通算企業年金とは?メリットやデメリット、資産を移換する手続きを解説
通算企業年金とは、退職後に企業年金制度で運用していた年金資産を移換する先の一つです。原則として65歳から受け取れるため、将来の生活資金を確保するために重要な役割を果たしています。
通算企業年金では、移換時の年齢に応じた予定利率に基づいて運用されます。確定拠出年金のように自分で運用商品を選択するのではなく、将来受け取れる給付額が確定している点が特徴です。
今回は、通算企業年金制度の仕組みや特徴、メリットなどを解説します。
この記事の監修
株式会社日本企業型確定拠出年金センター
執行役員 企業型DC導入支援グループマネージャー
石黒充顕
- DCプランナー2級
- AFP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)
- 企業年金管理士
- 確定拠出年金ガイド(SBI Benefit Systems認定資格)
- 情報セキュリティマネジメント試験合格
- 知的財産管理技能検定3級
- グーグルデジタルワークショップ修了
- 給与計算実務能力検定2級
日本企業型確定拠出年金センターの立ち上げから事業化に関わり、自身も400社以上の企業に企業型DCを導入している。商工会議所や工事組合をはじめ多数の税理士法人で職員向け及び顧客向けにセミナーを実施している。
自身の出演するYouTube『DCチャンネル』は専門チャンネルでありながら1万人を超える登録者を誇っている。
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https://www.youtube.com/@ndc-center
NewsPicksやヒロ税理士、マキノヤ先生など動画出演も多数している。

目次
1. 通算企業年金とは
企業年金制度のある企業を退職した場合、企業年金で積み立てたお金は他の制度に移す必要があります。退職後の働き方に応じて、以下のいずれかの対応をしなければなりません。
● 一時金で受け取る
● 転職先の確定給付企業年金(DB)に移す
● 転職先の企業型確定拠出年金(DC)に移す
● 個人型確定拠出年金(iDeCo)に移す
● 通算企業年金に移す
つまり、通算企業年金とは企業年金のお金を移す先の選択肢のひとつです。
転職先によっては、企業年金制度を導入していないケースがあります。この場合、iDeCoまたは通算企業年金へ年金資産を移す必要があります。
このように、企業年金の加入者が積立・運用していた年金を無駄なく継続して利用できる仕組みとして、通算企業年金は重要な役割を果たしているのです。
①一生涯にわたって受け取れる年金の仕組み
通算企業年金は、一生涯にわたって受け取れる終身年金です。年金受取開始年齢から生存している限り年金を受け取れます。
平均寿命が延びており「長生きリスク」が指摘される中で、公的年金の上乗せとなる終身年金を確保できるメリットは大きいはずです。公的年金制度とともに、老後資金の柱として心強い仕組みといえるでしょう。
②「保証期間」とは何を指すのか
通算企業年金は終身年金ですが、65歳から80歳までは「保証期間」です。

また、以下のように保証期間中に万が一の事態が起こると、「選択一時金」または「死亡一時金」を受け取れます。
| 選択一時金 | 病気や災害などでまとまった資金が必要になったとき、残りの保証期間に応じた額を一時金としてまとめて受け取れる |
| 死亡一時金 | 年金のお受け取り前もしくは保証期間内に死亡した場合、残りの保証期間に応じた額が遺族に支給される |
③予定利率に基づいて運用される
通算企業年金では、移換したときの年齢に基づいて予定利率が決定します。
| 移換時年齢 | 予定利率 |
| 45歳未満 | 1.25% |
| 45歳以上55歳未満 | 1.00% |
| 55歳以上65歳未満 | 0.75% |
| 65歳以上 | 0.25% |
2. 通算企業年金のメリットとその魅力
通算企業年金は、老後の生活を支える私的年金制度として重要な役割を果たしています。
特に安定的に老後資産を用意したいと考えている方や、将来的に企業年金制度やiDeCoへの移換を検討している方にとって、利用しやすい制度です。
①予定利率に基づいてリスクの低い運用が可能
通算企業年金では、加入者ごとに設定される予定利率に基づいて運用が行われます。将来受け取る年金額を把握できるため、計画的な資金設計を進められるでしょう。
市場変動の影響を受けることなく、安定的に資産形成できる点は通算企業年金ならではのメリットです。
②手数料負担が軽い
企業年金制度から通算企業年金に移し換える際に、税金はかかりません。移し換えのタイミングで、1度だけ手数料として事務費(移換された脱退一時金相当額や年齢に応じて異なる)が発生するものの、その後は別途支払う手数料がかかりません(※管理費用等は資産から控除されます)
つまり、通算企業年金では余計なコストを負担することなく、着実に老後資産を形成できるのです。
③将来的に他の年金制度へ移換できる
通算企業年金にお金を移換したあとでも、企業年金制度やiDeCoへ移換できます。働く環境が変化し、企業年金制度へ加入するときやiDeCoを開始するときでも、これまで積み立てた年金原資をスムーズに移換できます。
