなメリットがあるのも、加入者が増える要因のひとつでしょう。

受取金 税制上のメリット
掛金 全額所得控除
共済金(一括受け取りの場合) 退職所得扱い
共済金(分割受け取りの場合) 公的年金等の雑所得扱い

また、掛金の範囲内で事業資金の貸し付けを、低金利で受けられる制度もあります。ただし、加入後20年経たずに任意解約すると、元本割れする可能性があるため注意が必要です。

小規模企業共済の加入資格

小規模企業共済制度の加入資格は、業種によって異なる以下のいずれかの条件を満たしている必要があります。

1. 建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従 業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員

2. 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員

3. 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員

4. 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員

5. 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員

6. 上記「1」と「2」に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)

引用 : 独立法人中小企業基盤整備機構 / 加入資格

また、2つ以上の事業を行っている事業主または共同経営者は、一方でのみ加入できたり、従業員に、家族従業員・共同経営者(2人まで)を含めなかったりと細かな制限もあるため注意が必要です。

小規模企業共済の掛金

小規模企業共済の掛金月額は1,000円〜70,000円のうち、500円刻みで選択できます。また、年払いや半年払いも対応可能です。さらに、経営状態に応じて増額・減額もできます。

優れた税制優遇制度の「企業型確定拠出年金」

企業型確定拠出年金には
どんな税制優遇制度があるのでしょうか。

企業型確定拠出年金の税制優遇をうまく活用すれば、退職金の準備になるだけでなく、大きな節税効果を得られます。

まずは、企業型確定拠出年金がどのような制度で、どんな税制優遇制度があるのかを解説していきます。

企業型確定拠出年金とは

企業型確定拠出年金とは、会社が掛金を拠出して加入者が自ら運用しながら資産形成を行う企業年金制度のひとつです。税制面での優遇メリットなどもあるため、年々導入企業が増え加入者も増加しています。

日本の年金制度は「3階建て」と称されます。

1階 国民年金 国民全員加入 
2階 厚生年金 職業に応じた上乗せ給付
3階 企業年金 企業や団体・協会運営による 
企業型確定拠出年金は3階部分に当たります。
 
加入要件は、企業型確定拠出年金を導入している企業で、厚生年金保険の被保険者であることです。
 
資産の運用は加入者自身が各々おこないます。したがって加入者には少なからず運用知識が必要になります。運用は必ずしも増えるわけではなく、資産が予定より減ることも想定できます。資産運用に正解はありませんが、適切な商品選択や運用に関する知識を補うため、企業が投資教育を行うことを努力義務としています。
 
積み立てて運用した資産は、原則60歳までは引き出せないため注意が必要です。受け取り方法は一時金(一括)や年金(分割)など選択することができ、どちらを選んでもそれぞれに税制優遇を受けられます。

企業型確定拠出年金の掛金

企業型確定拠出年金の掛金は、原則企業が拠出します。

しかし、企業が定める規定によっては、一定の条件で従業員が上乗せして掛金を拠出するマッチング拠出や、給与の一部を掛金とするか、そのまま給与として受け取るかを選択できる選択制企業型確定拠出年金を利用できる場合もあります。

マッチング  拠出を利用した場合、掛金は全額所得控除(小規模事業等掛金控除)の対象となるため、所得税や住民税が減ります。しかし、マッチング拠出で上乗せする資金は、従業員自身のものであるため、社会保険料には影響がありません。

一方、選択制企業型確定拠出年金を利用した場合、掛金として受け取る分は給与所得から除外されます。また、社会保険の算定基礎からも除外されるため、所得税や住民税が減ったり、社会保険料が変動したりとメリットが多数存在します。

企業型確定拠出年金の税制面での優遇措置

企業型確定拠出年金の3つの税制優遇について解説します。

1 : 掛金は経費計上できる

会社が掛金として拠出した分は全額経費として計上できます。また、加入者にとっての税制面でのメリットがあります。

企業型確定拠出年金の掛金は非課税です。つまり、給与所得から除外されるためその分の所得税や住民税・社会保険料がかかりません。

また、企業型確定拠出年金の積立金は通常、特別法人税が課税されます。しかし、現在は2026年3月31日まで凍結中のため納税不要です。

2 : 運用益も非課税

一般的に金融商品で運用し利益が発生すると、約20%の税金が課税されます。ところが、企業型確定拠出年金の場合運用益に税金がかかりません。

仮に10,000円の運用益が発生した場合、課税される税額は2,000円で、残りは8,000円になってしまいます。これが企業型確定拠出年金なら10,000円のまま残せるのですから、とても優遇されているといえます。

3 : 老後の受け取り各種控除が適用

企業型確定拠出年金は60歳以降に受け取る際、年金や一時金として受け取ることができます。また、受け取り方によって受けられる所得控除は、以下の通りです。

一時金受け取り…退職所得控除

【退職所得の計算方法】

退職所得 = (退職金等の収入金額 - 退職所得控除額) × ½

ただし、


1. 役員としての勤続年数が5年以下の法人役員等(特定役員退職手当)の場合、年内に受け取る退職手当によって計算方法が変わるため、注意が必要です。

≪特定役員退職手当のみの場合≫

(特定役員退職手当等の収入金額 – 特定役員退職所得控除額)