昨今は雇用が流動化しているため、転職や再就職、独立など働き方が変化する可能性は十分に考えられるでしょう。状況の変化に対してフレキシブルに対応し、自分専用の年金を用意できる点は通算企業年金制度のメリットです。
3. 通算企業年金の移換手続きと注意点
通算企業年金へ年金資産を移換する手続きは、退職する企業の企業年金制度によって異なります。
| 確定給付企業年金の場合 | 企業を退職し、確定給付企業年金を脱退した日(加入資格を喪失した日)から1年以内に申し出る |
| 企業型確定拠出年金の場合 | 企業を退職し、企業型確定拠出年金の加入資格を喪失した日の翌月から6ヶ月以内に企業年金連合会または記録関連運営管理機関(RK)へ申し出る |
移換手続きを適切に行わないと、将来の年金受取額に影響を及ぼす可能性があります。手続きには期限があるため、必要書類を確認したうえで計画的に進めましょう。
特に、企業型確定拠出年金の資産は、移換できる期限を過ぎると国民年金基金連合会へ自動移換されます。自動移換されるとさまざまなデメリットを被るため、注意しましょう。
4. 通算企業年金と企業型確定拠出年金(企業型DC)の違い
通算企業年金と企業型確定拠出年金はどちらも私的年金制度ですが、以下のようにいくつか違いがあります。
| 通算企業年金 | 企業型確定拠出年金 | |
| 給付 | 終身年金(原則として65歳から支給が開始され、生存している限り年金が支給される) | 年金または一時金 |
| 運用責任 | 企業年金連合会 | 加入者自身 |
| 受け取れる金額 | 予定利率によって決まる | 運用実績によって決まる |
通算企業年金では、将来受け取れる給付金額が予定利率に基づいて決まります。加入者自身で運用する必要はなく、受け取れる金額をイメージしやすい点が特徴です。
一方で、企業型確定拠出年金では加入者自身が運用商品を選択し、受け取れる金額は運用成績によって異なります。運用成績が悪ければ思ったように年金資産を用意できない可能性がありますが、運用成績が好調なら多くの年金原資を用意できるメリットがあります。
5. 企業型確定拠出年金で効率よく資産形成しましょう
企業型確定拠出年金は、企業が従業員に対して提供する魅力的な福利厚生制度です。公的年金の上乗せとなる私的年金を用意できる制度として、最近は導入する企業が増えています。
従業員自身が投資商品を選択し、ライフスタイルやリスク許容度に応じて資産を運用できる点が特徴です。個々の価値観を反映できる柔軟な制度で、さらに運用益が非課税になるため、老後資金を効率的に準備するための手段として機能します。
企業型確定拠出年金には「ポータビリティ」という資産を持ち運べる機能があり、転職・退職する際も運用資産を自分の名義として引き続き運用できます。転職するときやフリーランスになるときでも安心できるため、働き方が多様化する現代において魅力的です。
導入する企業側にとっても、企業型確定拠出年金を通じて自社の魅力を高められるメリットがあります。たとえば、「退職金制度や年金制度がある企業へ就職(転職)したい」と考えている求職者にとって、企業年金制度がある企業は魅力的に映るでしょう。
昨今は少子高齢化により、人材不足が顕著な企業が増えています。人材不足を解消するためには、求職者の関心を引いて、長期的に勤続してもらう必要があります。
企業型確定拠出年金を導入することにより、他社と差別化できるでしょう。「職場環境が良好な企業である」「従業員を大切にしている企業である」という点をアピールできれば、優秀な人材確保につながります。
6. まとめ
通算企業年金は、老後の資金計画を用意するために効果的な制度の一つです。安定的に企業年金の資産を運用したいと考えている方にとって、相性がよい制度といえるでしょう。
将来的に、通算企業年金の資産は就職先の企業年金制度やiDeCoへ移換することも可能です。働き方やライフスタイルの変化に合わせて柔軟に対応できる点も、通算企業年金のメリットの一つといえるでしょう。
これから企業年金制度の導入を検討している方は、企業型確定拠出年金制度の導入がおすすめです。福利厚生を充実化させて自社の魅力を高めつつ、従業員が抱えている老後の資産形成に対する不安を軽減できます。
さらに、企業型確定拠出年金制度では一般的な退職金制度とは異なり、企業は積立金を準備する必要がありません。中小企業で導入しやすい企業年金制度として、注目されています。
よくある質問(FAQ)
Q 企業型確定拠出年金(企業型DC)との一番の違いは何ですか?
A 一番の違いは「運用の仕方」と「給付額」です。
企業型DCは自分で商品を運用し、実績によって受取額が変わりますが、通算企業年金は予定利率で運用されるため、将来受け取れる額があらかじめ決まっています。
Q 運用利率(予定利率)はどのように決まるのですか?
A 通算企業年金へ資産を移換した時点の年齢によって決まります。
例えば、45歳未満であれば年1.25%、65歳以上であれば年0.25%のように設定されており、移換後は市場の変動に関わらずその利率で運用されます。