≪特定役員退職手当とその他の退職手当を受け取る場合≫
それぞれの退職手当を以下に当てはめて算出した合計額が退職所得となります。

① 特定役員退職手当等の収入金額 - 特定役員退職所得控除額
② {一般退職手当等の収入金額 - (退職所得控除額 - 特定役員退職所得控除額)}× 1/2

2. 退職所得控除額は、役員の勤続年数によって異なります。勤続年数に1年未満の端数がある場合も1年として計算します。

3. 勤続年数が特定役員と特定役員以外で重なっている部分(重複勤続年数)がある場合とない場合では、以下の通り計算方法が異なります

重複勤続年数がない場合 40万円×特定役員等勤続年数
重複勤続年数がある場合 40万円×(特定役員等勤続年数-重複勤続年数)+20万円×重複勤続年数

 また、令和4年以降において、同年内に特定役員退職手当とそれ以外の退職手当の支払いがある場合の退職所得の計算方法については こちら>> (https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2741.htm

年金受け取り…雑所得控除

【雑所得の計算方法】

雑所得 = 公的年金等の収入金額 - 公的年金等の控除所得額

1. 公的年金以外に雑所得がある場合は、上記金額に、公的年金等以外の収入金額から必要経費を差し引いた額を合算します。

2. 公的年金等となる年金は、公的年金、企業型確定給付年金、確定拠出年金の老齢給付(年金)などです。

 

経営者の退職金としてお得なのは?「小規模企業共済」と「企業型確定拠出年金」の違いを徹底比較

両者はどのような違いがあるのでしょうか。項目ごとに比較します。

加入資格

小規模企業共済の加入資格は、小規模の事業を営む経営者や会社役員、個人事業主に限られます。業種や従業員数によって要件が異なるため、注意が必要です。

一方、企業型確定拠出年金は、制度を導入している企業で働いている、厚生年金保険の被保険者であれば、誰でも加入することができます。

貸付制度

企業型確定拠出年金には貸付金制度はありません。一方、小規模企業共済は貸付金制度の利用が可能です。事業を円滑に営むことができるよう、掛金の範囲内で事業資金を低金利で借りることができます。

貸付制度は全部で7種類あります。

貸付制度名 主な用途
一般貸付制度 もしものときに、迅速に事業資金を借り入れできる
緊急経営安定貸付け 経済環境の変化等により資金繰りが困難な場合、経営の安定を図るため、事業資金を低金利で借入できる
傷病災害貸付け 疾病・負傷による入院や災害などにより被害を受けた際に、経営の安定を図るため、事業資金を低金利で借入できる
福祉対応貸付け 契約者または同居する親族の福祉向上のため、必要な住宅改造資金・福祉機器購入等の資金を低金利で借入できる
創業転業時・新規
事業展開等貸付け
新規開業・転業する際や事業多角化の際に必要な資金を低金利で借入できる
事業継承貸付け 事業承継(事業用資産または株式等の取得)に要する資金を低金利で借入れできる

廃業準備貸付け

事業の廃止や解散を円滑に行うため、必要な資金を低金利で借入れできる

運用の選択と給付の確実性

小規模企業共済は運用商品の選択を自分で決めることができません。

しかし、受け取り方法が解約となる場合を除き、6カ月以上納付すれば、元本割れする心配はなく受け取ることができます。また、36カ月以上納付すれば付加共済金も受け取れるため、元本以上のリターンを確実に得ることが可能です。

ただし、納付が6カ月未満の場合は、掛け捨てとなり得るため注意が必要です。

一方、企業型確定拠出年金は運用商品を自身で選択できます。そのため、資産を大きく増やすことができる可能性があるのと同時に、運用次第では元本割れを起こす危険性も兼ね備えているため注意が必要です。

手数料

企業型確定拠出年金では、掛金に加えて運用手数料がかかりますが、小規模企業共済には手数料はかかりません。

月額の掛金

小規模企業共済の月額掛金は、1,000円〜70,000円のうち500円刻みで、また、企業型確定拠出年金の月額掛金は、上限が55,000円です。ただし、確定給付企業年金等にも加入している場合は上限が27,500円となるため注意が必要です。

途中解約

企業型確定拠出年金は原則として60歳になるまで運用資金を受け取ることができません。

一方、小規模企業共済は途中解約が可能で、掛金の納付月額に応じて納付額の80%〜120%相当の解約手当金を受け取ることができます。

「小規模企業共済」「企業型確定拠出年金」それぞれおすすめの経営者とは?

2つの制度を上手に活用しましょう。

企業型確定拠出年金は、企業・加入者双方が税制優遇を受けることができるうえ、加入者自身で資金運用をおこなうため、元本割れする可能性もありますが、資産が大きく増える可能性も秘めています。

安定した老後を迎えるためには、企業型確定拠出年金への加入はおすすめです。

一方、小規模企業共済は、事業リスクにそなえつつ退職金の準備ができます。また、万が一の場合には貸付制度を利用できるうえ、廃業することになった場合も60歳を待たずに共済金を受け取ることが可能です。

資金に余裕がない場合は、事業の安定と退職金の準備が一緒にできる、小規模企業共済への加入を検討するとよいでしょう。

しかし、事業の安定だけでなく自身の老後にもしっかりと備えるため、節税効果の高い2つの制度を利用することは、大きなメリットになると言えます。

まとめ

まずは無料相談にお申込みください。

小規模企業共済は経営者に特化した制度であり、掛金の範囲内であれば事業資金を低金利で借り入れることができます。

一方で、企業型確定拠出年金は、導  入企業の厚生年金保険被保険者であれば役員も加入できる制度です。税制面での優遇措置が多く、運用も自身で行うため、うまく資産運用すれば老後に受け取る資産を増やすことも可能です。

小規模企業共済は、加入資格が細かく定められているため注意が必要ですが、要件さえ満たしていれば、どちらの制度にも加入するのがおすすめといえます。メリットを活かして、豊かな老後を迎えられるよう、準備しておきましょう。

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